<第41回>「キャリア教育」の時代<その1・・・社会人篇>  ~ 仕事と幸福が両立する時代の到来を願って

幸せ

※「人財育成」について書いている本コラムですが、今回からしばらくは、「キャリア教育」について書いていく予定です。まず手始めに「社会人篇」です。いつもに比べれば、短めにまとめています。

 金融界出身の私は、他の金融関係者がそうであるように、毎朝日経新聞に目を通さないと何だか気持ち悪いのですが、12月3日(金)の一面の、シリーズ「コロナと資本主義 再生への道(4)所得保障は最適解か 支えるのは新たな学び」https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66834750Q0A131C2MM8000

には、「エ!、そういうのもアリか」と少し虚を突かれた感じがしたものでした。

 少し長いですが、記事の冒頭を引用すると・・・・

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『「働いても働いても貧困から抜け出せない人々が新型コロナの影響を受けている。我々は彼らのために団結する」。6月末、ロサンゼルスなど米11都市の市長らが「所得保障のための市長連合」を結成し、市民に現金を定期給付する実証実験をすると宣言した。  
 
 【経済弱者に痛手】 コロナ危機で若者や非正規雇用など経済的な弱者が深刻な痛手を被り、新たなセーフティーネット(安全網)として導入を模索する動きが相次ぐ。ドイツも無作為に選んだ120人に実験的に月1200ユーロ(約15万円)を給付する予定だ。

(略)

「手持ち現金ゼロ」でもプログラミングやデータサイエンスが学べます――。米教育スタートアップ、ラムダスクールは授業料の「出世払い」を受け付けている。受講者は短期集中でスキルを身につけ、IT企業などで職を得てから後払いする。取りっぱぐれが生じないように教える側も真剣になり、卒業生の約8割が職探しに成功するという。

「インカム・シェア・アグリーメント」と呼ばれる仕組みで、米国だけでなくアジアなどでもこれを活用した教育関連企業が誕生している。米アマゾン・ドット・コムが従業員のITスキル獲得の支援に多額の資金を投じるなど、社員教育に力を入れる企業も増えている・・・・・以下略』


 ベーシックインカム(BI・・・一種の所得補償的な最低限の給付)については最近議論が盛り上がっており、このことをコロナ禍と結び付けるような、こういう記事が出てきたのは、決して不思議ではないのだと思います。

 ただ、意外だったのは、この記事が、コロナによる失業について単に述べるのではなく

 ①コロナ禍で労働市場の構造がガラっと変わってしまい、新しい生活様式に適合しない業種、職種については、業種・職種変更が社会として必須であることが示唆されていること
 ②そして、構造変化に対する対策として、上記が、「雇用調整助成金」や「従業員シェア」(JALやANAが現在行っているように一時的に従業員を他の産業に派遣する動き)」などといった一時的な対応策よりも、「キャリア教育」が中長期的には社会として安上がりで、抜本的な対策であるという認識であること
 ③そのためには民間での動きだけでなく、政府がBIによって「キャリア教育」を推進することが必要であること
 ④具体的な産業構造の変化、キャリア教育のターゲットとして、DX、AIなどの浸透によるITスキルを挙げていること

です。

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 これまでBIと言うと、強者の側からの理屈で言うと「経済成長至上主義からの脱却→人間らしい自由な生活」、弱者の側からの理屈で言うと「誰でも最低限の生活が保障された理想の社会」という形で語られていたと思うのですが、この記事では、上記の点で目を引きます。

 日本について考えてみると、「コロナ禍の産業構造の変化」については、目立った動きが出ているのは「自粛」や「新しい生活様式」で直接的に打撃を受けている飲食店、観光業、スポーツ産業などの集客を基盤としたエンターテイメント産業を除けば、欧米のコロナ禍による影響の甚大さに比べれば、日本はまだまだそれ以外の産業も含んだ大きな視点で考えている人は少数派ではないでしょうか?

 「DXの推進」だけではなく、「抜本的な産業構造の変革」、「BI」あるいは、「キャリア教育」といったことを真剣に考え実行していくことについては、議論ですらまだまだなんだと思います。

 第三派が襲ってきている日本ですが、コロナの影響が欧米に比べて相対的に軽微であることが逆に、抜本的な対策を遅らせてしまう可能性もあります。

 目先の緊急的な生活支援のためのお金のばら撒きだけではない、新たな産業社会を展望した抜本的な公的な支援をそろそろ考えていくべきではないでしょうか。

 もちろん「DXの推進、AIの活用、デジタル化による業務効率化に対する公的な支援」は言うに及ばず、「キャリア教育」、そのための生活資金の手当て、といったことについても、最近の「人生100年時代対応」だけではない、緊急的、社会を挙げての真剣な対応が必要だと思います。

 下手すると、今回も、欧米勢から周回遅れになってしまっている、などということも起こりうるような気がします。反省しない、その場しのぎの日本の悪い癖の再来はもうコリゴリです。

コロナ


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