第369回 勝手に考古学用語解説No.13 剣

1、三種の神器の一つ 草薙剣

改元を機に注目を集める三種の神器。

昨日のnoteに引き続き、考古学的に剣について紹介していきたいと思います。

また古事記などにどう描かれているかは

さなさんのnoteをご参照ください。

2、剣から刀へ

例によって導入はこの本

これによると

東アジアでは紀元前1000年頃に中国東北部で遼寧式銅剣というものが出現します。

この系譜が弥生時代の日本にも伝わり、島根県の荒神谷遺跡から358本も出土したことで知られています。

日本ではもっぱら祭祀具として使われたと見られています。

一方鉄の剣については実用品だったと見られますが、古墳時代のものは古墳の副葬品として残されたものが多く

奈良県石上神社蔵の七支刀

埼玉県埼玉稲荷山古墳出土の「獲加多支鹵」と記された鉄剣

など特殊なものが有名です。

奈良の正倉院には55口の刀剣が残されていますが、このうち剣は1口のみで、剣から刀が主流となっていったようです。

剣と刀の違いは

剣 両側面を刃とする刺突具
刀 一側面を刃とする切断具

ということになります。

三種の神器が「草薙剣」というからには、前者ということになりますね。

出土遺物からも6世紀には鉄剣が見られなくなっています。

ということは、この6世紀という年代が草薙剣の製作年代の下限になるのかもしれませんね。

3、日本刀の起源論について

さてここからは少し脱線ですが、

日本刀の起源論の一つとして蕨手刀(わらびてとう)というモノがあります。

東北地方から北海道に広く分布するもので、

柄の部分がワラビのように巻いた形になっており、

その形状から、毛抜型太刀を経て日本刀になったのではないかという説がありました。

また、奈良時代から平安時代にかけては東北から北海道にはエミシと呼ばれた人々がおり、

その集団の中で作られたものだと考えられてきました。

しかし研究が進んでどちらも否定されるようになってきました。

近年出版されたこの本でも指摘されていますが

ヤマト側から北方の人々に交易の見返りとして贈られた品で実用品とは程遠いようです。

そういえば、草薙剣もまつろわぬ者たち、東北地方も含めたヤマトにしたがない人を従えるために戦ったヤマトタケルの伝説の中にあるものでした。

草薙剣が実際はどのような形状をしているのか。

近い将来に明らかにされることではなさそうですが、

剣と刀の歴史を踏まえて見てみるのも面白いかもしれませんね。

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