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うんうん、インタビューもまた立派なアイカツだね #AKBDC

 フォロワーの、お誕生会が開かれている。

 普段は義理と人情に厚く、頼まれたことは断れない性分で人気者の私だが、猿も木から落ちるというコトワザが存在するように、大切な情報を見落とすことだってある。よって私は、この #AKBDC の最終日、締め切りまで10時間を切ったこのタイミングで会の存在を知り、「あっれ~、LINEきてなかったケドな~おっかしぃな~」と自分の落ち度を認めず主催者側に責任を押し付けようとしている。

 いやそんな話をしている場合じゃない。あと数時間で出来ることを見つけなきゃ。なにか、あと数時間で出来ること。料理は買い出しが面倒くさいし、絵とか小説は経験がないし、エッチな自撮りを送るのはリスクが高い(インターネットで知り合った人に裸の写真を送るのはよくないってグランマが言っていたので)。自分にできる、akuzumeサンに喜んでもらえる、最高のプレゼントって一体ナンダ……?上田麗奈さんのASMRを聴きながら悩むこと数時間、私はもう10年の近くになる愛用のノートパソコンを起動した。Excelの起動に2分程度を要するおじいちゃんPCだが、今は動けばそれでいい。見せてやるよ、これが私なりの、バースデープレゼントだ。




























――本日は、急なオファーにも関わらず、お時間を割いていただき、本当にありがとうございます。

ツ:いえいえ、お世話になっているakuzumeサンのためですから、なんだってしますよ。北の国から核を盗んで来い、みたいなのは、もうこりごりですけどね(笑)

――今回、akuzume氏と相互フォロワーの関係でもある、ツナ缶食べたい氏をお招きし、インタビューすることに成功した。映画鑑賞と女児アニメマラソンに多忙な日々を送る彼だが、akuzume氏の誕生日と聞いて、ロシアで人質となった諜報部員の救出ミッションを終えたその足で緊急帰国。夜景を一望できる都内某所のホテルの一室での、独占インタビューが実現した。

ツ:いやぁ、akuzumeサンの誕生日と聞いたら、居ても立っても居られなくなって、久しぶりに帰ってきてしまいました。お誕生日、おめでとうございます。過去の自分に恥じない、素敵で楽しい一年を過ごすのも、立派なアイカツですよ!ナンチャッテ(๑•؂<๑)

――ありがとうございます。きっとakuzumeサンも喜びの舞を踊っているころでしょう。ところで、akuzumeサンとの出会いは何だったんですか?

ツ:えっと、実は初めて話すんですけど、直接お会いしたことはないんですよ。交流は主に、SNSを通じてなんです。

――エエッ、そうなんですか!?

ツ:はい。私もいくつかnoteを読んでがakuzumeサンをフォローさせてもらって、私のもいくつか読んでいただいて。私の投稿をいつも感想付きでシェアしてくれるので、嬉しくて全部スクラップして持ち歩いてるんですよ。

――そういうと、彼は一冊のノートを取り出した。akuzume氏のシェアツイートを印刷したものが貼られていて、彼はそれを宝物のように大事に仕舞いこんだ。ぜひ写真を、とお願いしたが、「某国の機密も混じってるので」と断られてしまった。その時の彼の目を、私は忘れられない。

――なるほど。ちなみに、akuzumeサンのことを知ったnoteって、いったいどれのことなんですか。

ツ:スミマセン、実を言うと数年前のことなのでハッキリと覚えてはないのですが、いいねを付けていたお気に入りはコレですね。

――おぉ、やっぱり映画関連なんですね。

ツ:どうしても、自分の好みとして取っ掛かりは全部映画からなんです。akuzumeさんの感想noteは語り手のキャラクターを想像させるものが多くて、彼の小説家としての才能だなぁ、と。読ませる力って言うんでしょうか、読者をノせるのが本当に巧い。

――それは、ご自身の投稿でも影響を受けたりすることはありますか?

ツ:えっと、マネをしてみたことはあるんですけど、私じゃあうまく文体を扱えなくて、頓挫しました。そういうとことも含めて、akuzumeサンは憧れなんですよ。

――彼のろくろを回す手つきが速度を増していき、その回転の中心に小宇宙≪コスモ≫が形成されているのがわかる。珍しく興奮しているようだ。

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――akuzumeさんは日本のコンテンツに造詣が深いことで有名ですが、共感するところはありますか?

ツ:ちょうど小学生時代がベイブレード最初の絶頂期でして、私もドラグーンやドラシェルをバッグに詰め込んで友達の家によく行ったものです。パーツを集めて改造するのも乙ですが、何よりコマとコマがぶつかる様を見守りながら、友達と連戦したのが思い出深いです。今のベイブレードは全然触れたことはないんですが、当たってもケガしにくい素材になったり、お求めやすい価格で令和キッズにもご好評と聞いてますよ。

――なるほど。他にシンパシーを感じるコンテンツなんかも聴かせてください。

ツ:akuzumeサンなら、プリキュアは欠かせませんよね。私は『HUGっと!』だけの新参なんですけど、akuzumeサンは作品への理解度も高く、心に幼女を宿しているお方なので、大変参考になります。

ツ:「ふたりはPre-cure」シリーズも、大好きなんですよ。少し荒っぽい仕事を終えた時なんか、よく読み返します。この荒み切った世界の中で、唯一信じられるもの。それは愛や友情や正義だったりするわけですが、そのことをPre-cureは思い出させてくれる。本当、ありがたいことです……。

――わずかに目元に浮かんだ潤みを、私は見逃さなかった。コーヒーを一口、落ち着かせるように啜る姿も、どこか憂いを秘めている。

ツ:それと、やはりアイカツ!ですかね。akuzumeサンのアイカツ話は異国での貴重なレポの側面もあるため、大変勉強になる。

――アイカツですか。お恥ずかしながらあまり詳しくなくて。

ツ:それは……とても勿体ないですねぇ。少し話題が逸れるのですが、少しだけ『アイカツスターズ!』の話をしてもよろしいでしょうか。

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――アイカツスターズ!、ですか……。

ツ:えぇ。『アイカツスターズ!』はアイドルを養成する四ツ星学園というところが舞台で、そのトップに君臨する「S4」というアイドルグループに属することを夢見て入学した一年生たちが主人公なんですけど、まずこの作品では「個性」を重要視していて、各々が持つ他の人にはない魅力を見つけ出しそれを伸ばしていくことが学園の方針なんですね。でも主人公の虹野ゆめチャンは最初は憧れのひめ先輩のようなアイドルになりたいっていう意識しかなくて、でもアイカツシステムとかいう神様的な存在に選ばれてしまい、本来の実力とは不釣り合いな能力で勝ち上がってしまうんです。なので、ゆめチャンはそうした力に依存せず、自分の力で勝負する度胸と誠実さを試されるんですね。これは例えばアルコールを摂取して気分が高揚した大人がその状態を維持しなければ自分が保てなくなる、といった依存症のメタファーとして語れるし、身の丈に合った靴でなければいずれ破滅してしまうというのは『アイドルマスター シャイニーカラーズ』の七草にちかサンにも通じるところがありますね。
それだけでなく、アイカツスターズ!は常に残酷なまでに勝敗や優劣というものが明示されるんです。ゆめチャンのライバルである桜庭ローラさんは実力もあり、それでも努力と研鑽を惜しまないガールなんですが、ゆめの不思議な力によっていつも負けてしまう。その内、ローラにとってのアイカツの意味が「ゆめに勝つこと」になってしまい、自分やファンのためのものから遠ざかってしまうんです。あるいは、香澄真昼さんという少女は姉の夜空さんがS4のメンバーであり、姉を超えるために学園に入学した顔のいい女の子なんですけど、彼女は彼女でゆめ⇔ローラのドラマとはまた違った結末を迎えるのもアツいし、早乙女あこって子は最初男性アイドルにお熱な乙女なんですけど、どんどんアイドルとしての自覚や、ファンを喜ばせることに視野が向いていって、ぐんぐん成長していくんですよね。
で、二年目からは「ヴィーナスアーク編」というのが始まって、もう一つのアイドル養成所……というか船なんですけど、まぁガルパンと一緒ですね。そこではパーフェクトアイドルのエルザ様という女の子がいて、この船ではエルザ様の教育方針を誰もが徹底的に叩き込まれ、それでも残るものを「個性」と呼ぶ……方法は違えど、個性を重視するのはヴィーナスアークと四ツ星はまったく同じなんですね。果たしてそのどちらが正しいのか、というところに話が向かうのかな、というのが二年目の醍醐味でして。……スミマセン、私も履修の途中で、あまり詳しくはないのです。間違っていたらと思うと、あぁ、お恥ずかしい。

――ここまで一切淀みなく、2時間に渡り語られるアイカツスターズ!の物語。誌面が足りず内容を抜粋したものになることを読者各位にお詫びするとして、彼のろくろを回すスピードはさらに速まり、生成された小宇宙≪コスモ≫は100を超え、それらが衝突と再生を繰り返し一つの壮大なマルチバースが誕生していたことを、ここにご報告したい。

ツ:akuzumeサンのお誕生日を祝う機会なのに、脱線してしまいましたね。これがぼくの悪い癖でして、申し訳ない。

――いえいえ。最後に、akuzumeサンにメッセージはありますか?

ツ:そうですね。えっと……世界がこういう状況なので中々難しいのは承知なんですけど、ぜひ日本の地でお会いできることがあればいいですね。キュウシュウに来ていただければ、本場のショウチュウとトンコツ=ラメーンを用意しますよ!

――ありがとうございました!インタビューは即時、9月3日の23時59分までには必ず掲載させていただきます。

ツ:えぇ、助かります。では、私は次の任務がありますので。失礼。

――待ち構えていたかのように、V-TOLが雲を割きビルの真横で動きを止めた。中には屈強な兵士が銃を構え待ち構えていて、彼を手招きする。その大きな音にまぎれハッキリとは聴こえなかったが、「彼は友人なんだ、撃たないでくれ」と彼が言ったことだけはわかった。どうやら、私は一つ、大きな世界の秘密の片隅に触れてしまったらしい。

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――後日。香港の市街地で、二体の巨神がにらみ合っていた。ゴジラとコング。破壊神と守護神。その大きすぎる力は街を破壊し、人々を恐怖させた。だが意外なことに、この闘いに巻き込まれた死者や行方不明者は、その規模に似つかわしいほどに少なかった。生存者はこう語った。「急に現れたアジア人が、『ここでもうすぐドンパチがあるから、逃げろ!』って言って回って、おれのi=Phoneに空いてるシェルターの場所を転送したんだ。彼は命の恩人だ。ぜひお礼を言いたい」と。各国の政府が、ジャーナリストが、正体不明のアジア人預言者を探して回っているらしい。

――きっとその人は……いや、やめておこう。証拠も何もなく今もどこかの危険地帯で闘っている彼を勝手に救世主に祀り上げるのは、インタビューに応えてくれた恩に中指を立てるのに等しいからだ。今日も世界は崩壊の一歩手前で、なんとか踏みとどまっている。その均衡を守る者がいることを私たちは暗黙の内に理解はしていれど、正体は知らない。いや、正体など知らなくてよいのだ。何の特殊能力も大いなる正義も持たない私のような一般市民はただのモブ、フリーガイなのだから。何も知らなかったようにして、見せかけの平和を享受させていただくとしよう。

――ニューヨークは今日も人込みで一杯だ。私はくだらない陰謀論に成り下がった原稿を、その辺のゴミ箱に投げ入れた。何やら『ニュー・フロンティアズマン』の新米記者が編集長に怒鳴られているようだが、私には知ったことではない。ただ、その編集長がのたまう「悲惨な人生の中で、せめて一度ぐらい責任を持って意味のある仕事をしてみろ!」という怒号は、その通りだと思いはした。

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