第126回 文化財の修理と管理

1、もう来年のはなし

国の2019年度予算概算要求が話題になる時期になりました。

概算要求というのは、省庁から

来年度これだけ、この用途で予算を使いたいです!

という要求を出すことを言います。

あくまでも要求ですので

財務省との協議や国会審議で減らされることが前提ですが

今、国がどのようなことをやりたいのかがよくわかるデータでもあります。

文化庁でも

文化芸術の力で未来を切り開く

という題名が付けれられて

今年度予算より250億ほど多い1330億の予算が組まれています。

観光戦略実行プラン

だとか

博物館クラスターの形成

とか流行りの言葉が並んでいます。

報道で取り上げられたものとして、「文化財レッドリスト」作成についての予算が組まれたようです。

2、業界再生は補助金で達成できるのか

記事によると

文化庁は25日、後継者不足で存続が危ぶまれる伝統工芸などを一覧にした「文化財レッドリスト」を数年かけて作成し、支援を強化する方針を決めた。

とのことで、約8億円を見込むとのこと。

伝統工芸、と言っても具体的には、

檜皮葺の職人

雅楽の楽器職人

などが挙げられています。

文化財の修理費用だけではなく、職人の育成にも補助金をつけるということなのでしょう。

ただ、これについて本当にうまくいくのか甚だ疑問です。

文化財関係の職人に若手が増えない、ということの解決策として団体に補助金出すことが本当に最善なのでしょうか。

今まで業界自身でできなかったことが、すこし補助金がもらえたら劇的に改善するのでしょうか。

それより若手が職人になりたがるような魅力ある仕事になることが必要なのではないでしょうか。

例えばですが、一人前になるまで住み込みで働いてろくに給料も休みも自由もないような職場に若者がやってくるでしょうか

もちろん伝統工芸とか職人社会とか、一般企業の原理では測れないものがあるのは否定しませんが、まず門を叩く人の母体数を挙げないとどうしようもなくないですか。

教員社会でも聖職として、時間外労働や厳しい倫理観が求められすぎて志望者
減って、全体的にみると質が下がっているのと同じ構造ではないでしょうか。

3、こんなところでも管理強化?

今、文化庁は漆の国産化を目指しており、

補助事業で行う修理については極力国産を使うように指導があります。

今は中国産の漆が安価に手に入るので、そちらに流れる傾向があるのでしょう。

萱葺きの材料である葦の生産地や、木材などの育成にも補助金が出されるようになって来ており、

文化財の修理を材料、職人、現場から活用までトータルコーディネートしていこうという意図が見えますね。

国の管理が増えていくのもあんまりいい気分ではありませんがどうなんでしょう。

このnoteでも何度か触れましたが、国が保護してくれるのは国宝、重要文化財まででしかないので、

文化財全体でみるとほんの一握りのモノしか対象になっていません。

補助金があれば修理したい、という文化財の潜在数はかなり多いと思います。

修理の現場を増やして、業界が活性化するという意味でも、もっと対象範囲を増やすことができませんかね。

それかやはり、国の関与を減らしてもらって、地元なり、民間なりに任せられるところは任せてもらった方がうまく行くんではないでしょうか。

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