第43回 タイムトラベルは歴史学に寄与するか

1、導入

ツイッターで話題のタイムトラベル

誘導に従って、 石松さんのVoicy も聞いて見ましたが

タイムトラベルが可能か、というお話を興味深く拝聴しました。

その上で自分の専門に引きつけて少し考えて見たことをまとめてみました。

2、タイムマシンは歴史学者に何をもたらすのか

タイムマシンがあれば歴史学者は失業するでしょうか。

結論から言うとそんなことはないと思います。

過去の時代に行けたとして、もしくは観察できたとしてもその時代のことを全て理解できることはないでしょう。

逆にいま生きている現代のこと、どれだけ分かっていますか、ということを考えてみてください。

これだけ報道が充実していて、インターネット空間には情報があふれていても真実にたどり着くのは容易ではありません。

現代の日本がいつかのように破滅的な戦争への道を歩んでいるという極端な論者もいますし、

AIの進化で職を失うことを心配する向きもあります。

逆に人間が労働から解放され創造的な活動に専念できる、という夢のような未来が描かれることもあります。

どの側面から見るかで社会の見え方は違いますし、今後の展開についての予想も千差万別です。

過去に戻ってみても同じではないでしょうか。

本能寺の変が起こった場面に立ち会えたとして、首謀者がだれかとか、明智光秀の心中がどうだったかとか、織田信長の最期の言葉が本当に「是非もない」だったのか確かめることが可能かというと、できないのではないでしょうか。

巨大な古墳の築造は、権力者の見栄だったのか、公共事業として必要なものだったのか、そこにどんな思想が流れていたのか、

時代を経た後世だからこそ、歴史的位置付けを行うことができる場合もあるでしょう。

タイムトラベルが可能になる社会は、我々の想像を超えるような仕組みで社会を理解することができるかもしれませんが、現時点ではタイムマシン以外にも必要なものが多すぎます。

3、歴史を学ぶ意義

そもそも歴史学はなぜ存在しているのでしょうか。

単に面白いから、知りたいから、というのであれば答えが全て分かってしまえばしらけるだけです。

過去の社会を理解することで、現代社会をよりよくするにはどうすればいいかを考えるのが歴史学です。

現代社会を完全に理解することができ、未来のために何をなすべきかが容易にわかる時代になれば、過去を知る必要性はほとんどなくなるでしょう。

歴史学者を失業させるのはタイムマシンではなく、無理解や暴論に支配された為政者、無関心な大衆でしょう。

そのような事態を招かないためには、不断の努力で学問の必要性を訴えていくしかないのです。

#コラム #タイムトラベル #歴史学 #voicy
#石松拓人



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