<第40回>自分のキャリアを「ストーリー化」しよう!        ~ 過去のキャリアの経緯の中から、未来に繋がるあなたの「ストーリー」を紡ぎ出す。

日の出

 本note の投稿で、再三にわたって、「コロナ禍がビジネスパーソンのキャリア形成意識の高まりに拍車をかけている」ことを指摘してきました。

 「今の仕事、今の会社で良いのだろうか?」、「これからの人生、どうやって仕事をやっていけば良いのだろう?」、「キャリアを今後どうやって積み上げて行ったら良いのだろう?」、在宅勤務の経験によって、「惰性」、「多忙な仕事」といったこれまでの日常の隙間を突いて、仕事をしていく上でのそうした本源的な疑問がビジネスパーソン一人ひとりに投げかけられているのです。

家

 今やっている仕事・・・それは過去、自分が懸命に仕事をやってきたことの延長であり、逆から言えば、今の仕事の中に、過去の経緯が一杯詰まっているんだろうと思います。
 しかし、今の仕事とは一見関係のないような、過去の経験・キャリアも確かに存在するわけですが、実は一見今の仕事には直接関係のない事柄でも、現時点での仕事をしていく上で、役に立っていることも多く、また、現時点の仕事に就くことになった経緯自体が、過去のスキルや経験と因果関係によるものである場合も多いように思います。

 とにかく今後のキャリアを考えるときに大事なことは、「本当は・・・がしたいかも」といった何の脈絡も根拠もない願望ではなく、過去と現在のキャリアの中に一杯詰まっている過去のビジネスライフで培ってきた「宝物」(あるいは、今は光り輝く「宝物」ではないとしても、磨けば輝く可能性のある「宝石の原石」)を探し出すことなんだと思うのです。
 もちろん「何をやりたいか」も大事ですが、自分の将来のキャリアを考えるときに、もっと大事なのは、「何が出来るか」「何なら仕事を遂行できるか」ではないか、と言うことです。
 もちろん、望ましいのは、「何が出来るか」をベースにして、「何をやりたいか」も加えた道筋を見出すことであるのは、言うまでもありません。ただ、20代ならまだしも、30代以上では、全く関連性のない願望だけの構想はあまり意味がないと思うのです。全く違う道への転身を考えるなら、今の仕事と、全く違う希望の仕事の接点となるような仕事ないか、と考えるのが有効でしょう。

宝石


 過去の自分のキャリアを振返って、スキルや経験を掘り起こす作業が通常「キャリアの棚卸し」と言われるものですね。

 しかしながら、通常世の中で行われているキャリアの棚卸は、「〇〇〇〇年に、□□□部で、□□□の担当だった」といった無味乾燥の担当業務の羅列にしか過ぎない場合も多いように思います。

 優れたキャリアカウンセラー(コンサルタント、コーチ・・・名称は何でもOKです)は、そうした無味乾燥の担当業務に関して、その仕事の中で達成してきたこと、獲得してきたスキルや資質、仕事の仕方、仕事をする中で感じた本人の気持ちなどを、引き出していきます。引き出していく作業は、カウンセラーのカウンセラー経験や、ビジネス経験によって、本人が気づかない観点、具体的なことを想起させることによって、本人だけで行う内容よりも格段にリッチになっていくはずです。

 もっと重要なことは、引き出した過去の複数の違った仕事(業務)の中で、それぞれの共通点、因果関係、積み上がり進歩していくスキルなどを詳らかにしていくこと、そしてカウンセラーが一方的に指摘するのではなく、本人にじっくり考えさせて気づいてもらうのです。

 このプロセスを行いながら、本人の将来に向けての志向、希望など、本人の「意識」を加えていくことによって、「キャリア形成」に関する「ストーリー」が出来上がります。
 プロセスを辿りながら、本人の将来のキャリアの構想について、意識を高め、同時に「自分自身の志向・希望」を明確にしていくのです。

 例えば、以下の例を考えてみましょう。

 ・新入社員として店舗を3年経験
 ・本部部門の営業管理部門で各店舗の計数管理を3年経験
 ・商品開発の主任に昇任
 ・しかし新商品の開発業務が3年経過し業務のプレッシャーで体調を崩し、そんな状況において今年コロナ禍に遭遇、共働きの奥さん、3歳になった長女の子育ての中で、立ち止まって将来を考えている

といったA男さんの場合はどう考えればいいのでしょう?

 過去のキャリアについて、A男さんがカウンセラーとの棚卸しの中であった「気づき」は
 ①田舎育ちのA男さんが地方出張のときに感じた懐かしさ、いつか地方で働きたいと感じた記憶
 ②営業管理の業務の中で、上から目線で他人を管理したり、評価したりといった業務、数字を使った資料の作成や、分析に違和感を感じたこと
 ③積極的に顧客のところに足を運び、自分自身が本当に頭を使って考える、商品開発の仕事が好きだと改めて言えること。
 ④しかし、多分商品開発だけに留まらず、自分の創意工夫で何かを作り出すような仕事に魅力を感じるのではないかと想像していること
 ⑤何もわからない新入社員時代に、お客さんに可愛がられて、お客さんの喜ぶ顔を見るのが楽しくて、働くことの喜びを感じたことが思い出されること

 ということかもしれません(上記はあくまでも仮想例です)。

地方


 自分だけでは、「店舗業務」「営業管理」「商品開発」といった、ありきたりの棚卸しかできないのに、経験を積んだ第三者の力を借りることによって、これまでのキャリアの中に、自分が出来ること・スキル(例えば、「計数管理」「店舗といった小さな組織のマネジメント」「お客さんのニーズを拾い上げて何かを提案する姿勢」といったこと)、自分の志向や特長(「お客さんに喜んでもらえるような仕事」「自分の創意工夫の余地のある仕事」)を見出し、新たなチャレンジの可能性を感じることが出来るようになるかもしれないのです。

 可能性の中には、

 ・即転職したりといった軽はずみなことをするのではなく
 ・まずは自分の現時点での仕事の中で、やり方や、業務内容の拡大・シフトによって実現できないか
 ・自分の属する部門の中、会社全体の中に、自分を活かせる仕事がないか

といった内容も含まれます。

 棚卸しの中で得られたヒントを基に、自分なりにしっかり考えることが大事なのだと思うのです。

 考える上で、重要なのが、今回のテーマである「ストーリー化」と言うことことです。
 過去の、場合によってはバラバラなスキル・経験、思い、感想などを繋ぎ合わせて、自分なりのある一貫したストーリーを描けないかと考えるのです。

ストーリー

 リモートワーク中心となり、ある程度体調が戻ったとして、A男さんの場合には、例えばですが、
 「地方の支社の営業部門で、自社の商品の専門的な知識を使いながら顧客のニーズを聞いてセールスを展開する営業サポートの仕事への異動を願い出て、営業や地方勤めという新たなキャリアの広がりを開拓していく」

 というような選択肢があるのかもしれません。

 もしそういうことならば、過去のスキル・経験についての記述も、上記の希望に繋がるような、「地方」「顧客ニーズの発掘」「商品の専門的な知識」などのキーワードを入れたストーリーに書き換えていくことになります。

 上記は、社内異動に関してということですが、もし、一段飛躍して若いうちでの転職を望んでいるなら、履歴書自体、上記のストーリーで「入社以来、一貫して・・・・」というような文言を加えながら再構成していけば良いことになります。

 読者は既にお気づきだと思うのですが、こうしたストーリー化を行うことによって、自分自身のキャリアに関する「意識」を高め、キャリア形成に関する「意思」を一旦明確にしてみることが可能になるのです。

 但し、多分それだけでは不十分かもしれません。
 過去を棚卸しして、ストーリー化するだけで、新たな仕事が降ってくるわけでないからです。

 そうした自分の希望を実際のものに引き寄せるためには、新たな「行動」を起こしてみることが有効です。
 A男さんの場合であれば、地方の支社に仕事を作って出張して、営業の実態を見てみるとか、商品開発に関する勉強を集中的にやってみるとかの行動を起こすことによって、上記のストーリーがドンドン現実味を帯びたものになってきます。

 そして、それと同時に、現在の仕事への取組み方のポジティブな変化(将来のキャリアと地続きである目先の仕事を懸命にすることが、今後のキャリア形成にプラスになるはずだという気づき)、キャリア形成への意欲、ひいてはビジネスライフが新たな光に包まれた価値あるものになってくるのではないでしょうか。


 ターンアラウンド研究所は、ビジネスパーソンのキャリア形成に貢献する企業でありたいと考えています。
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<ターンアラウンド研究所 https://www.turnaround.tokyo/  小寺昇二>

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