手を動かす人

年に一度、テキサスで開かれているサウスバイ・サウス・ウエスト(SXSW)。TwitterやAirbnbが広まるきっかけにもなったスタートアップ企業の登竜門と言われるイノベーションの祭典だ。今年、幸いにも会社から視察にいく機会をいただいた。ここでの経験が、自分の気持ちを大きく変えるきっかけとなった。

カンヌライオンズをはじめとする広告賞の主役が広告なら、SXSWでは、広告は空気のような存在だ。サービス、技術、表現、モノの考え方、最終的な見え方は異なるものの、SXSWで共通しているのは、旧来からある発想にとらわれていないということ。"体験の創造"にチャレンジしている点。

アメリカでは「エージェンシーは不要」という声が大きくなっているという。それは、広告を主軸に据えて、ターゲット分析、企画、クリエイティブ、メディアプラン、運用という旧来からある「型」で考えてしまい、"体験の創造"を二の次に考えている、時代へのミスマッチから生じているのではないだろうか。

誤解を恐れずに言うと、エージェンシーでは「手を動かす人」の地位は低い。クライアントの課題を解決するのがエージェンシーの仕事であり、アカウントやプランナー、クリエイティブの上流さえ握れれば実作業はそのジャンルの専門家に頼んだ方がクオリティが高くなるという誤った認識が原因だ。

SXSWの空気に触れて、今の常識は一昔前までの考え方だと思った。

かつて、氷を作る仕事があった。
その仕事は工場に置き換わった。
今は、冷蔵庫に置き換わった。

仕事は日々変化しており、今の常識は、新たな価値観に上書きされることで進化して来た。新たな価値観は今の巨匠からは生まれない。答えは会議室ではなく、実際に「手を動かす人」から生まれるのだ。ジャンルを超えた「手を動かす人」が上流に入ってこそ、はじめて本質的な課題解決ができるのだ。

今、AIがヒトの仕事を奪うというテーマで話題だ。自分は、かつて「Flash職人」だった。その職種はiPhoneにより消滅した。今の時代、スキルは新たなテクノロジーの登場により、一瞬で氷解してしまう。ただし、テクノロジーでは侵食できないことがある。それは人の熱意だ。熱意があれば、瞬発力をもって新たなテクノロジーへ適応でき、コンセプトに終わらせずカタチにできる。熱意ある人こそ上流に入るべきで、手を動かす資格がある。

皮肉なのは、SXSWの期間中、SNSを見ていても、どんな広告よりもSXSWネタが目立っており、とくに広告人が反応していたことだ。

体験は広告に勝る。とはいえ、経済活動がある以上、広告はなくならない。であれば、手を動かしながら新しい広告を模索し続ければ良い。

未来の広告を作るため、自分は「手を動かす人」であろうと思う。

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