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燃える応援魂はさらなる高みへ。 #塚口プロメアマサラ レポ in 塚口サンサン劇場

 興行収入11億円突破、上映100日のロングラン達成と、オリジナルアニメ作品としては異例のヒットを続ける映画『プロメア』と、その作品の熱量を伝播するファンたち。その声に応えるように、応炎上映を超える「マサラ上映」の実施に手を挙げたのは、西の雄、塚口サンサン劇場である。

 4つのスクリーンを有する小さな劇場ながら、映画愛に溢れた各種企画が話題を呼び、「関西マサラの聖地」とも呼ばれる当劇場。今回の『プロメア』公開にあたっての劇場サイドの熱量たるや凄まじく、
①特別音響上映の実施
②9/7のマサラ上映の他、応援上映を複数開催
③カズ・オオモリ氏のファンアートを無償公開
④劇場周辺のマルゲリータが食べられる店舗の情報を公開
⑤『劇場版 天元突破グレンラガン』『ゲキ×シネ「蛮幽鬼」』の公開

という風に劇場全体が『プロメア』一色に染まるほどの応援企画を実施。大手シネコンには出来ない独自の企画が、全国のバーニッシュたちの間でも大評判を呼んだ。

 そのアツさにあてられたファンが後を絶たなかったのか、一番の目玉である9/7のマサラ上映のチケットはネットでも瞬殺、窓口分も速攻で完売という記録を達成し、その注目度の高さを裏付けた。あまりに早く決着のついたチケット争奪戦は、サンサン常連客をもってしても「異常」と呼ばれるものだったらしく、『プロメア』×マサラ上映の期待値は過去のイベントと肩を並べるどころか、上回る勢いだったらしい。

 そんな熱狂に包まれた宇宙初の『プロメア』マサラ上映の様子を、記憶の限りお伝えしていきたい。この歴史的な一夜のことを次なるマサラ上映のために、そして、劇場まで駆けつけ参加者を送り出してくれた愛のあるマサラ・サンサン劇場ファンのためにも、語り継いでいくためのお手伝いになればと思い、キーボードを叩くものである。

 …とはいえ、マサラ上映開始直前まで特別音響上映を鑑賞していたこともあり、上映前の活気あふれる待合室の様子を、克明に書き記すことが出来ないのは、本当に悔やまれる。筆者が地下の待合室を訪れた際には、キャラクターのコスプレに身を包んだ者、マサラの準備にと紙吹雪やクラッカーの持ち込み数を確認する者、デリバリーのピザに舌鼓を打つ者など、それぞれが交流しながらマサラへのテンションを高めている様子が伺えた。

 そしてこの私も、今回のマサラのための秘密兵器、チケットが取れる前から先走って作ったオリジナルTシャツをひっさげて、初の塚口デビューを果たすことになった。『キルラキル』でおなじみのフォントで繰り出す「塚口開墾ビーム」シャツは、Twitterを通じてかなりの方々から注目いただき、私にとっての名刺代わりになった。それだけに止まらず、劇場さんにも快く受け取っていただき、前説にご登壇された実質館長・T村さんに実際に着用していただいてしまった。塚口流マサラの一部になれたことに、多大なる喜びと誇りを感じており、改めてこの場で感謝申し上げます。

 ついに入場が始まり、スクリーンは満席の観客で埋め尽くされる。上映前には、有志のファンが作成した「Infernoの歌詞カード」「お手製フラッグ200本」が配られ、上映前なのに会場のボルテージは最高潮。ライブ会場のごとく歓声とクラッカーが鳴り響く歓喜の間と化した。

 その熱気をさらに盛り上げたのが、塚口名物、前説である。名曲「Inferno」に合せてめちゃくちゃ作りこまれたオリジナルムービーが流れる中、突如現れた劇場スタッフさんがダンスしながら登場(!?)。一気にダンスホールと化した劇場では、観客がスタンディングしてサビに合せて跳ぶ、クラッカーを鳴らすなどして、ここが映画館であることを完全に忘れていた。そしてついに、お手製の纏を掲げ、「塚口開墾」と書かれたシャツに、ガロっぽいズボンを履いての館長登場。纏を振って観客の反応を煽るようにしたと思えば、楽曲も止まった檀上で、唐突に正座の姿勢を取り、歌舞伎調での口上を始めたのである。

 前日に市川海老蔵の動画を観て練習したと語るその口上で語られる注意事項、塚口流マサラの極意とは「いなせであること」「粋であること」。上映を楽しむための心掛けを、作中のアプローチに寄せて語る館長の並々ならぬ努力に、観客は万雷の拍手・紙吹雪。クラッカーで応える。上映前だというのに、使い切るのでは!?と思わんばかりに鳴り響く音と火薬の香り。関西マサラの聖地の名は伊達じゃないことを悟り、手持ちの紙吹雪とクラッカーを8割ほどここで使い切ってしまったことを告白する。これペース配分無理では!?!?

 そしてついに始まった、前日譚『ガロ編』『リオ編』の上映。だが、ここで思わぬアクシデントが起こる。「映画の音声が聴こえない」のだ。無論、劇場側で上映ミスがあったわけではない。我々観客の声援が激しすぎて、通常音響より音量は大きめのはずの特別音響上映ですら、掻き消してしまっていたのだ。にもかかわわず、さすがは『プロメア』中毒者のおれたち、台詞が聴こえなくともサラリと暗唱し、キャラクターたちに声援を送る。その声援も歌舞伎町の「いよっ!」「待ってました!」といったものや、キャラクター愛を叫ぶ黄色い声援など、とにかく熱量がすごい。ほぼ平等にどのキャラクターにもファンがいるようだったが、なぜだか中の人表記で「堺雅人」と呼ばれ続けるクレイ・フォーサイト人気は、ここ塚口でも際立ったものを感じられた。

 なお、このときの様子を見て音響の調整が行われたらしく、本編開始時には我々の声援に負けない上映が行われたことも、付け加えておきたい。

 その高まったボルテージはそのままに本編へ突入。オープニングでのテロップに合せて「トリガー!」「中島さーん!」とおなじみの声援が飛び交う中、マサラの醍醐味である紙吹雪がこれでもか!と舞い、スクリーンに影を残す。その色とりどりの紙吹雪が舞い落ち、この段階で床が見えなくなり、足下のバッグが見えなくなる。まだ序盤だぞ!?飛ばしすぎでは!?そんな杞憂をよそに、各国の人々がバーニッシュに覚醒するに合せてピンクや赤の紙吹雪が舞い落ちて、また舞って…を繰り返す。これまでに体験したマサラよりも確実に量が多く、そして綺麗に舞うのだ。

 二列目左端に陣取っていた筆者だが、実はお隣がマサラのプロ。ほとんどの場面で発声せず、時には画面から目を離しながら、場面にあった色の紙の束を洗濯ネットから取り出し、放り投げる。天井まで届きそうなほど高く飛んだ紙の束は、空中で分解してヒラヒラと舞い落ちる。その真下にいた自分から見える風景は、さながら舞い散る桜のようで、一つの芸術の体をなしていた。マサラ流の盛り上げに徹し、映画とシンクロするかのような演出を手掛ける達人のワザマエに、こちらも映画ではなくお隣の仕事ぶりに目が離せなくなってしまった。

 マサラのもう一つの醍醐味はクラッカー。撃つ、殴る、蹴るなどの動作とも相性のいいそれだが、今回はとくに引っ切り無しに鳴り響き、派手なアクションはもちろん、小技の効いたクラッカー音が笑いを誘う場面もあった。例えば、「ガロが氷が割れないことを示すためにドンドン叩く」「若クレイが博士を射殺するシーンが連続して流れる」シーンでは、その動作に合せてパン!パン!と小気味よく火薬音が鳴り響く。あまりに鮮やかでコミカルで、場内は爆笑に包まれた。

 発声の内容も鋭く、これまでの応炎上映とはまた違った声援があったことも印象深い。以下、箇条書きにて。

・リオを裏切るあの人、「ジジイ」ではなく「おじいちゃん」呼び
・シーマが灰になるシーンではマサラならではの「追悼の紙吹雪」
・ガロの最期の晩餐、映る前から「チリ…?」「ひじき…?」
・ヴァルカン大佐ファン多し。リオに酷いことしても罵倒は無かった
・博士の施設に対して「大阪ホール!」「ビックサイト!」

 『プロメア』マサラ上映は、やはり応炎上映ともまた違ったスタイルを成していた。発声を重視するもの、歌唱する者、ペンライト芸で魅せる者、紙吹雪やクラッカーといったマサラ芸で盛り上げる者がいて、それぞれが各々の仕事をこなしながら『プロメア』を新たなステージへ繋げていく。そうした調和の下に見えてきた景色は、やはり未知のプロメア体験だった。

 クライマックスでは、こちらも総力戦。リオの覚醒~クレイとの対峙にてついに舵を切ったように観客もテンションを上げ、休む暇もなく体全身で作品の熱気に応えていく。ついに紙吹雪を使い切ったのか、ほとんどの者が床から回収しては投げを繰り返し、かと思えば再利用が聞かないはずのクラッカーは無尽蔵に思える程に鳴り響く。「覚醒」の大合唱に続きクレイの台詞は全員で復唱。

違うなァ!救世主だよォ!!じぃん↑るいのォーー!!!」←みんなで言う
\fooooooooooo!!!!!!!/ ←これもおれら
紙吹雪ドサァッ ←これも

ず っ と こ ん な 感 じ

 やはり「滅殺開墾ビーム」「ガロデリオン」の盛り上がりは最高潮で、紙吹雪によってスクリーンが一瞬覆われ、舞い落ちた紙吹雪が束になって頭に落ちてくるという事態に。もはや誰もペース配分だとか紙吹雪の温存だとかしゃらくさいことは考えていない。映画が終わるかおれの体力の限界のどっちが先かか、みたいな境地に達し、その場にいた誰もが持てる力を振り絞って、マサラに臨んでいた。

 全力でマラソンを走りきったかのような達成感と充実感に満たされ、ついに本編が終了した。エンドロールが終わって暗転、歓声と拍手で埋め尽くされる応炎上映のそれも感動的だが、今回はそこに紙吹雪とクラッカーが加わって、より祭りに近い瞬間になっていた。『プロメア』を愛する者と劇場が織りなした奇跡の一夜は、誰の目にも明らかに大成功に終わった。

 取材に来られた記者さん、劇場スタッフによる記念撮影の後、後片付け。これまたマサラ経験者たちが未経験者たちを導く形で、手際よく場内が片付いてゆく。目視で5~6cmは積もったであろう紙吹雪が、ものの20分程度でごみ袋に収まっていく様も、圧巻の一言であった。

 本当に貴重な体験をさせてもらったと、しみじみ思い返す。『プロメア』初のマサラ上映であり、劇場とファンが一体になって創り上げた一夜限りのムーブメントは、驚きと感動の連続で忘れがたい鑑賞体験になってしまった。上映中何度も「終わらないで…」と祈ってしまうほどに楽しく、時折振り返っては舞い散る紙吹雪や光を放つペンライト、そして観客たちの楽しげな顔に、ついつい涙腺が緩む一瞬もあった。ずっと憧れていた西のマサラとの最高の出会いを果たし、感無量の一言である。

 今回のマサラ実現にあたり、様々な企画でファンのボルテージを高め、結果として最高の上映を成し遂げてくれた塚口サンサン劇場さんには、どれほど言葉を並べても足りないくらい感謝をしているし、マサラに不慣れな私を導いてくれた諸先輩方に対しても同様である。作品を愛し観客に還元する劇場と、劇場のファンである観客との相互関係。その上に成り立つマサラ上映は、文句なしに最高の映画体験なのである。

 そして願わくば、第二・第三のプロメアマサラが行われ、そこに座れる強運を今後も持ち合わせられるよう祈るしかない。今最もアツいプロメア体験が得られる、このマサラの火を絶やしてはならない!何卒、次回のマサラもよろしく、お頼み申す~!!!(歌舞伎調に)

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