2019.5.13 TVOD近況

パンス さて、ブログではずいぶんご無沙汰してしまいました。TVODです。久々に原点に立ち返り? 対談形式で近況など報告していきますー。まずはコメカ君がなんと古書店をオープンしたという!

コメカ うん、国分寺駅そばで、早春書店という古本屋を始めました。新刊もちょろっと置いてます!まあオープンからのこの一ヶ月、とにかくもう慌ただしかったです…。おかげさまで沢山のお客様に来ていただいていて、ホントにありがたいです。本の買取もやってますので、何かあれば042-407-8945もしくはinfo@so-shun-shoten.comまで、ご相談・ご用命下さいませ~。で、5月4日に夏葉社/岬書店の島田潤一郎さんと、島田さんの新刊『90年代の若者たち』の発売記念トークイベントを早春書店でやらせてもらって。TVODとして島田さんのお話をお伺いしました。いや、面白かったね。

パンス 『90年代の若者たち』は、文化回顧的なところを越えて、島田さんのパーソナルな部分から当時の日常、生活の機微を浮かび上がらせている希有な本です! ぜひ読んでほしい。その前にはROCK CAFE LOFTにて金田謙太郎さん・河村祐介さんと「90年代の音楽」について。さらにその前にはロマン優光さんの『90年代サブカルの呪い』刊行にあたってのトークショーにも出演しました。なぜか90年代づいてるTVOD。

コメカ 実際には我々は90年代カルチャーにはギリギリ間に合わなかった世代なんだけどね(笑)。思春期的な自意識を身につける頃には、渋谷系もテクノもひと段落ついちゃってたし。まあただ個人的には、懐古的に90年代を振り返ってもしょうがないとは思ってんだけど。でも、個々人が90年代に何を考え、どんな風に過ごしていたかにはすごく関心があるんだよ。90年代に限った話じゃないんだけどさ、個人的な体験をオーラルヒストリー的に書き留めておく必要性を意識する人が増えてる気はするのよね。ぼくもそれがとても重要な気がしてる。

パンス 僕も同感。というかそういうのを読むのが好きなので、みんな書いてほしい! 60年代の「反芸術」周りの証言を集めた「日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴ」ってサイトがあるんだけど、寝る前とかに延々と読んじゃうんだよね。で、僕も書きたいなと、いろいろ学生の頃のこととか思い出してるんだけど、記憶力に乏しくてあんまり出てこないってのと、かなり恥ずかしい思い出ばかりなので「アーー」とか叫び出したくなっちゃうんだよ。この感情を越えないと書けないんだなと、いま自分のなかで闘っているよ。

コメカ 島田さんの『90年代の若者たち』は、その「アーー」って感じまで含めてすごく正直に、かつ、なんというか優しく語った本なんだよね。まあ実際、10代~20代あたりなんて、後から思い返すと「アーー」ってことしかほぼ無いからな(笑)。で、そういう感じと、文化とかひいては社会や政治について考えたり話したりするのとを、併走させたいんですよ。どっちかだけになると嫌だな~っていうさ。ちゃんと社会に向き合いつつ、自分の恥ずかしい記憶も常に忘れないようにしておこうっていう(笑)。

パンス そのどちらも兼ね備えてる本もあるよ。大塚英志『おたくの精神史』とか。思い出を語るのが社会を分析することに接続されるのが理想かな。って自分でハードル上げてもしょうがないのだが。少なくとも、昔は良かったおじさん的な態度を取り続けていたら達成できなさそう。美化すると歴史修正になっちゃうから。

コメカ うん、「オレらの頃は良かったよ…」的な語りだけはしないように気をつけよう(笑)。実際ね、「あの頃の方が良かった」みたいな語りって意味をなさないものだと思うのね。どの時代にもポジティブな側面ネガティブな側面、色々な側面が当然あるわけだから。で、今月の「TVODの焼け跡テレビ」では、姫乃たまさんをゲストにお迎えして、「大人」になるってどういうことか…という話をしたいと思ってます。それこそ、懐古的に過去に浸って遊んでいればいい「子ども」のままではいられないわけでね、サブカル者たちも。

パンス いきなりサブカル者という新語が爆誕。サブカルという原罪を背負って市中を引き回しにされてる人みたいな情景が浮かぶね。放映は5/22(水)、20:00からです!
というか「文化と政治を同時に語ります」というコンセプトでやってたつもりが、最近あんまり政治の話してないよね。なのでこれからはまた、そのあたりにも触れてみます~。
あと今回から二人それぞれのオススメ曲を紹介します! まずは僕から。

台湾の「落日飛車」というバンド。Twitterでも紹介したけど、現状数多あるインディ・ロックのなかでも、洗練度が高過ぎて頭ひとつ抜けているという感じ。この曲は最近のアルゼンチン・ジャズみたい。今年のフジロックにも来るそうです。

コメカ ぼくの方は、先ほどお話しした姫乃たまさんの「長所はスーパーネガティブ!」を。

地下アイドル卒業と同時に発表されたメジャーデビューアルバム『パノラマ街道まっしぐら』収録曲。このアルバム、たくさんのミュージシャンがとても優れた楽曲を提供してるんだけど、どうにもポップに成りきれない部分、普通なら商品化し難いような部分が、アルバム全体に通奏低音のように流れていると思うのね。それは姫乃さん自身の、世界や世の中に対する見方・考え方に因るものなんだろうなと思うんだけど。世界がひとつの約束によって成り立つことに愛情を持ちながらも、その約束を破ってでももっと「本当のこと」に触れてみたい、という静かな情熱を、ぼくはこの作品に感じました。

というわけで、今週はこのへんで。また来週!

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