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第410回 勝手に考古学用語解説No.18 溝・堀

1、冒頭のイラストは『歴史人』2019年5月号より引用

昨日リツイートしたこのニュース。

コメントを頂いて気になったので今日はこの話題を取り上げます。

薬研堀はいつからあったのか。

そもそも薬研堀ってなんだ?

どんな意味があるの?

という方も是非最後までお付き合いくださると嬉しいです。

2、堀と溝の違いは?

いつものように導入はこちらの事典から

まずは水田耕作技術の構成要素として灌漑水路が紹介されています。

そして弥生時代は環濠集落といって

村全体を溝で囲むモノが現れます。佐賀県の吉野ヶ里遺跡や

最近なにかと話題の纏向遺跡

も溝に囲まれた集落であったことがわかっています。

古墳時代の集落も同様で、

ミヤギだと栗原市の入ノ沢遺跡が最近は注目を集めています。

もちろん本来的にはウチとソトを分ける区画のため、という側面もありますが

やはり防御を重視した役割を与えられていたことでしょう。

3、中世のお城の堀とは

そして方形居館。

冒頭に紹介したニュースにも出ていましたが、

四角い区画溝で囲まれた武士の屋敷地のこと。

一昔前までは武士の発生とともに語られ、

周辺農地への水利を管理するという意味合いを込めて溝が掘られたと考えられていましたが

発掘調査で確認されるのは中世の後半期の遺跡が多く、

中世前半の屋敷跡は堀や土塁が未発達で防御性がそれほど高くなかったのではないかと考えられてきました。

だからこそ、冒頭のニュースで取り上げた

中世前半期で薬研堀という防御性が高い構造が見出せたことに驚きが広がっているのでしょう。

そして薬研堀とはV字型の断面形状をなす堀のことで、

薬草を作る際に原料を細かくする器具に例えられています。

急峻な角度で掘られた堀を越えて攻めなくてはいけないのは相当大変です。

一方で断面が逆台形状になっているモノのことは

箱堀といったりします。

箱堀だと防御性低いのか?

というとそうでもありません。

箱堀を組み合わせて障子の桟みたいになったモノは障子堀といって

石垣を使わない土のお城の最高峰ともいえるほどの防御性を誇ることになります。

堀に水を張っていれば凸凹が見えないのでより危険度は増しますし、

空堀でも移動を困難にするという意味ではかなりの性能を発揮します。

わざと堀底を歩きやすくして、特定の場所に誘導して

矢や鉄砲を集中的に射かけることもあったりします。

そして山の斜面に対して平行ではなく、垂直方向に掘るタイプもあったりします。

堀を掘るのに出た土は土塁として高く積み上げると防御性はますます増していきます。

4、本物を自分の目で見て欲しい

今回は堀とか掘る話ばかりでしたが、いかがでしょうか。

結局薬研堀がいつからあるかはわかりませんでした。

誰かわかる人がいたら教えてください。

堀は発掘調査でも掘り上げるのは一苦労。

それは登りづらくなるように作ってありますからね。

山城でも平城でもそうですが

かなりの労力がかかったことが一目でわかるので

説明会でのインパクトはありますよね。

ぜひお近くでお城の発掘調査をやっていて

現地見学会などありましたら足を運んでみてください。

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