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日記147:「それはタケノコかアスパラか」

どっちでもなかったというオチ。

久々に庭に出た。
これは別にひきこもりのメタファーとかいうわけではなく、まあ、昔はそういうこともあったが、最近はずいぶん外出しているからその言を借りることもなくなった。だから意味としては言葉通りのそれで、早めに風呂に入るから干されたおのれの洗濯物を取り込みに行ったわけだった。
夏場の庭が苦手だ。虫が多く、時折ハチもいる。私は夢の中でよくハチに刺され、その都度激烈な痛みが走り、ああ、病院に行かなければならないのかと絶望する。ひどい嘔吐恐怖持ちの人間にとり、医療機関にかかるというのはひどく恐ろしいことであった。

そんな感じで庭。水槽には相変わらず金魚がチピチピチャパチャパ泳いでいて、いとこが水草の手入れをしている。気温のわりにはそれほど暑く感じなかった。
庭に出てからそのまま正面へ歩いていくと柿の木がある。枝は最後に見たときより随分深く切られていた。
ふとその元を見ると、なにかが植わっている。緑色で、スピンした筋が入っていて、やや長い。
これはなんだろうか?タケノコか?へえ、タケノコって庭で育てられるものなんだなあと感心した。爪先でつついてみると、思ったよりその軸がぶれる。意外と硬くないらしい。
眺めていると、その柔軟さとスピンした筋のあるそれは、なんだかアスパラガスのようにも見えてくる。アスパラガスの語源はギリシャ語の「アスパラゴス」、新芽の意の語だった気がする、とかなんとか考えていた。暑くなってきた。

気になったので水槽の近くにしゃがんでいたいとこに言ってみる。「あれタケノコ?アスパラにも見えるんだけど」。
いとこは言った。「お前、あれミョウガだよ」。タケノコがあんな風に育つわけねえだろ、竹じゃねえだろ、といとこは言った。今年で高校1年、小生意気な口をきく活かしたガールの言葉であった。

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