第164回 ハードボイルドと教養

1、読書記録 8

今日ご紹介するのは

辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦 / 高野 秀行,清水 克行 #読書メーター https://bookmeter.com/books/12712881

ノンフィクション作家で「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く。」ことをモットーにしている高野秀行氏と

「室町時代ブームの火付け役」と称さられる歴史学者、清水克行氏が

互いに興味を持った本を相手に紹介し、読み込んできて対談する、という企画。

本書には8冊がテーマに選ばれ、

第一章 『ゾミア』 文明は誰のもの!?

第二章 『世界史のなかの戦国時代』 世界に開かれていた日本の辺境

第三章『大旅行記』 イブン・バットゥータ30年の旅の壮大にして詳細な記録

第四章 『将門記』 天皇を名乗った反逆者のノンフィクション

第五章 『ギケイキ』 正義も悪もないロードムービー的作品

第六章 『ビダハン』 あらゆる常識を超越する少数民族

第七章 『列島創世記』 無文字時代の「凝り」

第八章 『日本語スタンダードの歴史』 標準語は室町の昔から

という目次だけ見てもヨダレがでるような、ワクワクするような文字が並んでいます。

2、辺境の魅力

紹介するにあたって、どれか一つの章に絞ろうと思いますが、

1番メモを取ったのは第二章でした。

テーマは私がもっとも好きな中世。

そして辺境。

日本列島を中心に見ると

琉球や対馬、蝦夷地は辺境ですが

実態はそのようなところこそ境界ならではの特質で豊かになっている、という話。

清水氏が補足として例示するのは函館市の志濃里館で出土した40万枚の中国銭。この枚数は本土でも見つかっていないほどだと言います。

多少無理して現代の金銭価値に換算すると4000万円くらい。

地方の領主の館跡にそれだけのお金が埋蔵されていたということに驚きです。

その財源を生み出すだけの経済力をもつ地域だったということになります。

また対馬を例にとると、
当時の日本の政府は直接外国と交渉をせず、対馬に任せきり。

対馬側もそれをいいことにかなり好きにやっているということ。

倭寇と呼ばれた辺境で活躍していた人たちはすごくバイタリティがあるのに、中央の人々は内向きであったと評して、現代と変わらないと見抜くのは共感できました。

3、知識×実践=教養

魅力的な掛け合いはまだまだ続きますがきりがないのでこの辺りにしておきます。

探検家と文献史学者という、一見接点がなさそうな2人の知識人が、同じ本を読み込んで議論する、という試みがここまで面白くなるとは、編集者の力ですね。

あとがきによると、高野氏はこの対談のために毎回10日以上かけて準備したいたとのこと。時には関連図書まで読み込んで臨むその姿勢があるからこそ惹きつけられる知的営為になるのでしょう。

高校生が文化祭の出し物に夢中になるように、
中年バンドがコンサートにのめり込むように、

と高野氏が表現したように

無我夢中になって取り組むことの高揚感は何にも変えがたいものでしょう。

そしてその結果残ったものは教養という名の羅針盤だと述懐されています。

あぁだれか、私とハードボイルド読書合戦してくれませんか?

#高野秀行 #清水克行 #読書合戦 #ハードボイルド #中世史 #村井章介 #辺境 #志濃里館 #対馬 #教養



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