画像1

泣くな、のり子【音声と文章】

山田ゆり
00:00 | 00:00
1297
※note毎日連続投稿1357日コミット中。1297日目
※音声・文章、どちらでも楽しめます。



おはようございます。
山田ゆりです。



今回は
泣くな、のり子
ということをお伝えいたします。




「言った」
「言っていない」

そんなことで言い争っても自分に勝ち目はない。
気が弱いのり子は何も言えない。




のり子が以前勤めていた会社では
カード式の身分証明書が与えられていた。

従業員出入口で「出勤」のボタンを触ってカードをスキャンし
数百個のロッカーがある休憩室の階にエレベーターで上がり
そこで着替えて自分の職場へ向かう。



帰りは従業員出入口で「退勤」のボタンを触ってスキャンする。

社員食堂での支払いもこのカードをスキャンすることで
給料から天引きされるようになっている。
これはタイムカードの役割もしていたから
のり子はタイムカードというものをずっと見たことはなかった。




数年後、のり子は今の会社に転職した。
この会社の身分証明書は紙に印刷されたものを首から下げていた。
ロッカーは10個くらいしかない。
そして、従業員の下駄箱のところにタイムカードが置いてある。


のり子は生まれて初めて「タイムカード」というものを見た。


新人ののり子は勤続10年のA子さんから仕事を引き継いだ。
その仕事の一つに給料計算があった。


各営業所の事務係が集計したタイムカードが
本社であるのり子のところに集まってくる。


各営業所のタイムカード担当者が
それぞれ、有給休暇・残業時間などの月合計の数字を
手書きで書いたものが送られてきた。


先輩のA子さんから給料計算のやり方を一通り引き継ぎされ、
A子さんはその場を離れた。
のり子は営業所から届いたタイムカードをチェックしだした。

A子さんからの引継ぎの手順にそれはなかったが、
各営業所から集まったタイムカードが間違っていないかを
本社事務としてチェックするのは当たり前の事だとのり子は思ったからだ。


するとその様子を見たA子さんがのり子におっしゃった。


「何をしているの?
各営業所のタイムカードの集計は
その営業所のタイムカード担当者に任せているのだから
あなたが改めてチェックする必要はありません。
営業所の事務係を信じなさい。
あなたは本社の分だけ自分で計算するだけです。」
とA子さんに強い口調で言われた。


各営業所からのタイムカードは
チェックしてはいけないというA子さんの指示は
とても衝撃的なことだった。

「そういうものなのか」

他部門のタイムカードを本社が
何もチェックしなくていいのかという罪悪感があったが
その会社によって常識は違うものだ。
そんなもんだ。


郷に入っては郷に従え
所の法に矢は立たぬ
人の踊る時は踊れ


のり子は、これは本心ではないが仕方ない
と自分に言い聞かせた。

我慢、我慢。




それから数年が経ち
社長が交代になった。
新社長のもと、人事が一新され
これを機に、就業規則を見直すことになった。


ある日、上司であるA子さんとのり子が社長室に呼ばれ、
タイムカードの集計について聞かれた。

のり子は
「本社の分は自分が計算していますが、
各営業所からくる分はそれぞれの事務係の人を信じて、チェックはしていません。」
と胸を張ってお答えした。

隣にはそう指示したA子さんがいるから大丈夫。
ただ、これはA子さんからの指示だということは申し上げなかった。


それに対して社長は
「本社事務は各営業所をチェックする立場なのだから
各営業所のやった事を知らぬ存ぜぬの態度ではいけない。
だから今後はきちんと各営業所のタイムカードにも目を通すように。」
とおっしゃった。

つまり、優しい口調ではあったが
のり子の職務怠慢を諭している。


その時、私の隣に座っているA子さんは
社長のお言葉に「ごもっとも」というように深く何度もうなずいていた。


「えっ!私はチェックしたかったけれど
A子さんがしてはいけないと強く言われたから
チェックしてこなかったのに。」
のり子は心の中で葛藤した。

それを社長に言うべきかどうか。
しかし、それを言ったところで
当時のことを録音しているはずもなく何の証拠もない。


しかもA子さんはそのことに対して何も言おうとしていない。



「言った」
「言っていない」

そんな事を言い争っても見苦しいだけだ。



のり子は自分の思いを飲み込んだ。
そして社長に謝り今後はチェックをするようにいたしますと申し上げた。


完全にのり子が悪者になってしまった。
口が達者な方はここできちんと言えるだろう。

でものり子はA子さんからの指示でこれまでそうしてきたと
うまく伝える自信はなかった。
自分の過ちを省みないで
人のせいにするような言い方になってしまう恐れがあるからだった。


A子さんはご自分がおっしゃったことを忘れているのだろうか。
それとも分かっていて知らんぷりをされているのだろうか。


理由はどうであれ、本社としては
各営業所のチェックをするのは当たり前だとのり子は思っている。
そう思っているのにしてこなかったのは
やはりのり子が悪いのだと思う。



あぁ、結局は自分が悪いことになる。

そんなものだ。



のり子は泣きたい気分だった。
マスクをしなければいけないこのご時世に感謝した。
マスクの中では、心で泣いていた。


のり子は悔しくて、自分の席に戻ってから少しの間
仕事が手につかなかった。

仕方なくワードを開いて今の気持ちを入力していった。
そしてある程度入力し終わったところで仕事を再開した。




泣くな、のり子。


がんばれ、のり子。






今回は
泣くな、のり子
ということをお伝えいたしました。

本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。 

ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。

山田ゆりでした。



◆◆ 無料メールマガジン ◆◆
http://yuuki2.com/l/u/Z4bGUPjaVPxU6Dk5



◆◆ note有料マガジン ◆◆
【自分のための人生】
https://note.com/tukuda/m/m5b66808db98c


◆◆ アファメーション ◆◆
.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。

私は愛されています
大きな愛で包まれています

失敗しても
ご迷惑をおかけしても
どんな時でも
愛されています

.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+

サポートありがとうございます💖サポートされたお金はプリンターのインク購入に使わせていただきます🤣60代ですが毎日noteを執筆中です😄素敵なnoterさんへ恩送りさせていただきます🎁kindle書籍も出版しています📚