2019 J1第7節 ガンバ大阪vs浦和レッズ レビュー

 お互い中位でパッとしない成績でもナショナルダービーはナショナルダービーなんです!
 というわけで毎度お馴染み浦和戦。ガンバも浦和も前節0-3でボコボコにされ絶不調であり、再起を賭けた試合となりました。
 チームの調子の上昇下降が似たようなバイオリズムで動いているガンバと浦和。この試合もお互いのままならなさをぶつけあうような感じの試合になっていたと思います。以下振り返っていきましょう。

スタメン

 ガンバは前節広島戦のヤットトップ下4231をやめ、442に戻してきました。ダブルボランチを務めるのは定番の今野とヤット。勝った2節の清水戦と同じスターティングメンバーとなっております。
 442への変更についてはミッドウィークのルヴァンカップから示唆されており、フル出場でコンディションを取り戻しつつある今野がスタメンに復帰する形となりました。

 浦和も前節の4バックから、ACLで採用した3バックに戻す形に。ガンバとしては色々な意味で出場を期待していた杉本健勇がベンチ外だったのは残念()

浦和のガンバ対策

 試合開始直後のガンバがハイプレスに弱いのは浦和もスカウティングしていたと思いますが、意外にも浦和のプレッシングラインは低い立ち上がりとなりました。ガンバがボールを保持し、浦和が構えて受けるという形でゲームは進んでいきます。

 序盤に注目したいのは浦和の中盤。エヴェルトン+青木+ボールサイドと反対側にいるシャドー(武藤or柏木)で3センターを作り、532のような形を志向していました。4分20秒あたり、ガンバスローインの局面でやや高い位置を歩いていた柏木が慌てて位置を下げるのを見ても、事前にかなり仕込まれていた形のように見えます。

 浦和が3人でセンターを形成した大きな目的は、恐らくガンバのボランチを塞ぐこと。基本的にボランチを経由しつつサイドにボールを運んでいくガンバのビルドアップに対して、中盤で3対2の優位を作ってできるだけボランチに前を向かせないような意図が読み取れました。ボランチが落ちてボールをもらいにいく動きには、3センターの誰かが必ず迎撃に向かいバックパスを選ばせていました。

 バックパスで東口まで戻させることができると、そのままプレスの勢いを強めていきロングボールを蹴らせようとしていた浦和。東口に蹴っ飛ばさせることができれば、空中戦に強い3CBのところでボールを拾える算段があったように見えます。

 こうした浦和の準備に対してうまくボールを前進させられなかったガンバは、10分前後から今野orヤットが最終ラインに落ちて3バックを形成しながらビルドアップを行ういわゆる「サリーダ」の動きで浦和のプレッシングを回避しようとします。

 浦和としてもこの動きはある程度予測済みだったようで、ガンバがボランチを落とすと柏木と武藤がボランチと横並びになる541のブロックを整えて対応します。最終ラインへのプレッシングはなくなるのでガンバは安定してボールを持つことはできますが、サイドに流したところで相手の方が数も多く、またスペースも狭いためうまくチャンスメイクができません。このあたりは、前節広島戦でも全く同様の問題が起きていました。

541を攻略できないガンバ

 541に対してガンバが詰まりがちになる要因として筆者が考えるのは以下2点です。

 ・東口のビルドアップ能力の不足
 ・スペースを作る動きの少なさ、かみ合わなさ

 前者の東口のビルドアップ能力の不足は、ガンバが当たるチームは大体狙ってきているイメージがあります。浦和もその例に漏れず、サイドで詰まったのちガンバの選手がバックパスを選んだ際は、CBまで追いかけて東口にボールを返させようとしていました。

 強いパスでボランチに当てたり、一列飛ばしてサイドバックに入れたりというパスがなかなか蹴れない東口。東口にボールを戻しさえすれば分の悪いロングボールを選ばせることができ、浦和としてはボールを持たれてもあまり怖さを感じることはなかったのではないでしょうか。

 後者のスペースを作る動きについてもなかなか整備されているようなイメージがありません。特に気になったのは、前半、CBのドリブルによる持ち上がりがほとんど見られなかったことです。中盤の4枚を動かさないうちに整ったブロックの中にボールを入れて苦しむケースが多かったように思います。

 三浦やヨングォンは足元に自信ニキのはずなので、プレスのかからない状況下で持ち上がって中盤を引きつけることは技術的に難しくないと思います。そうすれば、その裏に居る倉田や小野瀬、アデなどのアジリティのあるプレイヤーにスペースを与えることができ、もう少しスムーズな攻撃展開ができたかもしれません。

 上記のように、541に対してやや手詰まり感を見せていたガンバの攻撃。トランジションの局面やロングボール後のスクランブル、セットプレーなど、いくつか得点の匂いのするプレーもありましたが、状況は限定的といった様相でした。

 浦和が序盤からハイプレスを行ってこなかったのは、プレスの掛け違えをなくすことでガンバの強みであるトランジションの発動を抑え、苦手なやり方を選ばせる意図があったのかもしれません。

正直浦和もそんなうまくいってないよね

 守備では良い感じにガンバをハメられていた浦和ですが、攻撃ではそんなにうまくいってなさそうだな、、というのが正直な感想です。
 東口とは違い、ロングキックには定評のある西川。浦和の攻撃はこの西川が始点になっていました。CBとパス交換をしながら、攻撃に転じるのは右ウイングバックの橋岡が最前線まで上がったタイミング。藤春(175cm ひょろい)と橋岡(183cm つよい)のミスマッチを狙って、西川は執拗にボールを放り込んでいました。

 橋岡が競り勝てばセカンドボールを有利な位置で拾える浦和でしたが、前線まで運んだ先では個々のイマジネーション頼みといったところがあり、ワンタッチパスやヒールパスなど色々アイデアは出してみるものの、噛み合わずにミスが出ることも多かったです。
 また、前節の大敗を経てガンバも辛抱強く守れている部分があり、あまり簡単に人についてアタックするのではなく、しっかりブロックに引き込んでボールを奪えていた側面もあったと思います。

 浦和はガンバが捨てている大外に山中を走らせてクロス、という形も見せていましたが、放り込んだ先ではガンバが競り勝つシーンがほとんどで、逆にオジェソクの鋭い読みでインターセプトが決まるシーンもあり、あまり効果的な展開にはなっていませんでした。

 前半は上記のように、どちらも守備は安定しながらもボール保持局面では怖さを出せず、という状況がじわじわと続いていきました。
 43分、藤春の負傷交代というアクシデントもあり、ガンバにとってはあまりいい流れでゲームを進めているとは言えない状況のままハーフタイムを迎えます。

変化が伝播しないガンバ

 お互い守備に対して手ごたえを感じていたのか後半も前半と比べて大きな変化はなく、ガンバがボールを保持し、浦和が受ける形でゲームは進行していきます。

 ガンバは恐らく、前半の手詰まり感があった541対策に対して、守備のバランスを崩す可能性のあるシステムの修正ではなく、各々の意識の改善の方に重きを置いていたように思います。

 立ち上がりを前半と比較すると、東口がサイドバックにパスを付けようとしていたり、三浦が持ち上がったりとバックラインのビルドアップに対する意図の変化は見て取れました。右利きのオジェソクが左サイドバックに入ったことで、利き足へのパスを付けやすいと感じる部分もあったかもしれません。

 そうしてバックラインの意識に変化がみられる一方で、中盤から前にその意識が伝播しているとは感じられませんでした。64分50秒のシーン。三浦が持ち上がったはいいものの、上がった三浦にヤットが寄っていくことで三浦が引きつけようとしていた選手を動かせず、結局中盤でもたついて攻撃のテンポが悪くなったシーンなどは印象的です。

 中央にボールを通せないのでサイドを中心にボールを回していくことになるガンバですが、左サイドは手数かけすぎ、右サイドは逆に縦に急ぎすぎな傾向がありました。やはりここはもう少し浦和のブロックを左右に振り回す意図が欲しかったと思います。ブロックを振り回して引き延ばしてからサイドを突く意図がないので、狭いスペースでのプレーを自らに課してしまっていました。

相手が嫌がるプレーを狙わない?

 浦和が嫌がるプレーというのは確かにあって、それは「レーンをまたぐ」プレーでした。例として挙げるにはちょっと不適当かもしれませんが、公式がTwitterで挙げてくれていたのでちょっと引用。

 この動画では裏に抜けたアデミウソンがドリブルで真ん中にカットインしていくことで、相手最終ラインのマークが混乱したことからシュートチャンスが生まれています。上記動画と状況は違いますが大幅に一般化するとこんな感じの図になるでしょうか。

 5バックは最終ラインに人数をかけるフォーメーションのため、4バックと比較すると1人増えるだけ「レーンをまたぐ」プレーに対して誰が出て誰がカバーするのかという判断がより複雑になります。結果としてマークがずれてスペースが生まれたり、シュートコースが空いたりという状況が出やすくなると言えます。

 前節同じセット守備時541を採用していた広島戦でも、「レーンをまたぐ」動きは有効に作用していたと思います。一方、ガンバの方は狙いとしてこの動きを多く発生させる意図を持ってプレーしていたとはいいがたい状況でした。

 上記の図では右サイドの橋岡をピン止めしている倉田ですが、実際の試合ではボールに絡んで中に入ることで浦和の5バックの幅を狭くしてしまっていたり、ヤットが武藤や青木を引き連れて「レーンをまたぐ」ために使えるスペースやパスコースを消してしまっていたりでなかなか再現性を持たせることができない状況でした。

 後半になるにつれ試合はオープンになっていき、スペース管理の重要性が増してきたところで宮本監督は今野に代えて今期J1初出場となる高江を投入します。一方、オリヴェイラ監督はアンドリュー・ナバウトとマルティノスという推進力を持ち前線のターゲットになれる外国人選手を2枚投入することで、オープンな展開をより自分たちに優位な状況にできるカードを切ってきました。

 結果的に選手交代後は浦和寄りに試合が傾きます。そこで与えたコーナーキックからエヴェルトンに蹴りこまれ、失点。
 セットプレーからの失点でしたが、この時間になるとマイナスのマークが空きがちになる悪癖が出てしまったとも言えるかもしれません。ここまで集中して守れていただけに悔しい失点でした。

 最終盤、コーナーキックでは東口まで上がってパワープレーでゴールを目指しますが、そのまま0-1での敗戦。

まとめ:二兎三兎を追う宮本ガンバ

 これでガンバはリーグ3連敗。ホームでは何と開幕から4連敗と相当厳しい状況に陥っています。

 守備面については一定の改善がみられ、ネガティブトランジション時にがっつり撤退してブロックを組んでから対応することである程度浦和の攻撃を抑え込めていましたが、一方でカウンターの距離は長くなるので3CBに対してアドバンテージを得られなかったり……と、あちらを立てればこちらが立たず、な状況が続いています。

 ここまでくると、ドラスティックな変化も必要になってくるのかなと思います。2勝5敗と決していい成績ではないにもかかわらず、リーグ戦に絡んでいるのは今日の出場者以外だと高・菅沼・矢島・田中達也・渡邊千真ぐらいで、しかも出場時間は短め。非公開練習が多く、試合に出ていないメンバーのコンディションについては事情を読み取れない部分もありますが、いいチームマネジメントができているとは言いにくい状況です。

 臨機応変なチームを志向している宮本監督ですが、ポゼッションとカウンター、結果と育成、あれもこれもと取ろうとして二兎三兎を追う形になっているように思います。幸い、個人に目を落とせばアデミウソンなどコンディションの良さそうな選手は居るので、過去の成果にこだわらず今コンディションが良い選手を中心にチームを組み上げ、できることに集中するというのも悪くないのではないでしょうか。

 U23組の途中起用など色々と伏線は張っている宮本監督。次節も好調な大分相手ということで、ある程度割りきった形を選ばないと難しい戦いになりそうです。いかに準備して勝ち筋を掴んでいくのか、ニューフェイスの奮起はあるのか。苦しい戦いが続きますが応援していきたいと思います。

その他気になったあれこれ

・浦和戦なのに27,870人しか入ってない……レビュー書く時間も気晴らしできる時間も取れないのでやはり日曜開催は悪い文明……

・藤春鎖骨骨折か……よぎる丹羽ちゃんの開幕戦離脱。ガンバのサイドバックは層が厚いはずだったのに、備えって大事だな……。

・宮本監督の試合後コメント。

でもそのポジション(筆者注:ボランチ)に関しては今に始まったことではなくて、ガンバがここ数年抱えている、どうしていくんだという部分だと思うので。

 レジェンドであるヤットと今野をどのように世代交代させていくのかということには、宮本監督も色々思うところありそう。そのための川辺へのオファーだったりするんだろうけど、なかなかうまくいきませんなぁ。

 勝ちが何よりの薬になるはず!
 次節こそはホーム初勝利を宜しくお願いします!!!!!

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