第503回 刀の持つ力を再認識

1、日本刀レビュー12

来ましたよ。

ついに週刊『日本刀』の【刀剣人物伝】で我らがお屋形様、伊達政宗が取り上げられる日が。

それでは本日もいってみましょう。

2、今号はなかなか濃い内容

巻頭の【日本刀ファイル】は

尻懸則長

尻懸とは聞きなれない言葉ですが、

大和五派と呼ばれる、鎌倉時代に起こった刀工集団の一つですが

謎が多く、他の派閥が特定の有力寺院と結びついているのに対し、

鍛冶場も諸説あるということ。

掲載作は刀剣博物館所蔵で、磨り上げを行なった本阿弥光室の金象嵌銘が残されている珍しい作品です。

光室の銘には花押まで入っているのが特徴ですね。

明治18年に奈良県桜井氏の談山神社から明治天皇に献上され、現在では東京国立博物館に所蔵されている太刀(本誌に写真掲載)とともに尻懸則長の代表作と評されています。

そしてお待ちかねの【刀剣人物伝】伊達政宗。

もう名刀とのエピソードは数知れず。

例えば、伊達政宗が豊臣秀吉に臣従する前、鷹を贈った返礼をして届いた鎺国行はつい先日仙台博物館で実物を見てきました。

秀吉の形見分けとして拝領した鎬藤四郎の脇差は、政宗も終生愛蔵していたようです。息子忠宗の代になって将軍家に献上されたものの、明暦の大火で焼失してしまったとのこと。

江戸城普請の褒賞として下賜された大倶利伽羅広光は個人蔵ながら現在まで無事に伝えられています。

政宗が小姓を手打ちにしようとしたら、燭台まで一緒に切れたという伝説が残る燭台切光忠も秀吉からの下賜です。のちに水戸徳川家に渡りますが、関東大震災で焼け身になりつつも、現在は徳川ミュージアムに保管されているとのこと。

無類の刀好きであることがよくわかりますね。

【日本刀匠伝】は長光。

備前長船派を代表する名工で、文化財指定の件数が最多であるとのことです。太刀だけでも国宝6振り、重要文化財28振りというから群を抜いてますね。

最も名高いのは、足利義輝から織田信長、徳川家康と天下人が愛した「大般若長光」(本誌に写真掲載)でしょう。

上杉景勝が愛用したとされる「高瀬長光」は現在でも米沢の上杉博物館に伝来していますし、

来年の大河ドラマの主人公明智光秀が所持していた「遠江長光」も徳川美術館に伝来しています。

【現代の日本刀カルチャー】では刀剣怪談名作ガイドとして

『幻想文学』『幽』の編集長であった東雅夫氏がおすすめの刀にまつわる作品をいくつも紹介しています。

昭和10年刊行の本堂平四郎の『怪談と名刀』に始まり、

個人的には東郷隆の『戦国名刀伝』が気になりましたね。

そして、東氏自身がとある博物館の学芸員さんから直接聞いたという怪談話もリアル感があって秀逸でした。

3、政宗公のコンプレックスというのは?

いかがだったでしょうか。

週刊『日本刀』貴方も購読したくなりましたか?

本筋とは全く関係ないのですが、本誌に掲載されている政宗公の肖像画(東京大学史料編纂所所蔵模写)が独眼で描かれていることが気になりました。

というのも、政宗公は右目が見えないことを非常にコンプレックスと感じており、死後の肖像には両目を入れるようにとの遺言が伝えられています。

というかそのようにいつも解説してしまっていましたが、こんなところに例外があったなんて…

日々知識のアップデートが必要ですね。

本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?