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『PAO~N』沢田幸二・テレビの世界を体験したからこそ分かる、ラジオの奥深さ【全国ラジオ特集 発売記念⑦】【無料記事】

※現在発売中の「別冊TV Bros.全国ラジオ特集powered by radiko」で掲載中の特集から、未公開トークや追加取材を交えた特集をお送りします。

「山口県出身で広島カープのファンだから、カープ戦の中継の実況をやりたくて広島のRCC中国放送が第一志望でした」
という沢田。12の放送局を受験して唯一“拾ってくれた“のがKBC九州朝日放送だった。ところが入社後、目の前で起きている事をうまく描写することが苦手であることが判明。プロ野球の実況は一度もすることがないまま、ローテーション勤務に組み込まれる。入社して4年目に入った頃、大ブレイクのきっかけとなる伝説の夜ワイド『PAO〜N ぼくらラジオ異星人』がスタート。当初は週に1度の出演だったが、その後、2曜日、3曜日と増えて、ついには番組の顔となる。
今や福岡ラジオ界の第一人者となった“エグアナ”こと沢田幸二が、長きにわたるラジオ人生を振り返って思うこととは?

取材・文/やきそばかおる 撮影/ツダヒロキ

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本音を言えば
「今日はスタジオ入るの嫌だな」と思う日も…

――『PAO〜N ぼくらラジオ異星人』はKBCのアナウンサーだった師岡正雄さん(現・ニッポン放送)もパーソナリティーを務めていましたよね。

番組開始当初は日替わりで4人がパーソナリティーを務めていましたが、それが3人になり、2人になり、ついには諸岡(正雄)君が午前中の番組にいくことになって最終的に1人になりました。

――沢田さんは番組冒頭の“前ピン“(沢田が早口でゴシップを面白おかしく紹介しながら、その日のコーナーを紹介するオープニング)と同じくらい、テンションが高かった印象があります。

あの当時はテンポが速い方がウケたから僕も速く喋ってましたね。夜ワイドの全盛時代が終わる頃で、文化放送は吉田照美さん、ニッポン放送は三宅裕司さん、文化放送はミスDJがパーソナリティーを務めていたので、それぞれの良いところを取りました。例えばミスDJをヒントにして、喋る相手は女子大生から公募してみたり、照美さんや三宅さんの番組のコーナーをモチーフにしたコーナーを始めたりしました。いわば“良い部分の寄せ集め“です(笑)。

――午前中はテレビ番組『サワダデース』(毎週月曜~木曜 前10時25分〜11時10分)の生放送に出演したあと13時から『PAO〜N』がはじまりますが、なかなかハードでは?

本音を言えば「今日はスタジオ入るの嫌だな」と思う日もたまにはあります。でも3時間が終わったらおしまいですからね。1日の行動が決まっていますし、その点でいえば楽です。

――それを聞いて安心しました。『PAO〜N』は昼ワイドも夜ワイドも含めて長寿番組ですが、おすぎさんとの共演も長いですよね。

おすぎさんと番組をやりたいというディレクターがいて、東京に行って交渉したのが30年以上も前のこと。当初はおすぎさんが朝の番組に電話で出ていて、FM福岡の番組にも出ていたこともあって、そのついでにスタジオにも来てくださるようになったんです。そうした縁で『おすぎとコージのあぶない関係』(KBCラジオ)が始まりました。その後、おすぎさんはたくさんの番組に出演するようになって福岡に住むようになりましたからね。

ラジオの楽しさをよく分かっている人は、
自らくだらない話をしてくれます(笑)


――KBCラジオにはたくさんのアナウンサーがいますが、中でも沢田さん、『オールナイトKBC』(※1)の宮本啓丞アナウンサー、『ドォーモ×ラジオ』(※2)の長岡大雅アナウンサーは男性アナウンサーの3枚看板という気がします。

狙ってるわけじゃないと思いますけど、それぞれの世代にいますよね。宮本も長岡もラジオが好きだからうれしいです。『オールナイトKBC』を聴いていても「ラジオで喋りたいんだろうな」という思いが伝わってきます。弊社はラジオ・テレビ兼営で喋る機会が多いから恵まれています。ラジオとテレビでは喋りのトーンも距離感も異なります。テレビなら「ご覧のように」と言えばすむところもラジオではきちんと説明する必要があります。ラジオのスポーツ実況の場合は意識的に口数を増やしたり、想像してもらうようにします。打ったボールが全然大きくなくても「大きい! 大きい!」と言ったりします(笑)。

――ラジオが好きなアナウンサーがいる一方、全国的に若手世代はラジオを志望する人が少ないそうで、少し寂しいです。

昔はラジオが登竜門でしたが、今はすぐにテレビに出てメジャーになろうとする傾向がありますからね。それはタレントさんもそうです。ラジオが好きでノリを知っているとスタッフ側もやりやすいんですが、知らないとなかなか難しいと思います。ゲストの方も、ラジオの楽しさをよく分かっている人はすぐに分かります。音楽の話だけでなく、自らくだらない話をしてくれるとか(笑)。

――くだらない話は大事ですよね! 福岡のラジオ番組はAMもFMもトークの量が多い番組が多いですよね。

トークといえばAMラジオのイメージが強いと思いますが、福岡ではFMの番組もよく喋ります(笑)。昔はそうではなくて、トークをたくさん放送するようになってからFMのリスナーが増えたんです。弊社の番組では『PAO〜N』以外に『居酒屋 清子』(※3)のように2〜3人で居酒屋にいる感覚で緊張感なく喋る番組が人気です。全国の皆さんもradikoで福岡の番組を聴いてみてほしいです。屋台で居合わせたお客さんの話も面白かったりしますからね。福岡の人は質実剛健であまり喋らない印象があるかもしれませんが、実はお喋りです(笑)。

(※1)『オールナイトKBC マントル宮本の××祭りだよ カーニバロー!』。不定期で日曜深夜に放送。マニアックなことが大好きな宮本啓丞アナウンサーが、気になるパーソナリティーを迎えて話を引き出す。

(※2)『ドォーモ×ラジオ』金曜深夜0時5分〜1時。長岡大雅アナウンサーの音楽番組。音楽が大好きでミュージシャンへの愛が溢れている。番組ファンのミュージシャンも多い。

(※3)『居酒屋 清子』毎週月曜午後7時〜10時放送。“清子女将“が常連客の杉山39と愉快なトークを繰り広げる。かなりフリーな内容。

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<プロフィール>
さわだ・こうじ●1957年山口県生まれ。1980年、KBC入社。スポーツ担当などを経て、1983年より『PAO〜N ぼくらラジオ異星人』でメインパーソナリティーを担当。現在は『PAO~N』のほか、『KBCラジオ・チャリティ・ミュージックソン』(KBCラジオ 毎年12/24~12/25放送)、『サワダデース』(KBCテレビ 毎週月~木前10・25〜11・10)に出演。
<番組情報>
『PAO~N』
福岡・KBCラジオ 毎週月~金曜後1・00~4・00
出演(月~金)沢田幸二 (月)おすぎ 田中菜津美/コガ☆アキ (火)矢野ぺぺ いわぶ見梨 (水)ルーシー 深瀬智聖 (木)松村邦洋 深瀬智聖 (金)原田らぶ子 和田侑也
●現在の名称では’03年よりスタート。各曜日にテーマがあり、「おかまの月曜日」、「出戻りの火曜日」、「美肌効果の水曜日」、「バウバウの木曜日」、「尻上がりの金曜日」とパーソナリティーの特色を出している。名物は「前ピン」。



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