人の言っていることを鵜呑みにしてはいけません

今日のネタの何故?

  • 先の選挙でもネットの発信が投票行動に大きく結びつく

  • ネットで得る情報は(配信事業者のアルゴリズムにより)同傾向のものが連続して表示されることが多い

  • 多く表示されると、それが真実であると思ってしまう人もいる

  • 氾濫する情報をファクトチェックする重要性

ある国家資格持ちが街頭演説で言っていました

  • コンビニでホイップクリームのお菓子が売っている

  • 本物のクリームを使ったものは賞味期限は1日である

  • 賞味期限が3,4日にモノがある あれは偽物である

  • 油と水は界面活性剤を入れないと混ざらない

  • 界面活性剤は洗剤である

  • 偽物のクリームも洗剤と同じである

  • 増粘多糖類と水素を添加したのがホイップクリーム

  • ケーキを食べるということは油と洗剤を食べている

  • リンパ管に入りやすくなる

  • (ケーキを食べる人は)悪性リンパ腫になる人が多い

本当ですか?

私の知っている常識と大きく異なるので、驚きました
一つ一つ見ていってみましょう

確認① ホイップクリームのお菓子が売っている = 「正しい」

  • 原材料名に「クリーム」と書かれているものは、通称「乳等省令」という規則によって「生乳の乳脂肪を取り出したもの」という取り決めがされています

  • 「ホイップクリーム」は上記「クリーム」の乳脂肪の一部、もしくは全部を「植物性脂肪」に置き換えたものです

  • コンビニにおいてあるスイーツは「クリーム」「ホイップクリーム」どちらのものもあります

参考文献:日本乳業協会「クリーム類にはどのような種類がありますか?

確認② 賞味期限の話 = 「正しい」

  • 「クリーム」の場合、原料となる生乳のたんぱく質変性を抑えるため、完全な殺菌ができません

  • 「乳等省令」により1mlあたり細菌10万個以下

  • 植物性脂肪は主にパーム油、ヤシ油、なたね油など

  • 食用油は製造工程で脱酸・脱臭を目的に減圧水蒸気蒸留などを行うため副次的に完全な殺菌が可能です

  • そもそも普通にスーパーに植物性ホイップが置いてあり、消費者の認知も高いので「偽物」というのはいかがなものでしょう?(あなたはマーガリンを「バターの偽物だ」と目くじら立てますか?)

参考文献:農林水産省「乳等省令抜粋」の別表2の三にクリームの規格が書かれています
参考文献:日本植物油協会「植物油の道

確認③ 油と水は界面活性剤を入れないと混ざらない = 「正しい」

  • 「界面活性剤」は水とくっつく部分(親水基)と、油とくっつく部分(親油基)の両方を持つ物質の総称です

  • 食品に使われる「乳化剤」も「界面活性剤」の一種です

  • よく使われる「グリセリン脂肪酸エステル」はパンが固くなるのを防ぎ、豆腐の消泡剤やホイップクリームにも用いられています

確認④ 界面活性剤は洗剤である = 「誤り」

  • 洗剤に使う界面活性剤は、いわゆる合成界面活性剤と言われ「ラウレス硫酸ナトリウム」とか「ココアンホ酢酸ナトリウム」などがあります

  • 食品に使われる界面活性剤とは物質が違います

  • 「洗剤は界面活性剤である」は成り立つが、「界面活性剤は洗剤である」は理論的に成り立たちません

  • 正しくは「界面活性剤の一種に洗剤がある」です

確認⑤ 偽物のクリームも洗剤と同じである = 「誤り」

  • 界面活性剤が入っているということのみで言えば「同じ」ですが、危険度は同じではありません

  • 例えば、家庭科の実習でご存知「マヨネーズ」は卵と油と酢の産物で、油と水(酢)が完全に混ざっています

  • これは卵の中にあるリン脂質(リン酸エステルの部分を持つもの)が界面活性剤として機能しています

  • だからと言って「卵」は「洗剤」と同じとは誰も言いませんよね?

確認⑥ 増粘多糖類と水素を添加したのがホイップクリーム = 「水素が意味不明」

  • 例えば増粘多糖類の一種「ペクチン」はイチゴの種の部分やオクラなどに含まれるヌルヌル成分

  • ジャムやアイスクリームに添加されています

  • 天然由来だからと言って「安全」とは言い切れませんが摂取量を守る限りは問題ありません

  • 添加物を並べて印象を悪くしたいようですが、いささか論法に問題があると思います

  • 水素については一体何を言っているのかわかりません

確認⑦ ケーキを食べるということは油と洗剤を食べている = 「誤り」

  • ここまで述べた通り、「洗剤は界面活性剤である」は成り立つが、「界面活性剤は洗剤である」は理論的に成り立たちません

  • よって、ケーキを食べるということは「油と界面活性剤」を食べているというのは正しいが「油と洗剤を食べている」というのは誤りです

確認⑧(ケーキを食べる人は)悪性リンパ腫になる人が多い = 「意味不明」

  • 最新の研究でそのような論説がある可能性がありますが、「界面活性剤」と「リンパ腫」の相関性は、少なくともGoogleによる検索でははっきりしませんでした

  • 大体、例えば「マヨネーズ」を食べてリンパ腫になりますか?  (どうせその前にコレステロールが高くなって動脈硬化で死にます

  • この件は、モ○テールさんとかよく怒らないなと思います。

がんの研究はわからないことだらけ

  • がんの研究はわからないことだらけで、1915年に日本の山極勝三郎博士が煙突掃除夫に皮膚がんが多いことから「刺激説(細胞が環境要因でがん化する)」に基づく実験を行い、エビデンスを重ねてきたものです

  • ただ1926年、これとは異なる「要因説」この場合は寄生虫ががんの要因だとする研究者にノーベル賞が授けられました

  • 「要因説」は結局1952年にアメリカの研究者によって誤りであることが確認されました

地道なコホート研究

  • がん研究は、仮説として考えられる要因を持つ集団と、持たない集団とを追跡調査し、その数値を比較する「コホート研究」が一般的です

  • これにより「喫煙者は肺がんになる可能性が高い」などの要因が発見されています

  • 近年ではWHOから「加工肉を1日60g以上摂取すると大腸がんにかかるリスクが増加する」という報告がありセンセーショナルに騒がれました

  • あるいは「ポテトチップス」には「アクリルアミド」が含まれるので発がん性が高いと騒がれたことも記憶にあるのではないでしょうか?

事実を事実として冷静に考えると

  • 日本では加工肉の1日平均摂取量は20g以下です   

  • そもそも肉食過多が結腸がんのリスク増加につながるという話から、取り立てて加工肉のリスクを考える必要がないことがよくわかります

  • 「アクリルアミド」の発がん性については、そもそも穀類が120度で加熱されたことによる問題です       

  • コーヒー、ビスケット、ほうじ茶、煎餅にも含まれます

  • しかし、先立つ肥満による発がん性リスク(消化器、乳房、腎臓など)の方が明らかに高いので「アクリルアミド」を規制する国は今のところありません

あなたの目の前の人は、あなたの支持を欲してる

  • だから、いろいろなデータを持ってきて賛同してほしい結論に持っていきたいのです

  • データはその結論に持っていくための道具に過ぎません

  • 都合の良いデータを示す=都合の悪いデータは出さないということはザラです

  • だから、話している人の「属性」ではなく「内容」の吟味しましょう

  • 「あの人が言っているのだから正しい」というだけの姿勢はもはや「宗教」であり、あなたは「信者」です

  • あなたの目の前の人の「意図」を感じ、必要に応じて 自分で調べる「ファクトチェック」を!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?