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ペニシリンGの持続投与

もともと抗菌薬持続投与について興味があり、はてなブログでも情報共有しています。

持続投与については、はてなブログに相談が寄せられることが多く、個別に回答していましたが、noteの存在を知り、記事にしたいと思いました。

私たちは、おそらく薬剤師の中で、最もペニシリンGを医師に提案してきた部類に入るのでないかと自負していますので、ペニシリンG持続について取り上げます。


本記事は、この3項目の構成で展開します。

1 . ペニシリンGとは?

2. 持続投与とは?具体的な持続投与方法は?

3. そもそも,ペニシリンGを使用したことないよ!初めの一歩はどうするの?



1. ペニシリンGとは


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はじめに

ペニシリンは、もともとアレクサンダーフレミングによって1928年に発見されました。

ペニシリンGは、肺炎球菌や連鎖球菌、梅毒に対する重要な治療薬であり、De-escalationで目指すべき抗菌薬の代表です。
ペニシリンG使用していないとモグリ認定されます。

ペニシリンGの半減期は短く、投与量の大きさにもよりますが、投与後3〜6時間以内に血漿中で検出されなくなります。

重度の腎不全または無尿が発症すると、半減期は約10時間に増加します。代謝は、主に腎臓ですが、肝臓からも代謝されます。ペニシリンGの約50%が血漿タンパク質に結合しています。

カリウムは、100単位あたり1.7mEq含有するため、心機能障害または腎機能障害患者において注意が必要です。そのため、カリウム含有輸液との持続は注意しなければなりません。(2400万単位で1.7×24=40.8mEq )

主な副作用は、吐気、嘔吐、下痢および過敏反応です。
28日以上の長期使用は、好中球減少症、貧血症および血小板減少症と関連が示唆されています。

薬理作用

ペニシリンGは、細胞壁合成を阻害します。

スペクトラム

グラム陽性球菌(ペニシリナーゼ産生ブドウ球菌、ペニシリン耐性肺炎球菌、腸球菌、およびオキサシリン耐性ブドウ球菌を除く)

グラム陽性桿菌 Listeria

グラム陰性球菌 Neisseria spp(ペニシリナーゼ産生ナイセリアを除く)

ほとんどの嫌気性菌

グラム陰性桿菌に対しては、ペニシリンGは、ポーリンチャンネルを十分通過しないため、有効でありません。

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        MayoClinProc 1999;74:290-307 より

パラメーター

K = 1.53mEq / 100万単位 
半減期:0.5h
分布容積:0.35L/kg
蛋白結合45-68%
200万単位静注後の最大血中濃度:20μg/ml
脳脊髄液/血液:5-10%
胆汁排泄 : 500%

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MayoClinProc 1999;74:290-307 より

厚生労働省の資料も興味深いです。

医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議 公知申請への該当性に係る報告書(案) ベンジルペニシリンカリウム 神経梅毒の適応追加、高用量の追加


2. 持続投与とは?具体的な持続投与方法は?


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ペニシリンGの半減期30分であり、通常4時間毎投与(1日6回)が必要です。
しかし、1日6回投与は、看護師さんの負担が大きいです。

ペニシリンGは魅力があり、肺炎球菌に対しては是非とも選択したい抗菌薬です。

そこで、AHAや日本循環器学会等の感染性心内膜炎ガイドラインにおいて持続投与が推奨されている。

では、どのように持続投与するのか?

我々の施設での具体的な投与法を、以下記載します。

ペニシリンG 2400万単位 持続投与

Ccr 50mL/min以上であることを確認する。
②ペニシリンG溶解は、できるだけ投与直前に溶解する。
③ 含有しており、安全性の面から、シリンジポンプを用いる。
初回はペニシリンG 400万 (100万単位4バイアル) 単位を、生食100mLに溶解し、メインルートの側管から1時間かけて投与する。
⑤ ペニシリンG 1200万 (100万単位12バイアル) 単位を、1号液500mLに溶解し、
メインルートの側管から12時間かけて投与する。
⑥ 継続して、同様にペニシリンG 1200万 (100万単位12バイアル) 単位を、1号液500mLに溶解し、メインルートの側管から12時間かけて投与する。

・補足として、1号液以外に、生食や5%ブドウ糖液が選択可能です。
・K値高くペニシリンG 使用困難であれば、アンピシリン 持続も検討可能である。

ただし、腎機能低下症例は下記を考慮
・Ccr=10〜50では1800万単位/日
・Ccr<10では1200万単位/日


3. そもそも,ペニシリンGを使用したことないよ!初めの一歩はどうするの?


基本中のきほんは、血液培養です。
血液培養の文化構築が本当に必要。

以下、ストーリーを共有します。



1. 発熱、意識低下、血圧低下、呼吸数増加などある患者さんに遭遇。

2. あなたから、医師に血液培養2セットを相談とその後のエンピリックを提案し、フォローする。

3. 上記を5例経験する。

4. 同僚(医師、薬剤師、看護師)に血液培養の啓発を勧める。

5. ICTやASTの講習会で、血液培養は必要ですと呪文のように繰り返す。

6. 感染委員会や病棟などで、血液培養数を報告し現状を共有する。

7. 血液培養が少しずつ文化となっていく。


転勤の度に上記サイクルを回しています。


うまく回り出すまでに1-2年かかりますが、血液培養の必要性は認知されるはずです。啓発はあきらめずに継続が肝要でしょう。

すると、


連鎖球菌・肺炎球菌が出た!

複数セットの血液培養からこれらの菌が出たら、ペニシリンG2400万単位の出番です。


重症度高い市中肺炎であっても、肺炎球菌尿中抗原が陽性であれば、
ペニシリンG2400万単位の一択です!

医師への伝え方は、AB法を駆使しましょう。

A : アンピシリン8g or ペニシリンG 2400万 どうでしょうか?
B : ペニシリンG2400万 持続 or 400万 x 6 どうでしょうか?

オススメは、もちろん B です。


血液培養 おまけ

血液培養が基本の基本であることは、伝えましたが、論文や学会発表もしやすいです。なぜなら血液培養が増えると、レアな菌が検出されることがあるからです。レアな菌血症の症例報告などは、興味深く治療法や治療経過を共有したく思います。当院は中規模市中病院ですが、このプロセスによる症例報告を続けてます。


引用

MayoClinProc 1999;74:290-307
Up To Date : アクセス2019年2月1日
Infective Endocarditis Guidelines – European Society of Cardiology (2015)

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