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あわしまマリンパーク

 あわしまマリンパークが閉園する、唐突な知らせだった。

 思えば淡島に渡ったのも、コロナが流行る前の謎解きイベントがあったときに訪れたのが最後だろう。それも帰りの船の最終便の時間がギリギリで最後まで謎解きを終えられなかった記憶がある。沼津に行けば写真を撮るために、あちこちをぶらぶらしていた。
 そのせいでマリンパークの営業開始と終了の時間に合わず、淡島に渡る機会を逃し続けていた。それでもコロナ前の土日は駐車場がなんやかんやで埋まってしまうので、メイン目的に据えないと訪れづらかったというのもある。
 そのため、ラブライブ!サンシャイン!!きっかけで沼津を知り、数え切れないほど訪れたが淡島に渡ったのは数える程度しかない。淡島神社を拝んだのも2回ほどしかないだろう。(あの階段がキツいからリピートする気力がないというのもある)
 あわしまマリンパーク、近くにある伊豆・三津シーパラダイスに比べて、水族館としての規模は劣る。それはそう、まず立地がおかしい、なぜ離れ小島に水族館をつくろうとしたのだろう。

 閉園の知らせが出たその週末1月27日、沼津へ急行した。

到着してすぐ目に入るマリンパーク行きのバス待ちの列

 私がどんなに急いでも片道5時間かかる。
 到着したのは10時頃、友人の到着を待ち、合流したところで沼津中央公園でバトミントンをしていた。なぜ?

 内浦に車で行ったとして、あの混み具合だと止める場所がなくてただのドライブになるだろうと言うことで珍しくバスで向かう。ラッピングバスだった。

 思えば、沼津に訪れてから初めてラッピングバスに乗った。
 鞠莉があわしまマリンパークの案内をしていたが、この案内もなくなってしまうのだろうかと思うと切なくなる。バスは乗客で満員だった。

内浦に来たって感じがする(様式美)

 1/27お昼頃、入場チケが買えない。
 バトミントンをしていたせいである。いや、あの時点で並んでいないと間に合わなかっただろう。

内浦を散歩して日本酒を煽ってから戻っても結局淡島上陸作戦は失敗に終わる。

内浦の夕日はいつも綺麗

 1/28
 小学生低学年ほどの女児が、あわしまマリンパークのチケット売り場に並んでいた。8時頃。
 その子はどうやら「ラブライブ!サンシャイン!!」を知らないようで、チケット売り場の隣、デコレーション工房のガラスに張ってあるAqoursのデフォルメイラストを見ながら母親と会話をしていた。

・アイドル?学校でアイドルをやっているの?
・下にあるのはその子が好きなやつかな?(ダイヤを見ながら)
・実写化しやすそうだね。
・一話でも見てからくれば良かったね。
なんて会話が聞こえてくる。

 顔を上げて見渡すと、自分と同類なオタクばかりかと思っていた様子と違っていて半分は子連れだった。なんならオタクの方が少ないとまで感じた。
 列が動きチケット売り場の前まで移動すると、スピーカーから「SORA, FUJI, SUNSHINE!」が流れる、すると先ほどの女児が「あ、富士山の歌」と反応する。

 今はアニメ時空が一区切りしたAqours、DREAMY COLORを節目に活動を続け、幻ヨハもライブまでやり一段落し、今は9周年を目前に活動が続いている。自分は6thライブあたりでAqoursは後輩にバトンを渡して身を引くべきなのでは無いか、というnoteを書こうとしていた。現地で6th東京ドームを見た結果、言うのは今じゃ無いと思い筆を執らなかった。

 μ'sは「終わり」を選択したことで永遠の光となり、Aqoursは「続ける」ことを選んだ。
 ラブライブ!フェスでμ'sがメドレーで当時の光を再現したところに「届かない星だとしても」で手を伸ばしたAqoursにラブライブ!のバトンが渡ったように、Aqoursも後輩にバトンを渡すときが確実に近づいているだろうと感じている。
 ラブライブ!フェスでμ'sがスノハレを歌い終わった後、静寂を突き破るように出てきたAqoursShipの光景、輝きに手が届いたかのようなあの瞬間を忘れることが出来ない。あの瞬間にAqoursの物語が完成したような気さえしてる。

 ずっと追いかけていた輝きに手が届いて、その後のAqoursの物語はなんなのだろうか。あわしまマリンパークの閉園の空気に触れることで少しわかった気がする。
 私はラ!シリーズ全部見るようにしている。そのため一つの作品に割ける時間が減っているというのもあるが、最近のAqoursの活動に100%乗れてはない。単純にメインターゲットから外れている感覚がある。
 あわしまマリンパークのチケット売り場にいた女児の存在をみて、矢印の向きはここだったのかもしれないと気づきを得た。

 「ラブライブ!サンシャイン!!Over the Next Rainbow」の最後に描かれていたのは、沼津に来た「未来のスクールアイドル」かもしれない少女だ。μ'sに憧れた少女たちと同じように、Aqoursに憧れる少女たちが生まれる。すでにAqoursの後に生まれた姉妹作品で触れられている話でもあるが、改めて目の前でその可能性の瞬間に立ち会うと、ハッとさせられた。

 マリンパークを観察すると、しっかり作り込まれていることがわかる。設備は古さを感じるが、水槽はピカピカに掃除されていて生態がしっかり見えるし、壁に所狭しと貼られている工夫を凝らした手作りのPOPの数は一朝一夕で準備できるモノではない。

ふれあいコーナーの解説では浅い水槽をぐるりと囲み、身動きがとりづらい人の中でもスムーズに解説を進行するお兄さん。

 これらが一体誰のために向けて作り込まれているのか、と眺めながら考えていると、室内に響く元気な声が聞こえる。
 「子供の学びのため」に、という当たり前のことの意味を理解したときに、先ほどのAqoursに初めて触れた少女の姿が頭によぎりなにか通じる者があるのではないかと思った。Aqoursが終わりを避けられなくても浦の星の名を残そうとした姿とあわしまマリンパークの状況が似ているのもある。

 何度も沼津に来ていて景色に見飽きたとまで思っていたが、この場所が如何に愛されているかということを見落としていたことに最後に気がつく。
 癖が強いウニ推しの職員がいるのも初めて知った。勢いがすごい。

 9周年を迎えるAqoursが続ける先になにがあるのか、それは想像もつかない。でもそれはきっと未来の可能性に想いを託すような物になるんじゃないかと思う。
 時代を超えた想いの繋がりを伝統と呼ぶ、あわしまマリンパークが離島で水族についての学びの場としての体験を継いでいたように、ラブライブ!フェスで想いが時代を超えて繋がり託されたように。

あわしまマリンパークに再び渡れる、そんな未来になることを祈る。

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