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聲の形と碧いうさぎ

「私は耳が聞こえません!」

筆談用のノートを広げて、耳が不自由な主人公、西宮硝子(しょうこ)は、みんなに筆談の会話を呼びかける。そんな硝子を石田将也とクラスの生徒たちは卑下し、数々のいじめを受け続けられて西宮硝子は学校を転校してしまう。いじめをした責任を感じた石田将也は、なんとか自分の思いを硝子に伝えようと手話まで覚えて硝子を訪ねるが、何度行っても門前払いでクラスの人たちからもいじめっ子のレッテルを張られて距離を置かれてしまう。

「自分が犯した罪はそっくりそのまま自分にはね返る。その罪を背負い罰のある必要のある人間だと思い知った。そして俺は孤立した」

1度は生きている意味が見出せずに自殺まで考えていた将也にとって、自分が硝子にしたことへの後悔の念が、やがて硝子を守っていきたいという恋心へと発展していく。

石田将也とクラスメイト

いつの間にか優しかったおばあちゃんが亡くなって、葬式が描かれていたが、同窓会のたびに身近な友達が亡くなっていくのと重なり寂しく感じた。

「飛び出せ!青春」の村野武範主演の昭和の熱血教師とは対照的に、硝子が学校でいじめを受けていたことを知りながら、生徒に寄り添ったふりをする無責任な担任の先生も今の時代を風刺しているように思った。

五体満足(身体のどの部分も欠けることなく備わっていること)で生まれてきた私たちにとって、どれか一つでも不自由になることの辛さや苦悩がどれほど大きなものなのか映画「聲(こえ)の形」を観ると改めて考えさせられます。

耳が不自由な主人公のドラマとして記憶に残るのが、日本テレビ系連続ドラマ「星の金貨」である。耳と口が不自由で捨て子の看護見習いの倉本彩役の酒井法子と不慮の事故で記憶を失くしてしまった恋人で、医者の永井秀一役の大沢たかおの愛と苦悩を描いた「星の金貨」は視聴率20%を超える人気ドラマとなり続編も放映された。弟の永井拓巳を演じた竹野内豊の破天荒ぶりも光り、愛憎の人間関係をドラマチックなものにしている。

主題歌の「碧(あお)いうさぎ」は、年末のNHKの紅白歌合戦で女優の酒井法子が手話で歌っていたのが印象的であった。

耳が不自由な倉本彩役の酒井法子さん

「上善は水のごとし」と老子の言葉にありますが、蛇口をひねれば当たり前のように出てくる水や空気がなかったら、人間は1日でも生きていくことはできません。ありがたいものほど、目立たない縁の下の力持ちのように存在していますが、人間の目が視えること、耳が聴こえること、歩けること、しゃべれることは、何にも代えがたい有り難いことであると「聲の形」や「星の金貨」、「愛しているって言ってくれ」などのテレビドラマを観るたびに改めて見つめ直されます。

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