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人生で一番好きなアニメ『キルラキル』の話を聴いてはくれないか。

 こちらのnoteでお世話になり始めて早一か月。自己紹介を一切していないことに後ろめたさを覚えつつ、しかしプライベートの話をしても面白くないので、マイフェイバリットなアニメの話を名刺代わりに書き連ねます。「無人島で暮らすとしたら何もってく~?」みたいな何ら生産性のない問いに対して、おそらくこの作品のBDがなければ自死を選ぶだろう、くらいに大好きなアニメ『キルラキル』の話を。

父の死の謎“片太刀バサミの女”を追い求め、本能寺学園に転校した流浪の女子高生・纏流子。
本能寺学園には着た者に特殊な能力を授ける『極制服』があり、その力と絶対的な恐怖によって生徒会会長・鬼龍院皐月が学園を支配していた。
“片太刀バサミ”を知るという皐月。
流子は皐月にその事を聞き出そうとするが…。
その出会いは、偶然か、必然か。
学園に巻き起こる波乱は、やがて全てを巻き込んでいく!

https://www.kill-la-kill.jp/introduction/

 上記のあらすじが示す通り、本作は学園を舞台にしたバトルものではあるものの、主人公が女子高生、という点で異彩を放っています。しかもその風貌はスケバン風味であり、いかにもCG然とした質感を抑えたセル画調の背景・美術作画との相性の良さは抜群。主人公を抜き出しただけでも、直近の作品にはない強烈な個性を滲ませています。

 その上、上記あらすじでは敢えて省略されていますが、本作には喋るセーラー服が登場します。装着者と「人衣一体」することで先の極制服に匹敵する力を与え、代わりに血を欲する「神衣」の鮮血と流子の出会いが1話で描かれ、以降は人と衣服の垣根を越えた絆のドラマが物語を牽引します。主人公と一心同体になって活躍する、意思を持った衣服といえば当然『ど根性ガエル』なわけで、先のスケバンと併せて本作の印象は常に“昭和”の二文字が浮かび上がります。

 しかしながら、本作の印象は決して“古臭い”などではなく、派手な要素を足し算的に積み上げていった結果出来上がった映像表現で、観る者の感性に殴り込みをかけてきます。ただでさえ描きこみ重点の作画はスピーディなバトルシーンにおいても一切破綻せず、その迫力は劇場版クオリティ。本作独特の太字フォント(ラグランパンチUB)で画面が埋め尽くされる演出では「壊惨総戦挙」「襲学旅行」などのパワーワードが腹筋に襲い掛かります。元々の世界観が荒唐無稽なのに、アニメ表現としても突き抜けてユニークで一切の手抜きがない。それらの要素は1話ですでに完成されています。

 このように『キルラキル』は映像のカロリーが尋常ではなく、情報量過多なそれは最早手書きアニメとしては臨界点を超えており、最終回に至っては放送素材の完成が放送日の早朝、という逸話を残しています。それほどに描きこまれたアニメを、TVで毎週放送するという贅沢さが、『キルラキル』の魅力の一つなのは言うまでもありません。

 一方で、『キルラキル』はストーリーの面でも目まぐるしく進行していきます。父の仇を求めて本能寺学園を訪れた流子は鮮血との出会いを経て、生徒会会長・鬼龍院皐月の統治下の部活の部長軍団、そして生徒会四天王との激しい闘いの日々が始まります。その過程で、転校初日に出会った満艦飾マコと友情を育み、鬼龍院財閥の支配からの脱却を目指す革命組織“ヌーディストビーチ”との接触を重ねながら、神衣や極制服の元となった「生命戦維」の秘密と、その裏で進行するある陰謀に立ち向かっていきます。

 さながら少年誌連載のバトルマンガのように、アツく心踊る展開が満載の本作。「3話に一度最終回」と評されるほどに展開が剛速球で、映像面で言及したカロリー重視の特徴はそのまま物語にも当てはまります。豪快かつ荒唐無稽な見た目とは裏腹に物語の筋は緻密に整理されており、バトルの勝敗にもロジックが用意されていて納得度は高く、伏線の回収も実に鮮やか。また、キャラクターの感情の爆発に従い物語が盛り上がるようイベントや台詞を配置するのは脚本術の王道と言えますが、その上がり幅が天井知らずな点も本作ならでは。神衣の設定になぞらえるなら“血が滾る”瞬間を切り取ったエモーションの描写にこそ、『キルラキル』の神髄が宿ります。

 ここまでは作品の概要で、本題へ。なぜ『キルラキル』が好きなのか、を無理やり言葉にするのならこれです。「超エモい」というやつ。近頃ネットでよく見かけるこの表現を見るたびに、思い出すのが『キルラキル』なのです。

 キルラキルはエモい。それはストーリーも劇伴も、絵の圧も声優の演技も主題歌も、全てのテンションが一切中だるみすることなく右肩上がりしていき、最終回目前で臨界点に達する。あぁ、ここまで真面目に書き連ねてきたのに突然、語彙力が無くなっていくこの感じ。作り手のテンションがそのまま映像作品に昇華して、その熱量に同調して目頭が熱くなる。その高まりを感じたくて、何度も『キルラキル』を見返しているのでしょう。その度に、厚手のハンカチが犠牲になってゆくのも名物です。

 アツくて泣けて笑えて心が滾る。私にとって『キルラキル』はどうしようもなく深く心の部分に縫い付けられた、赤い糸なのです。作り手ではない身分でおこがましい物言いを承知で申すなら、これが無くては生きていけない、半身のように愛おしい作品。眠っていた感情を呼び覚ましてくれる、大切な作品です。

 これ以上ないほど綺麗に畳まれた物語を観てその完成度に唸ると共に、続編はないのだな、という寂しさも湧いてくる最終回。ですが、昨今はTVアニメの総集編を劇場公開する例も多々見られ、新作カットやキャラクターボイスの新録などが付加されることもよく見受けられます。もし自分が石油王だったら、いや宝くじが当たってしまえば…。そうしたら実現させたい『激情版 キルラキル』の夢。いつか叶うといいな。でも映画館で泣きすぎて帰宅困難にならないかな…そんなことをボンヤリ考えながら(そして泣きながら)、この拙いプレゼンを締めさせていただきます。DVD全9巻、観るなら年末年始の今がチャンス。何卒よろしくお願い申し上げます。

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