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【トルクメン語のキリル文字も紹介】トルクメニスタンでキリル文字のトルクメン語をなかなか見なかった話

菱山氏のチェボクサルで見たチュヴァシ語の記事を受け、トルクメニスタンの街中ではどんなものが見られただろうかと写真を見ながら思い返してみました。人は皆、見かけたものの話はすると思いますが、見なかったものの話はあまりしないのではないでしょうか。というわけで、今回はトルクメニスタンではなかなかキリル文字のトルクメン語を見かけることはないというお話をしていこうと思います。

扉絵の写真は私が以前勤めていたドウレットマーメット・アザディ名称世界言語大学のメインキャンパスです。表にはDöwletmämmet Azady Adyndaky Türkmen milli dünýä dilleri institutyとトルクメン語で大学名が書かれています。首都にある大学では最も古くに建てられたキャンパスのひとつですが、1993年(1995年に更に改訂)の言語改革に伴い現行のラテンアルファベットに作り直されたのでしょう。

トルクメニスタンでは1991年までキリル文字が使われていました。私がトルクメニスタンに始めて行ったのが2012年ですから、20年余りが経過したころでした。

キリル文字によるトルクメン語はこんな感じ
(Türkmen diliniň sözlügi「トルクメン語辞典」と書いてあります)

既にラテン文字化しているお隣のウズベキスタンなんかでは、政府の建物や印刷物ではないにしても、民間レベルではレストランのメニュー表やお店の陳列などでキリル文字もたくさん見かけた記憶がある(といってもそれも2009年の話なので今は違うかもしれません)のですが、トルクメニスタンではほとんど目にした記憶がありません。残念ながら写真フォルダを見返しても、キリル文字表記のものは見つかりませんでした。

建物に書かれている文字や看板に書かれている文字はもちろん、私が見たトルクメン語は、お店の陳列やパッケージも全てラテン文字でした(もちろん、ロシアやカザフスタンなど外国製品に書かれている外国語のキリル文字表記はあります)。レストランのメニューですら記憶にありません。むしろ記憶にあるのは、いくつかのレストランで、タッチパネルを使ったメニュー表になっていて、トルクメン語かロシア語、英語などを選べるようになっていたほどです。

バスの路線図もラテン文字、「≪黄金時代≫ショッピングセンター停留所」と書かれています
(通る道は時間帯で変わるし、時間はもちろんあてになりません)

そもそも、日本に比べると圧倒的に文字による情報が少ないことに気が付きます。食堂にはメニューがないこともよくありますし、あったとしても現地の人はメニューを見ずに何があるか店員さんに聞いたり、必ずありそうなものを直接頼んだりします。日本のスーパーやコンビニではレジに並ぶ順番や待つ場所の指標が床に書いてあったりしますが、トルクメニスタンではKто последний?「誰が最後か?」(この場合、相手が何語話者かわからないためロシア語で尋ねる)とその場にいる人みんなに聞いて、前後の人だけを覚えるという方法で順番待ちをしています。

話を元に戻しますが、それでは我々はキリル文字表記のトルクメン語は必要ないかというとそうでもなく、年配の人はまだまだキリル文字でトルクメン語を書くことの方が多いですし、ロシア語も多く見かけるので知っておいて損はありません。そして最も大きなポイントとしては、ソ連時代の書籍はキリル文字のトルクメン語で書かれているのです。そんな古い本を読まなくてもいいじゃないかと思われるかもしれませんが、小説や学術書など、ラテン文字表記になってからは出版されなくなったものも多くあります。誤解を恐れずざっくりいうと、まともな書籍のほとんど(いいすぎ?)がキリル文字で書かれているのです。実際に私の本棚を見てみると、ほとんどの書籍がキリル文字によって書かれています。トルクメニスタンのことをよく知ろうと思ったら読む必要があるということですね。

最後になりましたが、ロシア語のキリル文字にはないトルクメン語のキリル文字を紹介してこの記事を終えたいと思います。実は、先ほど写真にあった「トルクメン語辞書」の中にたくさん入っていました。

キリル文字:Түркмен дилиниң сөзлүги
ラテン文字:Türkmen diliniň sözlügi

それぞれ太字になっている文字が対応しています。これに、もう一つäのキリル文字әを加えた4つがロシア語にはない文字になります。ロシア語のキリル文字を知っていればたった4つ追加で覚えるだけなのでお得ですね。

トルクメン語の発音については、以前私のnoteでトルクメン語の学習に役立つ書籍を紹介していますので、そちらで確認してくださいね(手前みそですが、私の著書には日本人向けの発音の仕方が書かれています)。

なお、私も最近知ったのですが、トルクメン語のキリル文字は以下のサイトでラテン文字からキリル文字に変換してくれます。ロシア語の軟母音(яなど)が文中に出てくるときに注意が必要なくらいで、大変便利でした。(ラテン文字のトルクメン語キーボードに慣れていなければ少しめんどくさいですが、クリックで入力も可能です)精度こそわかりませんが、アゼルバイジャン語やバシキール語、ウズベク語、カザフ語、ウイグル語、オスマン語などなど、たくさんのテュルク諸語も扱われているようなので、使いようによっては便利なのかもしれません。Turkmen Cyrillic Keyboard LEXILOGOS

まとまりのない文章になってしまいましたが、今日はここまでにします。
Гөрүшянчәк!(Görüşýänçäk!) (トルクメン語で)「またお会いするまで!」

(文責:奥真裕)