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【lyrical school 6DAYS vol.06】hime「”何を言ってるか分からないことの正解”もあるんだなって」

6日間連続更新lyrical school特集ラスト、5人目はhime!

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アイドル界きってのヒップホップリスナーであるhime。アルバム『Wonderland』の制作を経て起こった心境の変化や、昨今のラップ事情、そしてソロ計画(!?)など、やっぱり今回もヒップホップの話です(笑)。

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取材&文/高木”JET”晋一郎 撮影/横山マサト

――himeさんには昨年、TV Bros.のnoteにて「lyrical school himeに聞く! 日本ヒップホップシーンのリアル事情」にもご登場いただき、ヒップホップの、特に若いアーティストのシーンを紹介してもらいました。最近(インタビューは2020年12月末)もヒップホップ愛は変わらずですか?

はい(笑)。この前はLEXさんとCampanellaさんのライヴを観に行ったんですけど、超喰らいました。

――「超喰らう」というスラングを使うアイドル……(笑)。

アハハ。特にCampanellaさんのライヴにはすごく影響を受けました。あの佇まいとか、存在感が超格好良くて。あの雰囲気ってキャリアを重ねてきたからこそだと思うし、私もああいった雰囲気が出せるように、これからもラップを続けていきたいって改めて思いました。LEXさんは私より年齢は若いんですけど、海外のアーティストに肩を並べるくらい完成されていて。ゴリゴリのラップもあれば、ボーカル曲も、ステージにクルーや仲間がいっぱい出てきてお祭り騒ぎになったり、ソロなのにフェスなのかなって思うぐらいのバリエーションがあって。でも、そのバラエティをLEXさんは1人で出せるのに、私達リリスクは5人いるんだから、もっと出来ることはあるんじゃないか、ってすごく刺激になりました。

――リリスクとしてアルバム『Wonderland』の制作を進めていくなかで、himeさん自身の中で変化はありましたか?

「何を言ってるか分からないことの正解」もあるんだなって。

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――それはリリックの内容について?

というよりは、発声とかフロウ、言葉の崩し方ですね。特に「TIME MACHINE」のレコーディングで体験として感じたことで。

――それは具体的には?

リリスクの曲って、基本的には仮歌の段階でメンバーごとにパート割がされているんですね。だから全体としても覚えるんですけど、割り振られた自分のパートに注力することの方が多くて。でも、「TIME MACHINE」は全員1曲まるまる歌えるようにして、そこからパートごとにハマりそうなメンバーをピックアップして、最終パートを決めていくっていう方法だったんです。その結果、私は最初のパートを任されたんですけど、そのRECのときにプロデューサーのKMさんが「もうちょっと何言ってるか分からないように崩してラップして欲しい」って。そういう指示っていままでのリリスクのレコーディングには無かったし、逆にもっとハッキリって言われることの方が多かったから、すごくカルチャー・ショックだったんです。

――「アイドル」としては明瞭な言葉を求められることが基本的には多くなりますよね。

そうなんですよ。うちらは「アイドル」だから、「ヒップホップ・アーティスト」とはやっぱり違うと思っていたし、お客さんに届いたときにどう伝わるか、何を言っているかがパッと聞き取れる方が大事だと思っていたんです。だから、どんなにビート・アプローチが変わっていたり、変則的なフロウでも、言葉自体はクリアに聞こえるように心がけてたら、「そうじゃない方向で」って言われたのは、すごく驚いたし、盲点だったし、それでいいんだ!って。

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――新しい可能性に気付かされたというか。

まさにそれで。それによく考えたら、いつも私が聴いてるヒップホップの楽曲は、一聴しただけでは何を言っているか分からないフロウとかスタイルなんて全然めずらしくないし、私達の曲であっても、場合によってはそれが正解のときもあるんだなって。だから、曲ごとに正解は変わるけど、崩したり、ビートや音楽に合うラップをしようって思ったんですよね。それに実際に崩してラップしてみたら、その方がすごくラップしやすかったりもして。

――その意味でも、ラップに対する意識変化があったんですね。

やっぱり私は10年以上アイドルの世界にいるから、当然なんですけど「自分はアイドルです」って自分を型にはめていたと思うし、「アイドルらしいラップ」を考えていたと思うんです。でも、それによって表現の幅を制限していたのは自分で、プロデュースして下さる方やアーティストさん側からしたら、私やリリスクには、また別のアプローチが求められるようになっていたんだなって。だから、もっと普通にヒップホップ・シーンの中で流行っていることだったり、今っぽいラップ的な方法論をリリスクでもやっていいんじゃないかって気付くことができました。

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――リスナーとしての意識も変わりました?

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