父が背中を押してくれた勝利

※はじめに
今回は、人によっては不快な気持ちを持つ内容になっています。
肉親が亡くなった次の日なのに遊びなんて不謹慎だ!大人しく喪に服すべきだ!という考えの方は、読まない事をオススメ致します。
また、競馬をよく知らない方には意味不明な内容になっている事をご容赦ください。

7月14日。日曜日。
父の死からまだ24時間も経っていない、午後2時。
いつもだったら、そろそろ父の携帯に電話をかける時間だ。近況報告と、前回のnoteにも書いたが、メインレース(←競馬)の本命馬を言い合うのだ。
しかし、父はもう電話に出ることはない。もう10年来の習慣となっていたスマホを持つ手が止まる。

拝島の病院に行った時に交わした会話を思い出した。
私『次の日曜日のメインレースは、田中勝春がかなり有力な馬に乗るよ』
父『そうか。病院じゃ馬券は買えないから、テレビで見ないとな』
その【次の日曜日】が、今日。7月14日だ。

生前、競馬が大好きだった父。
私がリアル競馬の世界に足を踏み入れた時、馬券の買い方や払い戻しのやり方、競馬場内の美味しいご飯屋、ハズレ馬券の処分の方法などを教えてくれたのも父だった。
半年に一回山梨に来るのも、ウインズ石和にある【足湯】が気に入ったからだ。

私はテレビゲームから競馬に入った。当時ゲーム内でよく使っていた騎手『田中勝春』(←実名)が大好きだ。
だから馬券を買う時は、だいたい彼を絡めている。
なので、電話では「またカツハルか」などと笑われていた。

そんな事を思い出したので。せっかくだから、見ようか。
父が半世紀に渡って愛した競馬を。
最後に交わした会話の続きを考えながら。

この日のメインレースは、函館記念。
田中勝春騎手の乗る馬【マイスタイル】は、1番人気。勝てば4年ぶりの重賞制覇&重賞50勝の記録がかかっている。
病院では当然、私は父にその事も熱く語っていた。

レースは、そのマイスタイルが逃げる。
最後の直線、2番手を走っていた馬に交わされた。
ああ、ダメかな。と思いながら見ていたら、少しずつ差を詰めて差し返していく。
再び先頭に立って、グッと首を伸ばしたところがゴールだった。

・・・勝った。
リプレイを何度見ても、勝っている。

なんとも言えない気持ちになった。
『テレビで見ないとな』と言っていた父の魂が函館に行って馬の背中を押してくれたのかな、と思いながら、何度も流れるリプレイを見た。

父からの最後の贈り物のような気がした。
「俺がいなくなっても、競馬やめるなよ。俺の分まで競馬楽しめよ」と言われているような感じがした。

父の死から24時間を少し回った頃。
勝利騎手インタビューとレースリプレイを見ながら、1人で静かに泣いた。
父からの最後の贈り物。
記憶に残る、最高の贈り物。

絶対に、忘れない。
ありがとう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?