第31回思いをカタチにする

1、導入

過去の遺物から当時の人の想いを復元するのは非常に難しいです。

実用品であってもその機能だけで判断できるわけではありません。

実際、現代に生きる我々も、常日頃消費している物品について「完全に」機能だけで選んでませんよね。

色が好きだから、形に惹かれたから。

好きな人が使っておススメしていたから。

最新型だから、レトロ感があって懐かしいから。

様々な感情が入り混じって選択をしているのです。

2、認知による考古学

認知考古学という分野があります。

一時期すごく流行しましたが、どうも私にはしっくりきませんでした。

認知心理学を援用してより感情を重視した解釈をするという事だと理解はしましたが

程度の問題というか、段階を踏んでいるかどうかでしかないのではないか、というか。

究極のところわからないんですよね。

様々な分析をして、現時点で最も確からしいことを言うしかない、それだけですね。

縄文時代でいうと、土偶とか石棒とかを呪術的な道具だとか

中世でいうと昨日のnoteで触れた貿易陶磁器の高級品が威信財と呼ばれるステータスシンボルだったとか

説明はしますけれども本当のところはどうなのか。

縄文人は土偶に性的興奮をおぼえていたかもしれないし、中世人は緑色の茶碗を現代のフィギュアみたいにコレクションすること自体が目的化していたのかもしれない。

3、世代間ギャップはいつからか

よく

「どの時代でも結局同じ人間だ」

とか、

「歴史は繰り返す」

とか安易に言いますけど

感性は時代によって相当違うと思いますよ。

現代で例えると物心ついた頃からスマホがある世代と固定電話で恋人と長話をしたことある世代の感覚は相当違うし、

右肩上がりのバブルを経験した段階の世代と

不景気しか知らない若者とは社会観や政治感覚が全く違う。

どんなに科学性を追求して過去の人間たちの心理に迫ろうとしても考古学者の生きる現代の感覚から生じるバイアスは拭いきれないでしょう。

その時代その時代で解釈された歴史が受け入れられ、社会の役に立つのならそれでいいのではないでしょうか。

時代が変われば解釈、評価も変わる、なんて

戦後歴史学とかマルクス主義とか実証主義とか議論していた世代に言ったら説教されそうですが、それもまた世代間ギャップなのでしょう。

#コラム #世代間ギャップ #認知こうこがく


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