<第35回>今こそ言おう!「全てのビジネスパーソンは一生の趣味を持とう」  ~ リモートワークで明らかになった、あたり前のこと

リモート

 コロナ禍、すっかり定着したリモートワーク。
 リモートワークが定着してはっきりしたことが沢山あるんだと思います。

 例えば、中年以上のオヤジの場合、会社という、「居場所が用意されている場」から、既に居場所がなくなっていたりする(笑)家庭という場で、急にリモートワークをする場所を作らなければいけなくなって家族とバトルしたという話もありそうです(私の場合は一応ノーコメントです・・・笑)。
また、子育て世代ならいざ知らず、中年オヤジの場合は出勤時間が不要になって浮いてしまった時間をどう使うかという問題が発生、中には趣味らしい趣味もなく、かと言って読書についても習慣がない、受け身でもそれなりに楽しめるテレビにはオヤジが楽しめる番組はなく、さらには贔屓のテレビ番組も三密回避で新番組が撮れずに過去の番組が流され、手持無沙汰なので家族がハマる携帯でのネットサーフィンやSNSをこの際始めているふりをする・・・・・。

団らん


 世の中には、色々な家族があり、多種多様な家族関係があるので、こうした昭和のような中高年オヤジの家庭に限らず、リモートワーク開始にあたっては日本中で新たな家族のドラマが繰り広げられているように想像します。

 妄想はこれくらいにして、今回は、リモートワークで突然ビジネスパーソンに時間的余裕が与えられたのを機に、「ビジネスパーソン」の趣味について採り上げたいと思います。

 さすがに「働き方改革」やら、「ダイバーシティ」が叫ばれている昨今、昭和の「モーレツ社員」は一部の上昇志向に強いエグゼクティブやその予備軍以外は絶滅種になっているものと思われるものの、中高年のビジネスパーソンに「趣味は何ですか?」と聞いてみると、恥ずかしそうに「これといったものがないんですよ」とか、「イヤー、最近薦められて始めたゴルフとか・・・居酒屋での飲み会ですかね・・・」といった方々もまだ生息しているように思います。

 別に、これといった趣味がないことが「悪いこと」ではあるはずもないのですが、仕事以外の打ち込める趣味を持つことの効用、メリットを私自身40年の山あり谷ありのビジネスライフの中で痛感してきたので、打ち込める趣味をお持ちでない方、特に中高年のビジネスパーソンの方にお伝えしたいと思ったことが今回趣味について書くに至った理由です。

 最初に、少し月並みな話ですが、趣味があることによる効用、メリットを箇条書きで列挙してみましょう。もちろん趣味を持つことが人生を彩ってくれて、ない場合よりも楽しい人生を送れるだろう、といったことだけではなく、ビジネスへの好影響についての列挙です。

 ①発想が豊かになる。
   ~ 毎日毎日同じこと、同じ課題を追いかけているだけでは煮詰まってしまうし、そもそも人間の発想などというものは長時間考えていればドンドン考えが深まるというようなことは稀で、実際は、最初の5分、10分以降はグルグル同じところを思考は回っていることが多いのだと思います。趣味を持っている人は、多様な観点で物事を見られる可能性が多いはずです。後述するように私自身には片手では数えきれない趣味の数があるのですが、趣味の中にも相互に共通点があり、仕事にも通じる発想の転換をもたらしてくれるというのが日々の生活での感想です。

 ②職場や家庭以外で、心理的安全性が確保出来る場所を持つ。
   ~ 昭和の時代ならいざ知らず、今の時代、会社に温かいぬくもりや交流があるという前提は徐々に薄れてきているわけですし、ボディランゲージなど五感に訴える手法が通用せず「論理主導」で行われるリモート会議やeメールの世界では、社員相互の関係は極めてビジネスライクな関係にシフトしていくことも考えられます。同様に、家庭においてもコロナ禍以前より、従来の日本的な依存関係や、甘えが段々許されなくなっていて、善き家庭人として「責任や義務」をきちんと果たしていかなくてはならなくなっているのでしょう。自分を常に見つめ、自己実現を仕事以外でも図れるような場所が必要になってきます。私自身、9回の転職経験の中で、谷の時代に鬱病にもならずに常に前向きにいられたのは、ずっとキープしている友人たちの存在、そして時として逃げ込める趣味の世界でした。

 
 こうした私の過去の話だけではなく、最近目にする識者の「ウイズコロナ」「アフターコロナ」の予想の中のキーワードとして、働き方に関する「多様性」や「趣味」に関する多くの新たな概念が出てきているように思います。


 2018年頃から言われだした「クロスオーバー人材」(「領域越境型」)という考え方がありました。

境界

 まだまだジェネラリスト幻想が主流だった日本企業で、スペシャリストという考え方が大企業でもようやく定着しつつあり(因みに、2017年に当時最大手の国内旅行会社で初めて導入された専門職人材に指名された第1号の何人かの一人が私でした)、しかしそれだけでは新たなイノベーションを起こしてグローバルに戦っていくにも不十分、つまり縦割りの業務体制の中で、複数の領域に通じ、行き来することによって、そのシナジーを付加価値として創り出せる人材が先進的な組織では求められたのかもしれません。

 これに対して、最近見聞きして面白いと思った考え方に、今話題の山口周氏の言う、「ニュータイプ」 の思考・行動様式に適合した人材というものがありますhttps://diamond.jp/articles/-/206686 )。

ニュータイプ

  氏によると、これまでのオールドタイプの思考・行動様式は、VUCA(V=Volatile(不安定)、U=Uncertain(不確実)、C=Complex(複雑)、A=Ambiguous(曖昧))の時代には全く通じなくなるというのです。
 オールドタイプからニュータイプに移行を促すメガトレンドとして詳しくは・・・

【メガトレンド1】飽和するモノと枯渇する意味
【メガトレンド2】問題の希少化と正解のコモディティ化
【メガトレンド3】クソ仕事の蔓延
【メガトレンド4】社会のVUCA化
【メガトレンド5】スケールメリットの消失
【メガトレンド6】寿命の伸長と事業の短命化

 上記の箇条書きだけでは分かりにくいですが、従来の硬直的な仕事の内容、仕方が時代遅れになって、変化する社会に対して柔軟に対応できるものこそが生き残れる時代になるということです。
こうしたトレンドにおいてビジネスパーソンに求められるのは、氏の言葉を引用すると・・・・

「人生の途上において複数回のキャリアチェンジを余儀なくされる、ということです。私たちは一般に『この道一筋』とか『一所懸命』といったことを無批判に礼賛する強い傾向がありますが、変化の速い世界においてそのような価値観に頑なに囚われるオールドタイプは、リスクに対して非常に脆弱なキャリアを歩むことになります。
 一方でこれまで長いこと、『腰が据わらない』『節操がない』『一貫性がない』と批判的に揶揄されてきたような生き方、つまり、何が本業なのかはっきりしないままに複数の仕事に関わり、節目ごとに仕事のポートフォリオを大きく組み替えていくようなキャリアを志向するニュータイプこそ、リスクをむしろチャンスに変えていくような、柔軟でしたたかなキャリアを歩んでいくことになるでしょう。」と言うことです。

 要するに、キャリアもそうだし、趣味もそうなのですが、色々やって、何だか徹底できないような人間が、今後時代を創っていくだろうということなのでしょう。

 「美意識」や「アート」といったことを強調し多趣味の山口氏ですので、もちろんこのニュータイプ型の人材は正に、氏のようなタイプなのだと思います。

ピカソ

 そして、実は私自身も正に、「俺の時代がようやく来た」と考える人間の一人なのです。
 
 9回の転職で、あらゆるタイプの会社、会社の中にあるほとんどすべての業務種類(経営、企画、人事、財務、営業、開発、コンサルティング・・・・)を経験し、しかし本当のところ何一つ、「これだけは絶対に人には負けない」などというものが一つもない人間・・・それが私であり、過去そういうことでヘッドハンターや会社に攻められた過去を持つ人間だからです(現在大学で、かなり違う種類の科目を多種担当できるのも、そうした経験がものを言っています)。
 それだけでなく、趣味だって、シニアサッカー、小説執筆、ジャズサックス、映画鑑賞、絵画鑑賞、フェイスブック中毒、テレビ(ドキュメンタリー、ヒューマンドラマ)、社会ウォッチング・・・と色々あって・・・収拾がつかない・・・こんな人間でも、VUCAの時代には生きていく場所がある・・・。

サッカーボール

 考えようによっては、メチャクチャ「面白い時代」になったのではないでしょうか?

 皆さんも、キャリアの多様性、そして多趣味に磨きをかけていただければと夢想しています。

 前にも書いた覚えがありますが、ダ・ビンチが「知の爆発」によって、点が線になり面になって天才になったように、皆さんも100歳になる前にはきっと何かの爆発が起こるかもしらないのですから。

 今回は我田引水の回でした・・・・。

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<ターンアラウンド研究所https://www.turnaround.tokyo/   小寺昇二>


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