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ケンカを売る相手は選ぼう。『スカイライン -奪還-』

 まさか続編が製作されるとは予想もしてないかった、といえば『マンマ・ミーア』と本作『スカイライン』である。2011年(本国では2010年)に公開された『スカイライン -征服-』は宇宙人征服SFでありながら、なぜか安価な製作費のことばかりが取り上げられ、実際に観てみると「あぁ…うん…」と謎の納得をもって締めくくられる、不思議な余韻を残す一本だった。

 そして待望の(?)続編となる『スカイライン -奪還-』がついに上陸。またしてもマンション立て籠もり劇に1,800円払うハメになるのか、と恐れおののいていたが、予告編を観た瞬間、不安は期待に変わった。明らかにテンションが違うし、作り手のIQが下がっている―。前作では脚本を担当し、今作では監督も兼ねたリアム・オドネル氏が本当に描きたいSFとは、ただ征服されてゆく弱者ではなく、その支配に立ち向かう漢(おとこ)のはずだ。その真意を確かめてきたので、どうかお付き合いいただきたい。

突如地球に謎の未確認飛行物体が襲来し、人々は次々に吸引。その結果、地球はわずか3日間で謎の生命体に征服されてしまった。
息子のトレントと共に宇宙船に吸い込まれたロサンゼルス市警の刑事マークは、エイリアンへ変貌を遂げながらも人間の心を残していたジャロッドとの共闘によって、宇宙船の破壊に成功する。内戦が続くラオスに墜落した宇宙船から、ジャロッドの娘ローズとともに脱出したマークは反政府組織のボス・スアと共闘し、エイリアンに対抗する手がかりを見つけ出す。人類の復讐が、ついに始まろうとしていた。

 結果から申し上げまして、面白かったです。謎の宇宙人の侵略を為すすべなく受けるしかなかった前作から一転し、本作は血沸き肉躍るバトルSFへと進化。既視感のある展開やご都合主義の粗が目立つ内容に不安が立ち込めるも、それらを全て払拭する最高のラストバトル。幼き少女を守るため、そして誰が地球の支配者なのかを徹底的に叩き付けるため、地球最強の漢たち(紅一点含む)が奮闘する。

 映画界を代表する武闘派俳優たちが共闘するクライマックスは、他のシーンと比べてもテンションもIQの低さも段違い。インドネシア最強格闘技「シラット」によってエイリアンどもは肉塊と化し、地下鉄運転手だった女は立派な戦士に成長し、ヤヤン・ルヒアンの肉体が返り血に染まる!その上宇宙ロボット大決戦なる濃厚ソースをぶっかけて映画という丼に乗っけてしまうという、まさかのボンクラ描写満漢全席。あぁ、こんな映画が観たかった…と笑顔になれる、語彙力壊滅映画が『スカイライン -奪還-』なのだ。

ここからはク〇ったれ宇宙人と闘うイカれたメンバーを紹介するぜ!!

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 全ての犯罪が合法化し無法地帯となる一夜『パージ』を生き延び、キャプテン・アメリカとも闘った漢! フランク・グリロ!!!!

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 『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』でマーゴット・ロビー演じるトーニャのコーチだった人! ボヤナ・ノヴァコヴィッチ!!!

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 麻薬王が支配する高層ビルに潜入したSWAT隊員の、血みどろ地獄絵図を描いた『ザ・レイド』にてインドネシア最強格闘技「シラット」を披露し全アクション映画ファンの度肝を抜いた漢! イコ・ウワイス!!!
(現在Netflixで配信中の『シャドー・オブ・ナイト』は大傑作なので全人類観て)

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 『ザ・レイド』から二人目の挑戦者現る!全ての敵を血祭りにあげる狂犬。三池崇史監督もお気に入りらしいよ! ヤヤン・ルヒアン!!!

どうだろうか。

 この作品から得られる教訓は、「下調べは大事」という基本中の基本である。アクション映画ファンな俺たちは、例えばこんなメンバーが敵だとわかった瞬間パンツ一丁で土下座で白旗で命乞いをするはずだ。コイツらと闘ってはいけないと、本能が警告しているのがわかるはずだ。

 なのに作中のエイリアンときたら、あろうことかロケハンを怠った結果、人類にも立派な殺星人マシーンがいることを知らず、でっかい宇宙船でイキり倒したあげく、惨敗する。何事においても、予習は大切だ。大事な仕事に気になるあの人とのデート…なんでもいいが、事前の準備を入念に行わない怠け者には死が訪れる。そんな大切なことを思いださせてくれる本作『スカイライン -奪還-』は、宿題を後回しにして夏休みの終盤に後悔するような生き方をしてきたオマエらの心根を徹底的に再教育する、道徳ムービーなのだ(R15+指定)。

 その他にも、前作主人公との共闘という「仮面ライダー冬映画展開」にエンドロールのオマケ映像など、オタクのくすぐり方を熟知した作り手による、徹頭徹尾ハッピーな一作。なんというか、すごく楽しんで製作していそうな雰囲気が漂ってきて、嫌いになれない。ちなみに監督のクリス・オドネル氏、映画の嗜好を見れば一瞬で「信用できる男」だと理解(わか)るので、どうかそのマインドを失わず映画を作り続けて欲しい。ありがとうクリス。

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映画com.様インタビューより抜粋(引用元


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