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染めて織る*初めての手織り

糸紡ぎを始めた頃に道具ややり方を調べていると、頻繁に一緒に登場してくるのが「手織り」でした。
糸紡ぎで糸を作ってその後何に使うと言えば、編む、もしくは織るが主だからです。
そもそも日本の産業として編み物より織物の方が主流なわけですから、手紡ぎ=手織りという図式の方が一般的なのですよね。
それを私は編む側から糸紡ぎに興味を持ってしまったので、「へー、ここへ繋がるのか!」という、なんとなく入り込んだ路地裏から別の大通りが見えてきたような気持ちになりました。
織るという世界を全く知らない私。
同じ手作りの世界でも着物など専門職的なイメージから、趣味でするものとは遠い分野と感じていました。
しかし、覗いてみると私でも出来そうな範囲がある事を知りました。

それは卓上機というテーブルの上で出来る小さい種類の織り機です。
私は本格的にマスターしたい!というより自分で作った糸で気軽に遊びたいというのが望みなので、お教室に通わずとも少しの知識で楽しめるものが理想です。
趣味として簡易的に試すなら、ダンボールや箱を利用して手作りで出来る本もありましたが、もう少し大きな作品やしっかりと織り機らしさを感じられそうなので、卓上機に魅力を感じました。

卓上機はリジット機と呼ばれ、クロバーの咲きおり、ハマナカの織美絵、アシュフォードのリッジへドル(畳めるのがニッターズルーム)が有名どころのようです。
この中でクロバーの咲きおりだけ、糸を通す筬(おさ)というものが少し違う形で、平織りの他にこの機種ならではの織り方が楽しめるようなのですが、他2つはどうやら同じ作りで筬を2枚に増やして織ることができるそうです。
本格的な織り機ではこの筬の数が4枚、8枚と増えることで柄を細かくしたり複雑にしていくようなので、初歩の初歩が出来るよといったところでしょうか。
それならば、とりあえず糸紡ぎのメーカーでもあるアシュフォード社のもので、将来的に筬も増やせるようになれればいいなぁと思いました。
コースターから少し幅があるマフラーができたらなと思うので、40cmか60cmのものが理想です。
段々と希望が形になってきてワクワクしてきます。
しかし、おっとっと。
お値段が結構いたしました。
専門道具だし趣味を始めるには妥当と言えば妥当な金額なのですが、ちょっと脇腹が痛い感じです。
筬も増やすには部品も買わねばならず、基本のセット以上に費用が増えそうな予感がします。

さてさて、仕方ない。
困った時はオク&フリマサイトですよね。
「組み立て済みで倉庫に眠っていた未使用品60cm
 経年劣化のシミ出てますが3000円」
わぁお!ナイスタイミングで良いのがありました!それにします!
木材のシミなんて塗っちゃえば問題ないです。
かなり古いタイプ?
電動具じゃあるまいし、構造が全く変わってないので何の問題もないです。
品名はTabby Loom。
箱はボロボロでしたが、説明書と毛糸が付いてました。
流石に相当経ってそうな品なので、毛糸はさようならさせてもらいました。

白木のものですが経年劣化で変色してました。
一度全部ヤスってツルツルにしてから、蜜蝋を塗りこの状態になりました。
シミが酷いなら塗装するつもりでしたが、全然問題ないレベルです。
むしろ使い込んだような良い色に。
アシュフォードのロゴも残せて良かったです。

さて、ここから新たなる趣味への第一歩!となるはずだったのですが、また悪い癖が出て放置に入ります。
放置しても必ず戻ってはくるんですが、どうも自分のタイミングじゃないと物事が出来ない性格の私です。
興味が薄れたのではないのですが、購入まででこの時は気力を使い果たしてしまったのかも知れません。
組み立てることなく3年近く放置しになってしまいました。

そして2024年の年明け、今年は新しい事を始めよう!とふっと心に思いました。
去年は持続することで気持ちがいっぱいだったので、新しいことに目を向ける事ができなかったのですが、そうだ今こそ手織りじゃないか!と心が湧き立ちました。
すぐにでも取り掛かりたいところですが、日々の生活の持続も大事。
1日空き時間を作り絶対に実際に織るまでをするんだと決め、その日まで少しずつ空き時間にやり方などを書籍や動画でイメトレして過ごしました。

そして迎えた初挑戦の日。
まずはバラバラなので組み立てから開始です。
歯車の向きを間違えて一度外すことになりましたが、ネジで締めるだけなのでさほど苦労せず完成。
古いタイプなので、今時のタイプの組み方を動画で参考にしても紐の結び方は分かりませんでした。
今のはプラスチックの結束バンドみたいなので、紐じゃないんですって。
説明書が付いていて良かったです。

見よう見まねで、経糸を張ります。
動画で地味で果てしない作業と説明されていたのが、身に沁みました。
経糸が紡紬糸、緯糸がリネン、どちらも過去に自分で染めたものです。
ピンク色は捨て織、ブルーからが本番の糸です。
張り方を気をつけないと緩むと聞いていた端糸が見事に緩んではいます。
でもなんとか織り地にはなっているようですよ。
右に、左にと糸を送るうちに、少しずつ糸目が揃う感じが分かってきました。
でも分かるけど思うようには揃わない!
次の段こそ、次こそ!と歯がゆい感じで織るうちに、あっという間に10cmほどになりました。

コースターは何枚か続けて織れるように、経糸を長く作ると動画でアドバイスを観たので、これも3枚出来るように糸の長さを張りました。
1枚目は練習、2〜3枚目が本番のつもりです。
緩んでいる糸を直して、新たに次の分を捨て織から始めました。
今度は丁寧に、慎重に慎重に。

いかがでしょう、初手織り作品が出来上がりました。
うん!なかなかそれらしい感じになっているのでは?

涼やかさがある夏向きなコースターです。
素朴な紡紬糸はふっくらしていて、リネンがキュッとしている感じ。
糸ストックから適当に選んできたのですが、なかなか良い組み合わせじゃないですか!
こんな織り地の夏バッグなんていうのもいいなぁと、妄想が膨らみます。

…いやいや!
これ妄想じゃなくて出来るんですよね。
今まで裁縫をすることはあっても布を作るっていう頭がなかったので、作れるものの奥行きがドーンと広がった気がします。
今回は出来ている糸を染めたところからですが、やろうと思えば羊毛や綿から糸を作り、自分で染めて、織り地にして、縫って加工することが出来る。
現代社会では布製品は機械に作ってもらったものが当たり前なのに、私1人の力でも最初から最後までを作ることが出来る。
何だかすごくないですか?
農業に例えるなら、種まきから食卓に上るまで。
そういった事をほぼしない生活で生きてきたので、ここまで出来るんだという事に感動しちゃいます。

私1人で作ったものは、世界に一つ。
お金を出して買うものとは全く違うものです。
作るのが楽しいのだから、下手でもイビツでもいいのです。
作ったものに囲まれると、ふふふと自然と笑顔になり大事に使いながら過ごせます。
すごく時間を使いましたが、新しいものづくりを始められて良かったです。
とても楽しかったので、このままゆっくり手織りの勉強もしていきたいと思います。


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