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人魚のこと

人魚は昔から好きなんですね。

昔見たドラマだか映画の人魚は風俗で働いていた。
おそらく常に水に浸れるからだろう。
人魚はどうも情が深いのでいつもろくなことにはならない。

性を売る職業はあまりにも辛いことが多い。
ある日俯いた男の客が人魚に気付き、寄り添う。
人魚は恋に落ち、俯いた男の客にキラキラ光る鱗を手渡す。
すると男に運が向いてくる。
男は最初人魚に感謝して、人魚を愛するようになる。
人魚は愛に喜びさらに鱗を手渡す。
またもや男に運が向いてくる。
しばらくは幸せに過ごすが、元々俯いていた人間というのは当然それなりの実力しかないわけで
幸運を無駄遣いし、お金も人も留めてはおけなかった。
もっともっとと追うものの、追えば追うほどにどんどん流れていく。
そして次第に幸運が目減りしたように感じる。

これは幸運がなくなったのではなくて、見ている方向が悪いからだ。
鱗で得られる大金や名声に目が眩んでしまった。
きっと人魚は二人で幸せになりたくて鱗を手渡していたのだろう。
なのにどんどん男は人魚から離れ、欲を満たすように動く。

そして人魚に手を上げるようになる。
「お前のせいで運が向かなくなった。お前の鱗が悪いんだ」
鱗の力が消えたわけではない。
だけど男が沢山の鱗を欲しがるために、人魚の鱗は既に再生が追いつかず、なくなっていった。

男は鱗を全て寄越せと、遂には人魚から鱗を包丁で全て剥ぎ取ってしまう。
血だらけの浴槽の中で息絶えた人魚は一人横たわっていた。

人魚を殺してしまっても、沢山の鱗を得られた男は歓喜し、
また夜の街に出て鱗の力でギャンブルで大金を得ようとする。
しかし死んでしまった人魚の鱗には力は宿っておらず、
男もまた自滅する。
最後に不死の力で蘇った人魚は、失意と共に海に帰っていく。

情の深さというのは美徳にはならないという教訓の話だったのだろうか。
タイトルも忘れてしまったんだよなぁ。

無闇に与えてはならず、見切りも付けなくてはならない。
水には全てを飲み込み死に至らしめる性質があるのに、
水の精霊には奪われる悲しみを孕んでいることが多い。
当たり前のように消費されるも、恩恵を得ることはない。
つい寄り添って甘やかしてしまうからなのだろうなぁ。

そして異性にとても入れ込む。
もう少し地に足をつけて考えればそんなことにはならないのに
残念ながらヒレを地につけたところでグニャリと横たわってしまう。
人魚姫の海の魔女が人魚の声を奪ったのは恐らく親切心からだろう。

若く幼い人魚は地に足がついていないような発言をするはずだ。
声が出れば話が出来て上手くいったかと思うかもしれないが、おそらくそうでもないだろうなぁ。
夢見がちでフワフワとして地に足がついていない発言のために、
さらに侮りを受けて利用されたんじゃないか。
そう思えばおそらく海の魔女は良い人だ。
そもそも声が美しかろうとそんなに使い道もないんだもんな。
話していることを聞いてちょっとなんか、、心配だったのかもなぁ。

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