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毎日の仕事を最高にワクワクする冒険に変えるための50の法則(渡辺裕子)

渡辺裕子「鎌倉暮らしの偏愛洋書棚」 第1回
"The Project 50 (Reinventing Work)" by Tom Peters 1999年出版
セクシープロジェクトで差をつけろ!
著:トム・ピーターズ  訳:仁平 和夫 CCCメディアハウス 2000年発売

今から10年以上も前、当時働いていた会社で同僚男性の机の上に、この本があった。

セクシープロジェクトで差をつけろ!

「色気ムンムンのちょいワルオヤジ」を目指す同僚のイメージが、私の脳裏に浮かんだ。この男は何を考えているのだろうか、と思った。

だから、雑誌『GQ』2005年7月号でSoup Stock Tokyo率いるスマイルズの遠山正道さんがこの本を推薦していなければ、きっと手に取ることはなかったと思う。

このあと私は「G1サミット」というカンファレンスの立ち上げに参画したのだが、そのタイミングで本書に出会えたことに、どれだけ感謝したかわからない。この本は、すべてのプロジェクトマネジャー、特に新しいことを立ち上げる人、チームを率いる人の必読書だと思う。

(なお、この本の著者トム・ピーターズは、経営学の不朽の名著『エクセレント・カンパニー』を書いた高名なコンサルタントで、同僚男性にしてみれば、おまえこそ何を考えているのだ、と思ったことだろう)

「すごいプロジェクト」をつくるために必要な法則とは

そもそも、なぜ「セクシープロジェクト」なのだろうか。本書にはこう書かれている。

すごいプロジェクトとは、同僚の心を掻き立て、強い連帯感を生み出し、お客さんのあいだで大評判になるもの。すべてを燃焼し尽くせるもの。刺激的で、強くて、カッコよくて、セクシーなもの。

すごいプロジェクトとは、美しくて、優雅で、革命的な衝撃力があって、お客さんが大騒ぎするもの。

すごいプロジェクトとは、あなたが始めるもの。

この本には「すごいプロジェクト」をつくり出すために必要な50項目の法則が書かれている。

50項目すべて取り組むのは大変かもしれないが、少なくとも、第1部から第3部まで4項目ずつ、第4部から1項目選び、各項目の「やってみよう」を早速試してみることを勧めている(50項目の中から計13個の行動プランを選んで、実行することになる)。

たとえば、こんな感じだ。

□お客さん側で一番カッコいい人と、四八時間以内に合う手はずを整えよう。その人に会い、このプロジェクトをすべて任せるとしたら、何をやりたいか聞いてみよう。

□(1)メモ取り要員、スケジュール表の作成・管理者、(3)会議の世話役には、いつも志願しよう。誰もやりたがらないこうした仕事を引き受ければ、あなたはたちまち実質上のプロジェクト・マネジャーになる。そして、そこが登竜門になる。

□いま取り組んでいるプロジェクトで、ほんとうに革命的といえるものを五点、書き出してみよう(五点思いつかなければ、そのプロジェクトは白紙に戻した方がいい)。

□今日から航海日誌をつけはじめよう。どんな仕事にも冒険の要素を加え、毎日、冒険談を書き記していこう(心を奮い立たすため、ピアリー、スコット、シャクルトン、アムンゼンなど、北極・南極探検家に関する本を)

□いいことを思いついたら、三日以内に、実際にそれを試してみよう。何か形にしなければ、思いつきは思いつきのまま消える(三日じゃ何もできないって? そんなことはない。三日もあれば、さっさと試作品を作ってしまう人が、この世にはいくらもいる)。

歴史上の偉人たちに学ぶプロジェクトマネジメント力

最近、働き方改革が叫ばれている。「イヤな仕事」を我慢する時間を8時間以内に収めることをそう呼ぶのだろうか。確かに、仕事というのはこれまで「イヤなもの」だったかもしれないが、これからは違うはずだ、と私は思う(思いたい)。

プロジェクトの鬼になる。熱狂する。ワクワクする。クレイジーで最高の仲間を集める。航海日誌をつくり、そこに何でも書き込んでいく。『キングダム』や『ワンピース』の主人公たちの冒険や感動や成長は、マンガの中のものだけではない。日々の職場で再現できることのはず。

自分の仕事に熱狂する。コピー取りだって構わない。その領域で圧倒的な成果を出していく。その結果として、自分のやりたい仕事をより選べるようになり、働き方、生き方を選ぶ自由を手に入れる。好きなことに本気で取り組み、評価されて生きていく。それが、本来の働き方改革なのではないだろうか(ことに、組織が硬直化して生産性がじわじわと下がっていく時代においては)。

この本で書かれている「プロジェクトマネジメント力」の身につけ方は、好きなことに本気で取り組み、評価されて生きていくための武器となる。この本を読むことで、その武器を手に入れられるのだ。

歴史の教科書の偉人たちの共通点は、こうではなかったか、と書き出されている。米国の話だが、日本だって同じはずだ。

・本気だった(命がけだった)。
・自分にしかできないことがあるはずだと信じていた。
・力を一点に集中していた。
・情熱があった。
・リスクを恐れなかった。
・頭がおかしいと、みんなに言われた。
・時代に先行して、パラダイムを変えた。 
・せっかちだった(と同時に、目標を見失わなかった)。
・すぐに行動を起こした(構えて撃ってから、狙いを定めた)。
・多くの人たちの心に火をつけた。
・独創的で変わり者だった。
・反逆者だった(社会運動家も科学者も芸術家も)。
・上司の顔色などうかがわず、命令系統など無視した。
・不遜にして無礼だった。
・混乱を喜び、混乱を利用し、臨機応変に動いた。
・許可を求めなかった。
・骨の髄まで正直だった。
・欠点があった(美点に負けないくらい大きな欠点があった)。
・あとに続く者の欲求と願望を汲み上げた。
・一芸に秀でていた。

日本中に「セクシープロジェクト」が蔓延したなら、とんでもなく面白く、ワクワクする社会になるんじゃないか。そう思っている。

執筆者プロフィール:渡辺裕子 Yuko Watanabe
2009年からグロービスでリーダーズ・カンファレンス「G1サミット」立上げに参画。事務局長としてプログラム企画・運営・社団法人運営を担当。政治家・ベンチャー経営者・大企業の社長・学者・文化人・NPOファウンダー・官僚・スポーツ選手など、8年間で約1000人のリーダーと会う。2017年夏より面白法人カヤックにて広報・事業開発を担当。鎌倉「まちの社員食堂」をプロジェクトマネジャーとして立ち上げる。寄稿記事に「ソーシャル資本論」「ヤフーが『日本のリーダーを創る』カンファレンスを始めた理由」他。


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