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606人の王国民が叫び、祈り、歌った一夜。『#バーフバリ絶叫』レポin新宿ピカデリー(2.9)


 お前またバーフバリの話かよ、ってね。





 BD/DVDの発売日もアナウンスされ、もうすぐ劇場公開も終わるのでは…?と戦々恐々していると、まさかの上映延長、もしくは公開劇場が追加され、不死鳥の如く再生を果たした一本の映画、『バーフバリ 王の凱旋』。観た者を熱狂させ、語彙力を奪い去り、今日もまた一人、また一人と王を讃えるマヒシュマティ王国民を増やし続けるこの恐るべき英雄譚。その熱気に狂わされた「新宿ピカデリー」なる映画館は、この『バーフバリ』を施設内最大スクリーンで上映し、座席数606席を王国民のために明け渡す「聖地」として、崇められていた。そんな聖地がまさかの暴挙に打って出たのは1月29日のこと。通算3度目となる絶叫上映の開催をついにアナウンスしたのである。




 2度あることは3度ある。その2度目にあたる1月23日の絶叫上映に参加し、大雪の寒さを感じないほどに熱狂したことのある私も、この一報には震え、歓喜した。そして、チケットの販売開始を待ちわびていた。こちとら絶叫上映もマサラ上映も堪能させていただいた身だ。躊躇うことはない。狙うは最前列のど真ん中、我が王を仰ぎ見るベストポジションだ。23時57分、58分、59分…秒針の動きと心拍数の高鳴りだけを知覚しながら、震える手をなんとか抑える。そして、時が来た。










 勝ったっ…!!!!!ありがとう神様。僕の日頃の行いを見ていてくれていたんだね。まさにベスト、思い通りのポジションを確保できた。もう最高だ。これを読んでくださっている王国民を信頼して正直に話すと、この時点でちょっと泣いた。あぁ、この日のために色々耐えてきたんだろうな、なんて胸に秘めながら、当日の奮闘を誓うのでありました。

A-18、最前列のど真ん中です。




 そしてついにやってきた2月9日。新宿ピカデリーのロビーはまたしても異様な高揚感に包まれていた。なんと、撮影スポットとして王のスタンディが君臨なされていたのだ。




 上映開始1時間前に劇場に駆けつけた私もカッタッパのスライディング臣下の礼で撮影していただき、テンションは最高潮。周りを見渡すと、前回の絶叫上映やキネカ大森でのマサラ上映でお見かけした方々と再会することが出来、作品の中毒性を改めて実感するなどしていた。

 そして上映開始の15分ほど前にシアター1に入場し、着席。今回から持ち込みを許可された鈴の音が鳴り響く場内を最前席から見渡すと、コレがまた絶景の一言。お顔が映った写真を投稿するのはお控えするのでイメージしていただくしかないのですが、2階席まで埋まりきった劇場の、人の圧が物凄いのだ。開始前には企画元のV8Japanスタッフ様による前説が恒例だが、それを受けてのレスポンスの声量が尋常ではない。自分がいくら声を発しようとも、600名の圧に飲まれてしまうのではないか。

 そんな謎の緊張感を覚えていると、開始前なのに劇場に大歓声が鳴り響いた。何事!?と後ろを振り向くと、なんとあの「シヴァリンガ」を抱え歩いてきた一人の女性が目に入った。




 劇中と同じポーズで最前列まで歩き、シヴァリンガを檀上に設置したその女性に、我々は惜しみない拍手と「バーフバリ」コールで賞賛の想いを形にした。そう、本編開始前に、「バーフバリ」コールが自然と発生した瞬間である。その女性が企画元のスタッフではなく有志の持ち込みと発覚し、場内が騒然とした中で、いよいよイベントが始まった。
※本編終了後にその女性にお話しを伺ったところ、上映日の前夜に思い立って作成した、との素晴らしいエピソードが。

 V8Japanスタッフによる、愛のあるご挨拶と注意事項が行われたのだが、先のシヴァリンガ騒動に高まった王国民はヒートアップしており、鈴とタンバリンの織りなす音、黄色のサイリウムの煌めきが消灯する前の劇場を覆った。その後は配給のツイン社、そして新宿ピカデリーへの感謝を込めた発声練習へと進むのだが、606名が発する「ありがとー!!」の大合唱を背中に受け、このただ事ではないイベントの恐ろしさを再度実感することとなった。


 そして、高まった王国民を抑えることなど、もう不可能だった。おなじみの前編『伝説誕生』のダイジェストでは、キャラクターが大写しになる度に割れんばかりの黄色い歓声が鳴り、文字通り絶叫上映と化している。まだシヴドゥと名乗っていたことのマヘンドラ・バーフバリがアップで映った際には「キャァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!」と女性陣の、歓声と言うよりは悲鳴に近いシャウトが鳴り響いた。予想通り、前回の絶叫上映とは比べものにならない熱狂、魂の叫びが、スクリーンにぶつけられ、ただただひれ伏すしかなかった。

 そして『王の凱旋』本編が始まる。先ほどの前説によれば絶叫上映はおろか『バーフバリ』初見のお客様も一定数おられたものの、やはり大多数は訓練されたマヒシュマティ王国民。開幕のツインロゴ、タイトルへの「ありがとー!!」に続き、例のアマレンドラ登場シーンではインド象の暴走を鎮めようと右往左往する国民に扮し叫んでいた観客も、アマレンドラがぶち破る扉の大写しになると絶叫を一旦止め、「おぉー!?」と期待を煽り、それが破られた瞬間にまたしても割れんばかりの「foooooooooooooooooooo!!!!」と大きな拍手がこだました。事前の打ち合わせもなくこの一体感を生み出す王国民のポテンシャルに、毎回驚かされてしまう。

 そして今回、王国民の進化を最も感じられたのが、「歌唱」の要素である。みんな大好き「Sahore Bahubali」はもちろん、中盤の白鳥の舟こと「Hamsa Naava」が流れた際には、観客も一緒になって歌い、本編とのシンクロがどんどん加速していく。事前にサントラを購入し、この日のために歌詞を頭に叩きこんではいたものの、一人で歌いでもしたら浮かないか…などと心配していた私の杞憂を打破し、心置きなく「サーホーレ、バーフバリ♪」と高らかに歌い上げることが出来た。挿入歌は歌うもの、という姿勢は本国のマサラ上映にまた一歩近づく行為なので、日本のマヒシュマティ王国民の水準の高さをなんとか本国の方にも知っていただきたい(どなたか英文化してくださいませんか!?)

 本編を隅々まで味わい尽くした王国民による、愛のある絶叫。物語の展開や台詞に対するツッコミも多く見受けられるが、そのどれもが決して他人を不快にしない、いわゆる野次や侮蔑の意を含んでいないのも喜ばしい。キャラクターの感情に全力でノったり、あるいは警告を促したりと常に忙しないが、これも作品を知り尽くしているからこそ出来るワザマエなのである。戴冠式のシーンでは、各自持ち寄ったペンライトや剣の玩具などを駆使して、兵士が行う敬礼を真似る者が続出した。

 また、コメディシーンでは笑い声が漏れるなど雰囲気も良好で、バーフバリを除いて最も歓声を集めたのは、あのクマラ・ヴァルマだった。小心者かつ臆病者として登場するも、アマレンドラの鼓舞を受けて真の勇者に成長した男。そのコミカルな振る舞いは何度も会場の笑いを誘い、彼がバーフに剣を教えるシーンでは「クマラせんせー!!」と大合唱が揃った。後にバーフとデーヴァセーナの結婚を祝う品を渡すシーンでは「それヒョウ!」のツッコミが爆笑を生み、そして惜しくもビッジャラデーヴァの策略にハマり命を落とすシーンでは「クマラー!!!」「クマラありがとー!!」と誰もが彼の死を悲しんだ。間違いなく今回のMVPである。

 そして哀しい死がもう一つ。アマレンドラの死を描くシリアスなシーンは、皆固唾を飲んで見守り、まるで黙とうを行ったような荘厳な雰囲気が漂う。どこからか聞こえるすすり泣きの音に、誰もが真剣に映画と向き合っていることを感じ、胸が熱くなる。前回の絶叫上映、マサラ上映でも同様の事象が起こったが、やはり偉大なる王の死を前にして、動揺しない者などいない、という証左だろうか。

 物語は終盤、息子マヘンドラの時系列に戻ると、それまで静まり返っていた観客も再度エンジンに火を灯し、最後の闘いを全力で応援する。本作を観た方なら共感していただけると思うのだが、終盤のマヘンドラ対バラーラデーヴァの一連のバトルでは、あまりに奇想天外、こちらの常識を上回るシーンが連続するため、こちらの語彙力が追いつかなくなり、もはや冷静な作品へのツッコミなど無効化されてしまう。それを知ってか、ここからは「fooooooooooooooooooooooooo!!!!!!」の声量が全てを物語る。バラーラが覗く望遠鏡にデーヴァセーナが映るシーンの歓声を仮に「1」とすると、その後にマヘンドラが映るシーンで「5」、バドラの生首の帰郷で「10」、と次々にインフレしていき、バラーラ戦車の登場の頃には「35」、そしてカッタッパルト(前説で命名)のシーンでは堤防が決壊したが如く、これまでにない大歓声と拍手が巻き起こり、数値化するなら「120」といった具合である。ここまで書いてきて自分でもよくわかってないのだが、観客のテンションの過剰なインフレこそ、『バーフバリ』体感上映の醍醐味であろう。

 かくして勝利を収めたマヘンドラがマヒシュマティの王座に就いて、エンドロールを迎えた。そして大きな拍手が場内を埋め尽くす頃、今回は勇気を出して、コールを促すために率先して、残った体力を使い切る勢いで「バーフバリ!」と叫ぶと、二言目の頃には大きなコールになってそれが帰ってきて、やがてそれは606の叫びとなって、巨大なバーフバリコールを発生させた。まるで劇中の戴冠式さながらに、大音量で響き渡る王の名。本当に楽しくてあっという間の2時間半を共有した、全ての観客との最後の共同作業。毎回このコールで涙を流してしまうのは、その楽しかった時間を反響させ、冷めやらぬ興奮を自覚し、同時に寂しさを感じてしまうからだろうか。ずっと続いて欲しい、そんな思いを込めたバーフバリコールが2度も起こった異例の事態を経て、絶叫上映の宴は幕を閉じた。





 シアターを出る頃には酸欠気味の体も復活し、バーフバリを讃えるコスプレや様々なグッズを持ち寄った有志の撮影会会場と化したロビーで、隣同士の観客や出会ったフォロワー様との挨拶を交わした。元々、バーフバリきっかけで始めたTwitterのフォロワー様と挨拶できたこと、その際に「いつも読んでます」と過去のバーフバリコラムの感想を聞かせてくださった方がいて、『バーフバリ』で繋がった縁にモチベーションを支えられていることを痛感した一夜だったことも、告白してしまいたい。お声かけしていただいた皆様、本当にありがとうございました。

 最後に、この最高の催しを主導してくださるV8Japanの皆さま、配給のツイン様、新宿ピカデリー様には、改めてお礼申し上げます。『バーフバリ』の面白さを倍増させる絶叫上映というスタイルに出会ったこの場所で、もう一度あの時と同じ催しに参加できた幸福は、きっと忘れられません。

 聞けば、『バーフバリ 王の凱旋』の絶叫上映は全国でも広がりの予感を見せているとのこと。きっと最高の体験になることを保証しつつ、「何を叫んだらいいの」と迷った時は、本文が参考になれば、何よりであります。劇場で、みんなと、サーホーレ、バーフバリ!


[2/15追記]
あさひかわ様に英訳していただきました!!

This text was translated in English! Please read it! !

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