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第227回 他の掲載論文がすごく面白く思える現象

1、学会誌の内容をもっと広く公開したい

日本遺跡学会 が発行している『遺跡学研究』第15号に依頼されて寄稿したので、掲載誌が送られてきました。

私が寄稿したのは

特集2 寺院の調査と保護の在り方

の部分ですが、

特集1 文化遺産とまちづくり

が個人的に気になるので、そちらの内容について少し紹介したいと思います。

2、まちづくり×歴史の実際

読者のみなさんは歴史まちづくり法というものをご存知でしょうか。

正式名称は「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」

という長くて難解なもの。

端的に言えば、歴史的な街並みとそこに根付く生活を守るための法律 といったところでしょうか。

この法律の特筆すべきところは、

国交省と文化庁が協力して取り組んでいる行政分野ということです。

具体的には、

まず市町村が作成した「歴史的風致維持向上計画」を国が認定します。

この計画の策定段階から国の支援が受けられますし、

計画に定められた事業、

例えば景観をよくするために電柱を地中化したり、歴史的な建物の修復をしたりという事業に国からの支援を受けた補助を出すことができるようになります。

既に認定を受けた都市は全国に62件、このうち東北地方は8件となっています。

最近話題になっていました

歴史まちづくりカード

これはカード型のパンフレットという位置づけで、歴史まちづくり法の適用を受けた都市の象徴的な写真と簡単な説明が記載されており、コレクター心をくすぐってPRしようとする試みです。

直接足を運ばないと入手できない、というのがみそで、同じく国交省がダムカードやマンホールカードを発行して人気を博しており、第3弾といった位置づけでしょうか。

現在では東海地方の自治体で13種類が発行されているようです。

福島県では白河市・国見町・磐梯町・桑折町の4自治体が認定を受けており、

平成29年 11月25日に白河市を会場に日本遺跡学会大会が「文化遺産とまちづくり」というテーマで開催されたことから、

その事例報告が本誌に掲載されています。

3、先進地がすでに行っていること

掲載内容では

鈴木巧・鈴木一寿 「白河市における歴史を活かしたまちづくり」

として報告された白河市の事例が大変興味深いものでした。

中でも事業に取り組むための体制構築の話が印象に残ります。

普通、まちづくりは都市計画部局が、文化財は教育委員会がそれぞれ担当しますが、

白河市では建設部都市計画課内に歴史まちづくり室というこの事業に特化した枠組みをつくり
ます。

計画策定後は建設部内に都市計画課・まちづくり推進課・文化財課で構成される都市政策室を新たに設置します。(下図参照)

今回の文化財保護法改正で謳われている、文化財担当部門の柔軟な組織体制を先取りしていたことになります。

実際、東日本大震災からの復興には、この体制だからこそ迅速に対応できたという側面もあったことでしょう。

目の前にある課題に取り組むために既存の枠組みに囚われず、柔軟に形を変えられる、そんな組織が結果を残し、存続していくのでしょう。

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