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ライブハウス・コンプレックス

二度とライブハウスなんて行くもんか。

若干20歳だった私はそう思った。
「いきなりなんだ、いつもの如く気持ち悪いぞ。」と思う皆さんどうも。ruggirlという思想集団バンドを1人でやってます、木之元です。

皆さんは現在家以外で"自分の居場所"と呼べる、物理的な居場所はあるだろうか。学校?職場?ライブハウス?なんでもいーよ。

僕は、ない。 もしくは僕も、ない。

おやおや、君はロックバンドをしていてライブハウスが居場所じゃないのかい。との声が聞こえてくるぞ。聞こえる。

いや、そりゃあ居心地のいい日はある。
ただ、「日」なのだ。居心地の良い時間としてたまたまライブハウスにいるときはある。
それは場所としてのライブハウスがそうしているのではなく、その場にいた人達がそうしている。
ライブハウスが居心地が良いだなんて、ない。
というかそういう感性を失ってしまった。

僕は今まで話してきた通り、学生時代やバイト先で良い思いをしたことがない。虐げられ続けていた。


僕は19歳の頃、自分のバンドを始めた。

そのときは、初めての環境だったのでライブハウスが好きでたまらなくて、性に合っていないこともなんとなく分かりながらも入り浸っては騒いでいた。

そんな生活はもちろん自分の意思と反しているので長続きする訳はなく、そのバンドはメンバーが失踪して呆気なく終わった。

僕がバンドを辞めてなーんにもしなかった頃に付き合っていた女の子はバンドを始めた。

当時僕はその子のバンドを心底応援していたし、僕のあるような無いような音楽の知識で作曲の手助けをしたりしていた。

何度もライブを観に行ったし、なんだか自分の第二のバンド人生な気がした。

やがて、僕は「客に対して煽らない方が良い」や
「前に来てくれ、拳を上げろなんて言うのはダサい」と僕の思想まで背負わせてしまうようになった。

その子はどんどん我が道を進んでいき、どんどんバンドは集客を増やしていった。僕はなんのバンドもせずに横から茶々を入れては寝るだけ。なんだかバンドが羨ましくてずっと指を咥えて見ていた。

それくらいから僕とその子は段々とすれ違い、なんとなくなんとなくさよならをしてしまった。

あー、僕の思想は間違っていたのだろうか。
その子は僕に「きよしろうは間違ってないと思う。きっと大丈夫。」とどこか無責任に励ましてくれた。

僕はそれからなんとなくでこっそりバンドをやったりした。

曲もライブも良いのにお客さんは全然付かない。打ち上げでは先輩が幅利かせてお酒飲んでるし、ライブハウスの人に集客についていっぱい説教されちゃうし。大切な一万円くらいをライブハウスに払うことになったし。いつか僕が無理して楽しく騒いでいたライブハウスの見えなかった部分と客観的な部分を同時に見た気持ちになり、そのバンドは殆ど発表しないまま空中分解となった。

その帰り道、最寄りの公園のブランコに乗って一人シクシク泣いていた。

しばらくして、僕はruggirlというスリーピースバンドを立ち上げた。一念発起してちゃんとロックバンドを成功させようと思ったのだ。

メンバーはなかなか集まらなかったり、色々な問題の末にやっとの思いでライブができるようになった。曲も僕がたくさん書き上げた。

だが、幾分メンバーが僕と音楽活動をする上で気が合わなかったのである。ライブのパフォーマンスも僕が思い描いていたロックバンド像とは程遠く、そのメンバーと活動をすることで僕の音楽が狭まっていくのを実感し、ライブ中にクビにして僕はすぐにひとりぼっちになった。そのときも家で一人で泣いていた。「何も上手くいかないなぁ」と色んな人に泣きついたりした。

それから、僕はライブを観るのは好きだったのにライブハウスに行く事は少なくなった。そのとき、たまたま昔付き合っていた女の子のライブを観る機会があった。

その子は曲の方向性もライブも何から何まで変えてそこにいた。

お客さんはフルキャパ150人入っていて、オーディエンスに「拳上げれますか」的な事を言っていた。僕が持っている思想とは真逆のライブだった。僕にはバンドメンバーがいなかったけれど、彼らはバンドだった。最新の歌でお客さんが踊っていたし、僕はフロアからボーっとただただそこで流れる時間を眺めていた。僕とその子はあまりに対照的で、僕にとって実につまらない、良いライブだった。

すると、その子がこっちを見たような気がした。
その顔はどこか「お前は間違っていたのだ。」というような顔に見え、オーディエンスが上げる手は僕に対して150人分の不正解の印な気がした。

僕はどこかバツが悪くなり、呼吸がしづらくなって、イベントを最後まで観ずに早々に帰った。そして最寄り駅のトイレで咽び泣きながら吐き散らかした。

ああ、そうか。僕が憧れていたライブハウスっていうのは僕が思っているような弱虫な連中の場所ではなかったのだ。

僕がずっと見ていたのは、運動会や学芸会で見たようなそういう呼吸のしづらい空間だった。今でもずっとそうだ。

やはり古今東西、右ならえで左を向いてしまうような人間は好かれる訳はないのだ。

それから僕はライブハウスになかなか行けなくなった。その影響は今もある。なんだか臭いし、怖い。

僕は今ありがたいことに、素敵なお客さんやライブハウスの人に出会うことができたり、素敵なバンドに出会うことができた。お陰様でCDも出せたし、ライブもできた。そういう人がいる日以外は中々ライブハウスに行けない。行かない。

場所として、ライブハウスは嫌いだ。

僕はいつか、僕と同じような君がしがない思いをしないような音楽をしたい。ruggirl、これで売れたらその目標に着手します。これが今ひとりぼっちの僕が色んな人に甘えてできる最後の武器であります。

一緒に色々してくれる人、お客さん、ありがとー。
嫌な思いいっぱいさせた人、くたばっちまえ!

今年もたくさん話したなぁ。

良いお年を。じゃあ、2024年も頑張ろうね。
また、ライブで会おう。じゃーね。バイバイ。

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