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一瞬 二人だけの世界【音声と文章】

山田ゆり
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1282
※note毎日連続投稿1357日コミット中。1282日目
※今回は、以前のnoteをリメイクしました。
※音声・文章、どちらでも楽しめます。



私は愛されています
大きな愛で包まれています

失敗しても
ご迷惑をおかけしても
どんな時でも
愛されています



おはようございます。
山田ゆりです。



今回は
一瞬 二人だけの世界
ということをお伝えいたします。




「〇子~、早くしなさ~い。」
のり子は台所で椎茸を切りながら言った。

沸騰しているお鍋が二つ。
一つはお味噌汁。
もう一つはほうれん草を茹でるため。


今日は母の三七日法要だ。
のり子は喪服の上にエプロンをして
出かけるまでの時間、料理をしていた。


「あっ!」
切っちゃった。
左の親指のはじっこ。
よくやる。

のり子は救急箱から絆創膏を取り出し
親指の先に縦に貼る。


椎茸を入れて
味噌を入れたところで
左指の絆創膏が赤い血で染まってきた。

のり子は左手を上げながら
右手の菜箸をくるくるしていた。


「何やってんの?」
夫が近寄ってきた。


「うん、またやっちゃった。」
夫に赤く染まった左指を見せる。

「どれ、代わるから。」
夫はのり子から菜箸を受け取り
かき混ぜてガスを切った。



夫:「こっちの鍋は?」
のり子:「うん、ほうれん草を茹でようと思ったの。でも、いいや。」
夫:「僕がやるから、のり子は休んでなさい。」

白いワイシャツ姿の夫の背中。
のり子はそのうしろ姿が好きだ。
背が高くて肩幅が広くて中肉中背。

学生の頃はピッチャーをしていたって言うけれど納得がいく。
もっとも、打たれてばかりだったと本人は言うが。



「ありがとう。」
のり子は背中に話しかけた。
「うん。」
夫が背中で静かにこたえる。



夫が振り向く。
25㎝以上の身長差。

のり子を見下ろす夫。
顎を上げて見上げるのり子。
夫の目とぶつかる。

そしてお互い、はにかんですぐに目をそらす。




娘:「お母さーん。うしろやってぇ。」

娘が喪服姿の背中をのり子に向けてきた。

「はい、はい。」
のり子は背中のファスナーを上にあげて
娘の肩をポンと叩いた。


のり子は現実に戻ってきた。





今回は
一瞬 二人だけの世界
ということをお伝えいたしました。

本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。 

ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。

山田ゆりでした。



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