朗読劇 Spiral 〜地獄のポエム感想〜

え!今更上げるの?!


※これは、2021/7/3~7/4に行われた、★KIRAKIRA VOICE LAND VOL.34★ MORGUE×CHRONICLE Ⅶ Spiral 艶やかに回転する夜(山下誠一郎×浦尾岳大)の観劇感想です。
※話の根幹に関わるようなネタバレはありませんが、細かなワードや、黒歴史的ポエム表現、過度の妄想(記憶違い)が多分に含まれます。
※私の率直な感想を綴るにあたって、お二人の名前を呼び捨てにする場合があります。あくまでも魂の叫びであり、マイナスな意味合いは一切含まれておりませんが、不快に思う可能性もございますので、予めご了承ください。

以上の点をご理解いただき、それでも読んでみようという勇気のある方は、このまま下へスクロールしていただけたら嬉しいです。









~ポエムパート(見ないで)~

『はぁ、はぁ、ぅぐっ…』
どんどん苦しくなってくる。
二酸化炭素が脳を麻痺させ、心臓が必死に鼓動する。
足元が悪い。土がぬかるんで、上げる足が重い。
≪魔女伝説≫なんて、何だかワクワクする響きにつられて、こんな暗い森に入ったのは、失敗だったかもしれない。
木々から滴り落ちる雨粒が頬を濡らす。
持ってきていた傘は、先程木の枝にひっかけてしまい、大きな穴が開いてしまった。
【Curiosity killed the cat. 好奇心は猫を殺す。】
今までは運良く切り抜けてきたが、今度ばかりはそうはいかなそうだ。

『方角は…っと』
コンパス、日本人には方位磁針と言った方が、イメージしやすいかもしれない。
今時、高い山に登るだとか、大海を航海するだとか、そんなことがない限り、せいぜい節分に恵方巻の方角を知るくらいでしか使わないであろう代物。
いや、今はスマートフォンのアプリで方角なんてわかるのだから、わざわざ年1回の行事の為に、方位磁針を持っている人なんていないのかもしれない。
私も、こんな目的がなければ、今頃スマートフォンにアプリをダウンロードして、…いや、ダウンロードすらしないかもしれないな。
そんなことを、はっきりとしない頭で考える。
それでも、私がこの方位磁針を大切にしているのには、もちろん理由がある。
≪異形≫の存在だ。
人ならざるモノ、普段は人と交わらず、ひっそりと生きていると言われている存在。
大半の人は、そんな存在とは出会うことなく、一生を終えていく。
こちらが踏み込まなければ、基本的には無害だ。
話を戻すが、そういったモノと、デジタルは相性が悪い。
今だって、当たり前のようにスマートフォンの電源は入らないし、不思議な力で画面が割れていないだけましだ。
この関係を例えるなら、蛇、それも毒蛇に睨まれた蛙のようなものだろうか。
方位磁針を握りしめながら、再びあの言葉を思い出す。
【Curiosity killed the cat. 好奇心は猫を殺す。】
そうはわかっていても、私は求めてしまう。

『こっちが北か…』
真鍮で出来たコンパスには、黒猫のキーホルダーがついている。
私はいつも、この相棒に助けられてきた。
黒猫なんて縁起が悪い、なんて言う人もいるようだが、私にとっては幸運の黒猫だ。
『ただ、今回ばかりは、お留守番してもらうべきだったかな…』
ここは、≪魔女伝説≫が息づく町。
モルグの魔女と私の黒猫の相性は、あまり良くなかったみたいだ。
それでも、デジタルよりは良いだろうと、自分に言い聞かせる。

方位磁針が指し示した北へと歩くと、ぽつんと1軒、小さな家のようなものが見える。
やはり、私は運が良い。
家の中に入れてもらえなくとも、軒下で雨宿りくらいは許してもらえるだろう。
扉に近づくと、≪モルグ探偵事務所≫と書かれている表札に気が付く。
依頼人を装えば、まず間違いなく中に入れてもらえそうだ。
つくづく運が良い自分に、思わず笑みがこぼれる。
『すみません、ごめんください』
仄かな灯りのついた玄関の扉を叩く。
反応はない。
『すみませーん!』
やはり反応はない。
こんな時間に、外出しているとも考えづらいが、まあ、仕方がない。
とりあえず、軒下でしばし雨宿りをさせてもらうとしよう。
『ふぅ…、これからどうするか…』
ふと空を見ると、月が出ていた。もうそんな時間か。
月の光のやさしさに少し気が緩んだのか、私はそのまま座り込み、いつの間にか眠ってしまったようだった。

『…うぅ、ん?…』
微かな話し声が耳に届き、目を開ける。
どうやら声は、家の中から聞こえるようだ。
やっぱり家に誰かいるんじゃないか。寝起きの重い腰を上げ、再び扉の前に立つ。
『すみません、ごめんください』
…反応はない。
『すみません、聞こえますか?すみませーん!』
大きな声で呼びかけるも、返してくれる声はない。
声が聞こえたのだから、誰かは家にいるはずだ。
声の主を探す為に、家の周りをぐるっと回る。
すると、扉の反対側にある窓から、光が漏れているのに気が付く。
家の中を覗くのは、流石に気が引けるが、そんなことは言っていられない。
『すみませ~ん』
小声で謝罪しながら、家の中を見る。
すると、たった今、一人の人が家の中に招かれ、椅子に座るよう案内されている。
私には気付かないのに、何故なんだ、という疑問は湧いたが、ひとまず様子を見ることとしよう。
家に人を招いた張本人は、ここが探偵事務所であることを考えると、探偵、なのだろうか。
探偵にしては、無邪気な雰囲気をまとっている。
顔の大きさに似つかわしくない目の大きさ、例えるなら、チワワ、だろうか。
『……、エリクサー……』
窓から微かに聞こえる声に、耳をそばだてる。
エリクサー。探偵の名前だろうか。
隣に座る、先程招かれた人に目を向ける。
探偵よりも、少し年齢は上のように見える。
『……、…』
何か話しているようだが、落ち着いた声色は雨に溶けて、外からは聞こえづらい。
そんな私を置き去りにするように、話は進んでいるようだ。
先程エリクサーと言っていたチワワは、本当のチワワのように椅子の周りをぐるぐると回り、表情豊かに話している。
『すごいな…』
思わず感嘆の声が漏れる。
さっき名前を名乗っていたようだし、おそらく初対面であろう人物に、既に仲良さげに話しかけている。

自分とは正反対だ。
私は天涯孤独で、友人と言える人もいない。
しいて言えば、こんなことを始めた日に偶然出会った亀を、何だかほっておくのが忍びなくて、そのまま自宅で飼っているくらいだ。
雨に濡れながら、とぼとぼと歩く姿が自分に重なって、一匹だけなら、と飼い始めたのが懐かしい。
まあ、寂しそうに見えたのは、私の主観でしかないのだから、本当は子亀、孫亀、曾孫亀が待っている家へ、帰ろうとしていただけなのかもしれない。
人間と違って、腹の底にドロドロとした感情を持っていないのは有り難いが、コミュニケーションが取れないというのは、やはり難儀だ。
唯一の友を思い出し、やはりここで死ぬわけにはいかないと、自分を奮い立たせる。
『ここにいてもしょうがない…』
暖かそうな部屋に、是非ともおじゃましたいところだが、入れないのなら仕方がない。
何とか戻れる方法を探すしかない、そう思い、方位磁針を取り出す。

『…っ!!!!!』
方位磁針は、まるで壊れた時計かのように動かなくなったかと思うと、激しく回り出し、ついには割れてしまった。
…これは、本格的にまずい。
相棒のキーホルダーは、何故か跡形もなく消えている。
『これは…?』
割れてしまった方位磁針のかけらを集めようと、その場にしゃがむ。
そこには、絵本と指輪?が落ちていた。
思わず、絵本を手に取り、ページをめくる。
絵本にしては、子ども向けでない内容のようだ。
グリム童話も、本当は怖い、なんて言われているし、こんなものなのかもしれない。
『…急ごう』
つい絵本に目を奪われたが、こんなところで油を売っている場合ではない。
立ち上がろうと、家の壁に手をつく。
…いや、手をつこうとした。
目の前にあったはずの建物は、急にどこかの異世界に飛ばされてしまったかのように、私の前から消えている。

『うっ…!』
その瞬間、背後に≪気配≫を感じる。
…身体が動かない。視界が霞む。
これが、≪異形≫?
胸を突き刺され、首を絞められ、崖前に立たされているような緊張感が身体を支配する。
『………』
もう、うめき声を出すことさえ叶わない。
私の旅は終わってしまったのだ。







…長い夢を見ていたような気がする。
規制退場のアナウンスの後、椅子から立ち上がり、ホール後方の出口へと、ふらふらとした足取りで向かう。
外は小雨が降っているようだ。
くしゃくしゃに丸めてカバンにしまっていたレインコートを取り出す。
この程度の雨ならば、レインコートだけで十分だろう。
雨音は嫌いではない。
傘と雨がぶつかり合う音も好きだが、何だか今日は雨をより近くで感じたいと思った。
都会の喧騒にかき消されながらも、頭上に降り注ぎ、微かにぽたぽたと音を奏でる雨。
『はぁ…』
素晴らしい朗読劇を見た幸福か、明日から現実の生活が待っていることへの嘆きか。
どちらともつかない感情で、思わず声が出る。
記憶はひどく曖昧だ。
昔から記憶することは不得手で、文系の割に歴史の成績は壊滅的だった。
そのくせ、仕事の分野的には社会学に当てはまることをしているのだから、変な話だと思う。
覚えていないのに、妙に心が重いのは、何かに取り憑かれているからだろうか。
渋谷駅前、スクランブル交差点。
沢山の人が、足早に通り過ぎる。
私は一人だ。それがひどく寂しく感じる。
コンクリートに足をぶつけながら、先程よりもはっきりとした足取りで歩く。
ふと、空を見上げる。
既に暗くなった空には、星も月も魔女も見えない。
ここは、私が生きている現実だ。
そう自覚した瞬間、まるで絵本を閉じたかのように、ぱたんとモルグの町と切り離される。
それでも、私の心の絵本には、この場所で見た物語が、永遠に残るのだろう。




~真面目な感想~

本当に素晴らしい朗読劇でした。
私は初めて『Spiral』という作品を観劇したのですが、作品が纏う雰囲気が好きすぎて、思わずポエムを書き連ねるくらいには良かったです。
1回限りだからこその良さがあるとわかっていても、伏線があるような難解な話は、何度もみて、噛み砕いて理解する時間がほしいですね。
まあ、あれを配信とか円盤化することは難しいと思いますが…(アドリブ的な意味で)。
いつか再演してほしいと思うくらいに、山下誠一郎×浦尾岳大のコンビが素晴らしかったので、またいつか二人の演技バトルがみられると良いなと思っています。

1日目は、無邪気で可愛らしいエリクサーと、何だかんだ気の良い青年レイス、という感じだったので、ほのぼのパートもほのぼの~とした時間が流れていた気がします。
2日目は、穏やかだけど頼りがいのあるエリクサーと、少し神経質なようにも感じる儚さMAXレイス、という感じだったので、テンポ良くポンポンと話が進んでいたような印象を受けました。
もし二人が親友で、目の前に魔女が現れたら、1日目エリクサー&レイスは、家の中に閉じこもってやり過ごしそうだし、2日目エリクサー&レイスは、エリクサーが無理矢理レイスの手を引いて森から抜け出しそうだな、なんて考えてしまいました。


☆浦尾さんのお話☆
正直なことを言ってしまうと、私が知っていると言える浦尾さんのキャラクターは、某広島県出身アイドルくらいだったので、14歳のはちゃめちゃ元気な男の子が根底にある演技しか、まともに知らなかったのですが、だからこそ、今回の朗読で浦尾さんの声とか演技に触れて、こんなことも出来る人なんだなって、ずっとドキドキしっぱなしだったなと思います。人間が発することの出来る中で、一番聞き取りやすい音程?声質?ではと思いながら、無邪気なエリクサーから、儚いレイスまで、心地よく朗読を聞くことが出来たのは、浦尾さんのおかげだと思います。(推しの演技は、色々な意味でしんどいので…)
ご本人もまつ毛長いけど、声もまつ毛長いですよね…
綺麗で見惚れちゃう演技って、ああいうことを言うんだろうな…
1日目の推しのレイスは、ちゃんと鍬で土を耕していそうでしたが、浦尾さんレイスは鍬とか持てなさそう…か弱い…守りたい…
2日目に前髪重めのスタイリングで、ちょこんと足を閉じて椅子に座る浦尾さんに、「これが萌え…?」と、原始のオタクのような反応をしながら、感情がぐるんぐるんになっていました。
浦尾さんの表現って、凄く素直で、こちらも直球で受け止められるのが良いですね。
個人的には、浦尾さんレイスのどこか一線引いている感じもありつつ、少し心を開き始めている感が凄く愛おしくて、脳内でYUIのCHE.R.RYが、バシバシ鳴っていました。
こ~い~しちゃったんだ~ たぶん~ きづいてな~いでしょ~♪
私がモルグの世界の住人だったら、完全に浦尾レイスに恋してましたね。
そして告白して振られる…
めちゃくちゃ真摯に振ってくれるから、逆に申し訳ないやつ…
こっぴどく振られないと、諦められないよ~~泣
≪ここで、Official髭男dismのPretenderを流す≫

推しが酸欠になるくらい、真剣に朗読と向き合えたのは、それだけ浦尾さんの演技が熱かったということだし、謎テンションで書いた宣伝noteの≪戦い≫という表現は、間違っていなかったなと感じました。
推しはどちらかというと、麦茶みたいな演技をする人なので、野菜ジュースみたいな浦尾さんの演技に、どうやって対応するのだろうと、ずっとドキドキしていましたが、意外と相性が良くてびっくりしました。
調べたら、どうやらどちらも牛乳との相性が良いようなので、きっと私たちが牛乳だったということなのだろうと思います(書きながら、どちらかといえば、今回の物語や音楽、映像が牛乳なのでは?と思ったが、気にしない)。
本当に奇跡のような体験をした2日間でした。


二人は、最後の最後で合わなくて悔しいみたいなことを言っていたけれど、個人的にはどうリカバリーしていくかが、腕の見せ所だと思うし、そこで切り替えて、間違えることを恐れずに、いかに大胆に演技するかが一番大切だと思っているので、本人達は悔しいだろうけど、いかに今までが凄かったのか、再認識することが出来て良かったなと思っています。
生の演技は客席と作り上げるものだから、どこでどう反応するかなんてわからないし、そんな不安定な状況の中で、今出来る最大で戦う二人は、本当にどこまでもかっこよかったです。
アドリブシーンからの切り替えとか、流れるように切り替わるから、本当にびっくりする。
スイッチングが上手すぎて、二人と二人の境目が曖昧になりかける。
そういう姿をみると、本当に二人とも「役者」だなあと思う。
カラオケ採点100点の歌は確かに素晴らしいけれど、90点の歌にも、80点の歌にも、100点の歌にはない魅力があったりすることもあるし、数値化することが出来ない良さに、人は惹かれるのだろうなと思いました。



推しに関しては、言うまでもなく(書くまでもなく?)良かったですね…
客席の私を、真綿で首を締めるように苦しめるんですよ。
苦しくて、心が震える感覚。
苦しいのに、どんどん欲しくなる感覚。
脳からドバドバとドーパミンが出て、世界が推しに支配される感覚。
何回体験しても良い…
推してて良かったー!!って、ああ大好きだなあって、
推しへの好きは、本当に果てしないなあと、そんなことをずっと思っていました。
推しって、実は透明人間になれるのかもしれない、って思うことがあるんです。
推しという人間の中に、キャラクターの演技が存在しているはずなのに、キャラクターがそのまま視えることがあって。
推しが透けているからなんじゃないか、って馬鹿みたいなことを考えてしまう。
直接キャラクターの感情が伝わるから、嬉しいも楽しいも悲しいも苦しいも、そのまま私の中に流れ込んでくるんです。
演じている推しは、手の届く範囲にいるはずなんてないのに、まるですぐそこにいるような錯覚に陥って、手を伸ばしたくなってしまう。
推しの生の演技を浴びる度に、その錯覚が鮮明になっていくから、どんどん欲しくなってしまう。
そうやってみんな、推し中毒になっていくんだろうな…



え!これ上げるのに、8ヶ月もかかったの?!


違うんです!!

(違わない)


ポエム書いたものの恥ずかしくて、ずっと上げられなかっただけなんです!!



これから舞台を観るっていうテンション感でしか、ここでしか踏み切れなかったんです!!





ちゃんと感想は早めに上げないと、どんどん上げ辛くなることを学んだ私でした。

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