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ウクライナ人と徹夜で仕事した話

はじめに

今回はマレーシア駐在時に出会ったウクライナ人の話をしたいと思います。

彼との出会いは、オフショア開発の推進という、私の背中を押すエピソードの一つになっています。

積み上げられたタスク

マレーシアでの開発が佳境を迎える中、SCRUM開発のタスクチケットは数百も積み重なり壁に張り出していました。

私はSCRUMチームとは独立して自分のミッションに懸命に取り組んでいたため、しばらく気がつかなかったのですが、どうもチケットの消化率が低い。

これはおかしいなと思い、SCRUMチームのミーティングに参加して驚きました。チームのメンバーは1日で1つのチケットだけを消化していました。

壁に張り出された数百のチケットを1日1チケットの消化でどうやって終わらせるというのか・・・

夕方のミーティングで各々が"done"と報告する様子を見ていて、ついに居ても経ってもいられなくなり、私はチームを会議室に呼んで彼らに言いました。

君たちはプロフェッショナルではない

私は出来るだけ冷静に努めながら、しかし真剣に彼らに話しました。
「私は面談のとき、あなた達を開発のプロフェッショナルと見込んでチームに参加してもらいました。今も私はあなた達の能力を信頼しています。

しかし、今のあなた達の仕事はプロフェッショナルではない。私を失望させないでください。あなた達の本当のパフォーマンスを見せてほしい。」

このように伝えました。そして、さらに一言
「今日、私はあなた達のチケットを配り直します。仕事が終わるまでは、朝まででもやりましょう。」

これにはチームメンバーも困惑していました。

確かにこれは海外ではかなり非常識な要求です。

このとき、メンバーの一人にウクライナ人が居ました。彼はパートナー契約でマレーシアに来てもらった開発者の一人でした。ちなみに非常にイケメンです(笑)

彼は私の言葉を受け「分かりました。私は自分の仕事が終わるまで朝まで仕事をしましょう。」

と言ってくれました。

内心、これはものの例えで、そのぐらいの気合いを入れてほしいという意味だったのですが。

しかし、彼はそれを快く受け入れてくれたのでした。

その日はメンバーの残業が決まり各々が頑張ってくれましたが、仕事は適当なところで引き上げてもらいつつ、最終的に徹夜することになったのは、ウクライナ人の彼と私だけとなりました。

そろそろ夜明けになり・・・

開発なので、深夜にパチパチとキーボードを叩く音が静まり返ったオフィスに響く中、淡々と仕事は進んで行きました。

やがて、朝方の5時頃、彼が私を小さな声で呼びました。

彼「たぁぼまるさん・・・たぁぼまるさん・・・」

ん?どうした。

彼「まだチケットが完了していない。しかし私は元気だし、まだまだ仕事できるよ」

そうか、それは凄い気合いだな。

すると、彼は人懐こい笑顔で身振りを交えながら、ウィットに富んだ感じで言いました。

彼「だけど・・・ほんの少しだけ。ほんの少しだけ眠いんだ。家に帰って仮眠してもいいか?またオフィスに戻ってくる。」

私はなんとも可笑しくなり、笑ってしまいました。

私「よく頑張ってくれたね。ありがとう。今日はここまでにしよう!」

こうして、彼との二人きりの徹夜仕事は終わったのでした。言葉の壁もあり、なかなか意志の疎通は難しいのですが、この夜、初めて彼となにか通じあえた気がしました。今も時々思い出すとクスっと笑みがこぼれます。

まとめ

私がマレーシアからハノイに移った後も、彼と何度か会う機会があり、いまも時々SNSでメッセージをやりとりしています。

日本を凄くリスペクトしていて、日本人の勤勉さを誉めてくれます。いつか日本で仕事をしたいと日本語の勉強をしているようです。

海外では残業規制はかなり厳しく、基本的には定時退社が原則です。このように残業することは、かなり珍しいです。今では私も海外の仕事の習慣を理解しているので、残業はよほどの事がなければしませんし、ましてや徹夜などは決してしないでしょう。それでも、このときのエピソードを思い出すとジーンとなります。

Twitter:
https://twitter.com/turbomaru_hiro

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