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第46回 「45歳定年制」よりも、今語るべきは「35歳キャリア教育開始」    ~ 「キャリア教育元年」で達成するウエルビーイング社会 ~

45歳定年制」についての、経済同友会副代表幹事/サントリーHD新浪社長の発言はまだまだ波紋を呼んでいるようです。一旦火消を図ったものの、この発言自体、少子高齢化や定年延長の流れの中で、「中高年社員問題をこのままにしていては会社が持たない」との本音が垣間見られるだけに、このまま終息するとも思えません。

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            (出所:経済同友会HP)

座敷牢に入れられたかのように、能力発揮のチャンスも与えられずに窓際で飼い殺しになっている大企業のシニア社員についての、人生100年時代の荒波の中での今後を考えてみても、この際、この問題については大々的に社会全体で議論すべきだと思うのです。

私としては、以下の提案をしたいと思っています。

 ①「45歳は『定年』ではなく、企業(大企業)における『専門職』、今話題の言葉で言うと、『ジョブ型』的な働き方に明確に切換える目安の年齢とする」
 ②しかしながら、急に45歳で切換えるというのは無理なので、「35歳を『キャリア教育』開始の年齢として、45歳切換えの準備を10年で行う」
 ③「キャリア教育に関しては、基本的には社員自らが主体的に行わなければ実効性が乏しいが、企業の側も、社員のキャリア教育が促進されるような環境整備によりサポートする」

という考えです。言わば、新浪発言を契機として、企業も関与する形での「キャリア教育」(リスキリング)元年としては如何か?ということなのです。

こうしたことを申し上げるのには、私自身の個人的な経験も影響しています。

私は、2000年にそれまで22年間勤めた大企業を「45歳」で退職し、それ以降約10年間で6回もの転職を経験ました(因みに66歳の現在まででは10回の転職歴)。45歳での転職は、働いていた大企業での仕事が「煮詰まってしまっていた」ということもありますし、「本当に自分の力で、自分のやりたいような第2のビジネスライフを送りたい」、つまり自分で「定年」退職してしまったわけです。

転職後は、もの凄く解放されたような気分で刺激も受け、エキサイティングな日々を送ったのですが、第1回の転職後の10年間で6回もの転職を経験してしまいました。それぞれの退職‐転職には、それぞれの事情があったのですが、「キャリア形成」という観点で今から振り返ってみれば、この10年間は「キャリア形成のための教育期間」みたいなものだったのではないかと思います。自分が「本当にやりたかった」と今では明確に意識出来ている「人財育成(教育)」や「企業の経営改革への貢献」といったことのスキルについては、私が最初に転職した45歳時点では不十分であって、6回の転職を繰返しながら様々な業務、失敗、成功の中で10年かけて培うことが出来たのでした。

10年過ぎてからは、大学教授として、あるいは経営や人財育成のコンサルタントとして、それなりに納得の出来る仕事も出来てきていると言えるのではないかと思っています。

やはり、「キャリア形成」のための「教育期間」といったものは、業務の中で、10年といった時間が必要なのです。「45歳」で急に社外におっ放り出されても、直ぐに戦力として働ける人はそんなに多くはなく、会社を離れて第2のビジネスライフを始める前の10年間位の相応の「準備期間」が要るということです。

「45歳定年制」などという会社にとって都合の良いキャッチフレーズではなく、まずは、「35歳から、自分のキャリア形成について考えられるようになろう」という方が生産的です。2007年に、後に勤務した大学ではない多摩大学で社会人MBAの講師を1年勤めたことがあります。そのときのMBAの生徒もそうですし、自分自身の若い頃を振り返ってもそうなのですが、学校を卒業して無我夢中に働いてきて、仕事も覚え、周りも見えてきて、部署の中でも一目置かれるような立ち位置になる35歳あたりで、ようやく自分を客観的に見ると「本当に自分は今の仕事を今のままでやっているだけで良いのだろうか?」と不安になってくるのです。「35歳のキャリアの壁」みたいなものだと私は若い人には話しています。


ところで、日本には古来より、30歳(而立)40歳(不惑)、50歳(知名)、60歳(耳順)といった10歳刻みの節目があります。

同じように、日本の会社で35歳、45歳は会社の中でのキャリアの一つの結節点であるケースが多いように思います。企業社会のキャリア(職)においても、「5」のつく節目に、下記のような名前を考えてみました。

35歳・・・索職(キャリア形成を考え始める)
45歳・・・熟職(専門的なキャリアが確立する)
55歳・・・不惑職(自分の本当にやりたいことが定まり、キャリアについて惑わなくなる)
65歳・・・終職(そろそろ、自分のキャリアの終点を意識しだす)

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ターンアラウンド研究所
小寺昇二


HRプロ連載「VUCA時代の人財・経営戦略」


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