第30回陶磁器の話
1、導入
今日は、専門分野の話をしようと思います。
私が一番好きなのは中世という時代です。
わかりやすく言うと武士の時代。
平安時代末の源平合戦の時代から江戸の太平の世の中が来る前。
いわば混沌の時代。身分も中心と周縁も流動的で、ダイナミックでドラマチックな時代。
2、卒業論文で考えたこと
考古学はモノから歴史を考える学問です。私が卒業論文の題材に選んだのは貿易陶磁。
中国の竜泉窯というところで焼かれた青磁の茶碗や、明の時代に焼かれた青花という染付の皿。
これらは陶磁器の中でも高級品で、ある意味ステータスになっていました。
現代で例えると海外の高級ブランド品。
それが出土する遺跡はある程度の階層人がいた証拠になる。
その遺跡の立地を見れば交易や流通の経路がわかるのではないかと。
先に触れた青磁の茶碗は13世紀から15世紀、青花の染付皿は16世紀に主に使われていたので出土分布図を作成して比べれば中世の流通が前半後半で変わったかどうかわかると面白いかなと。
結論から言うともちろん分布は異なるのですが、それだけで流通の変化は語れません。
他の文物と照合して総合的に考えてみてぼんやりと見えて来るのでしょうか。
今も同じ問題意識を持って考え続けています。
3、青磁の色に魅せられて
なぜその課題を選んだのか。
たまたまアルバイトで中世のお城を発掘していて、陶磁器を目にする機会が多かったからというのもあります。
とくに魅了されたのは
緑とも白とも言えない、
宙(そら)を思わせるとも表現されるその色。
足利義政や千利休が最上位に位置づけたその製品は、日本全国から求められました。
考えてみると、中国には璧(へき)や玉(ぎょく)という青磁に近い色合いの宝石の加工品を珍重していましたし、
日本でも縄文時代から翡翠(ひすい)が新潟県の姫川というところでしか産出しないのに全国に運ばれています。
時代を超えて愛される神秘的な色。
江戸時代の後半にもなると日本の窯でも青磁を焼けるようになって敷居が下がっていき、庶民でも手に取れるようになります。
でも青磁の皿や茶碗て、何を盛ったら食欲がそそられるのか。疑問です。
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