策略童話 桃から産まれた鬼

サブタイトル「復讐の鬼」

序章「桃から産まれる鬼」

ナレーター
「昔々あるいは最近最近ある島に鬼が住んでいました」
「この鬼はそこら辺にいる普通の鬼とは少し違う特殊な鬼でした」
「なんと今までに童話の世界で桃太郎に敗れた鬼達の記憶を引き継いでいるのです」

――鬼ヶ島

「俺は童話の世界で数え切れないほど桃太郎に負けて来た」
「だが今度こそ桃太郎を倒す」
「この世界の覇者になるのは桃太郎じゃない、この俺だ。積年の恨み絶対に晴らす」
「その為にも、まずは桃太郎よりも十年ほど早く桃の中に入って川を流れる」
「あれよあれよとお婆さんに拾われて、桃から産まれた俺が桃太郎の名を奪ってやる」
「そのまま育てられた俺は、やがて目の前にのこのことやって来る偽桃太郎を抹殺する」
「爺さんと婆さんを殺す手段もあるが、奴らは未来の鬼帝国の大切な労働資産だからな」
「丁重に扱わなければな」
「ふはははは、我ながら完璧な作戦だよ」
「早速近所のコンビニで大きな桃を購入して、店員に恐怖と絶望を叩きつけてやる」
「買い物進行」テクテク

ナレーター
「鬼は礼儀正しく桃を購入しコンビニ店員を困惑させました」
「鬼は桃の中に入り、川をドンブラコドンブラコと下ります」
「そしてお婆さんに拾われ、桃太郎が成長するであろう拠点に無事到着するのでした」

――家
お婆さん
「お爺ちゃん、川で踊ってたら大きな桃を拾いましたよ」

お爺ちゃん
「これは見事な桃じゃないか。空腹の頃合いだからな、切断して食べよう」


(予定通りの展開)
(切断、その一言が多少物騒だが、これで俺が桃太郎の高みへと到達する)
(喜べ桃太郎、お前は俺の弟である桃次郎に数日だけなる事が出来る)
(光栄に思う事だな、ふははははは)
(俺の作戦に死角などない)

ナレーター
「お婆さんが大きな桃を切ると、中から人が生まれました」


「おぎゃあああああああああああああああああ」

お爺ちゃん
「おおキッモ、人がうまれた」

お婆さん
「気持ちの悪い現象ですねこれは。桃から人が生まれるなんて」
「怖い世の中になりましたね」

お爺ちゃん
「それにしても立派な一本角じゃないか」

お婆さん
「その角はきっと神様からの下賜ですよ」

お爺ちゃん
「そうかもな。もしそうなら喜ばしいことじゃないか」


(俺じゃなくて角が神様からの送りものかよ)
(どんな神経してるんだ。普通は俺だろ。ツッコミみたい)
「おぎゃああああああああああああああああ」

お爺ちゃん
「さっそく名前を付けようじゃないか」

お婆さん
「カタカナと漢字の組み合わせにしましょうよ」
「きっと破天荒な名前になりますよ」

お爺ちゃん
「それは最良の考えだな」

お婆さん
「やぱっり漢字で行きます」


(ん?)
(なんか……やばそう)

お婆さん
「桃から生まれたから鬼太郎にしましょう」

お爺ちゃん
「ほお、『きたろう』ではなく『おにたろう』と読ませるとは良い名前じゃないか」

ナレーター
「鬼の名は桃太郎でもなく、『きたろう』でもなく、『おにたろう』になりました」

鬼太郎
「何で!? そこは桃太郎だろ。最低限でも『きたろう』読みにしろよ」

お爺ちゃん
「!」

お婆さん
「ん? お爺ちゃん今何か言いましたか?」

お爺ちゃん
「いや俺は何も言ってないぞ。俺はお婆さんかと思ったぞ」

お婆さん
「いえ、私でもないですよ」

お爺ちゃん
「……」

鬼太郎
(しまった、勢いでツッコミを。このままだと俺が鬼であると正体がばれる)
(ここは新しい産声で騙すしかない)
「ばぶぅうううううううううううううううう」

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