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ディープインパクトは幸せだったのか

競馬ファンならずとも名前くらいは知っているであろう、 ディープインパクトという名馬が先月早逝してしまった。

彼の馬は現役時代も種馬時代も他を圧倒する成績を残したため、最盛期は年間200頭以上の種付けを課されていたようなんだけど、果たして幸せな余生だったのかは甚だ疑問だ。 

おれだってやりたくもない(相手も大いに含むであろう)交尾を年200回やれと言われたらふつうに死んでしまいそうな気がする。

そういえば、女性向けソープランドというものが過去存在したのだが、男性ホスト側の負担が大きかったのかあっというまに潰れたことを思い出す。

ちなみに、ディープインパクトより10歳年上のマヤノトップガンという馬が居るのだが、こちらはディープより現役成績も産駒成績もはっきり見劣る。しかし、27歳の今も健在である。

産駒成績が振るわない以上、種付け頭数も年々減るために、身体的な負担はディープインパクトのそれよりもはるかに軽い。そのことがマヤノトップガンの長生きに繋がっているのかもしれない。

中国の故事に「大きな戦いで活躍した武将は早めに隠居すべし」という教訓を含むものがある。高確率で政争に巻き込まれて、自身が命を落とすどころか三族皆殺しの憂き目に遭ったりするからだ。

色々踏まえて考えると、もっともコスパのよい人生の送り方は「そこそこの努力で、そこそこの実績を残したら、そこそこのところで競争から降りて、あとはのんびり過ごす」ということになるかもしれない。

もちろん「そこそこの実績を残す」ということすら普通に難しいのではあるけども。マヤノトップガンだってディープインパクトと比べれば見劣るという話で、平均と比べればめちゃくちゃ優秀な馬やからね。GI四つも勝ってるし。(ディープは七勝)

そこそこの実績まで到達しない馬は普通に食肉になったりするし、人間でも首をくくる羽目に陥ることだってあるわな。

なんにせよ、おれも年齢的に人生の折り返し地点に来たわけで「そこそこの実績」を欲すると同時に「おりどころ」みたいなものも少しずつ考えなきゃいけないのかもしれない。なんといってもおれは本当にがんばりたくないので。

ところで、ウォーエンブレムというサラブレッドをご存知だろうか。わりと期待されて日本に輸入された種馬なのだが、小柄な栗毛の雌馬にしか発情しないという変態で、なかなか種付けができずに周囲を悩ませ続けた困ったちゃんである。

「種牡馬界のロリコン」「金髪ロリ」などの愛称で一部では親しまれており、関係者が「栗毛で発情させておいて、直前で別馬にすりかえる」という苦渋の策で種付けをさせたことがある。

しかし、まもなくウォーエンはそれにも気づいてしまい、またしても種付けを拒むようになっただけでなく、人間不信を募らせるようになったという微笑ましいエピソードを有するネタ馬である。

そのような苦労もあって、中央競馬にはわずか103頭の産駒しか送り込めなかったのだが、かなりの高確率で勝ち上がり、G1まで勝ってしまっている。

その血に秘めたる能力は相当なものであったはずだ。それだけに関係者の落胆は大きかっただろう。

その後の当馬はというと、その変態性癖のおかげで種馬生活を早めに終え、母国アメリカに戻って穏やかな余生を送っているようである。

比べると、おれはディープよりもウォーエンみたいに「あの可愛いメスとだけ交尾したい。あとはやだ」みたいな余生がいいよなあ…

このオチ、全然オチてないことに書いてから気が付いたのだが、競馬の話はそもそもあまりウケが良くないのでこのへんで終わりたいと思う。はー金髪とセックスしてぇ。

(了)

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