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1,800円で浴びれる、美の大洪水『オーシャンズ8』

ダニー・オーシャンの妹、デビー・オーシャンが刑務所から出所した。「二度と犯罪はしない。普通の生活を送りたい」と言っていたデビーだったが、彼女の脳内には壮大な計画がすでに進行していた。デビーの狙いは、カルティエのダイヤモンドネックレス「トゥーサン」を盗み出すこと。トゥーサンをおびき出すためにデビーはファッションの祭典・メットガラを標的に、最高のメンバーを選び出してゆく。

 スティーブン・ソダーバーグ監督作『オーシャンズ』シリーズを、オール女性キャストでリブートしたクライム映画。ジョージ・クルーニーが演じたダニー・オーシャンズの妹をサンドラ・ブロックが演じ、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、リアーナ、 ヘレナ・ボナム=カーターら豪華キャストが集結。目もくらむような宝石類を華麗に盗む、新たなシリーズの誕生を宣言する一作である。

 何より特筆すべきは、宝石に負けない輝きを放つキャスト陣。しなやかで豪華で、何より気高く美しく。色鮮やかなドレスを着こなして、颯爽と去ってゆく。カッコイイ女優×カッコイイ女優=最強の図式の元に生まれる、圧倒的な画の強さ。拍手喝采を送りたくなるようなカットの連続に、こちらのテンションもうなぎ登りだ。

 こういった作品はジェンダー・スワップ(性別の入れ替え)と呼ばれ、悲しいことに『ゴーストバスターズ』のリブート版は公開前から差別的な意見による理不尽なバッシングを受ける、という痛ましい前例があった。未だに根強く残る性差別。ハリウッドでも、男女間でも賃金格差が問題となっている。その反動から生まれたであろうこの企画の大ヒットが、世界をより良く変え得るのだとしたら、応援したくなるのは当然の摂理。この映画が誰に向けられたものか、終盤の台詞に注目してほしい。

 とはいえ、女性だけのオーシャンズ、という企画ありきで作られた企画でありながら、「女性であること」の必然性にもうすこし特化した脚本であってほしかった。安易な「色仕掛け」に陥らない点は良かったものの、女性だからこそ達成できた偉業であることを示すことができれば、さらに溜飲が下がっただろうと、考えてしまう。

 男性版は3作作られた。そして本作も「8」から始まる以上、9,10と繋がる余地を有している。アベンジャーズにエクスペンダブルズ、その横にオーシャンズが並べば、ハリウッド・オールスター大感謝祭はさらに盛り上がるだろう。次なる夢の共演に期待を募らせる新シリーズの幕開けだ。


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