PMW3360の駆動回路について(2)

前回に引き続きPMW3360の駆動回路についてです。

はじめに

回路図の引用にあたって、元となった九嶋さんおよびkbjunkyさんのライセンス表記を記載させていただきます。

設計変更点

一言でまとめますと、私が行った変更点は抵抗値の修正です。
自設計のキーボードShoebill43TGのお披露目を4/7のKEEBPDに投稿させていただきましたが、本記事の設計はShoebill43TGにて動作検証済みとなっております。

変更点1

まず、5Vから3.3Vへの変換回路です。

PMW3360駆動回路 5Vto3.3V変換部

九嶋さんの設計、およびその元となったkbjunkyさんの設計がこちらです。

PMW3360のデータシートに記載されている構成そのものとなっています。
私の設計は以下です。

PMW3360駆動回路 5Vto3.3V変換部 改変版

R1とR8の値が変わっています。すなわち、抵抗値を入手性の高いものに置き換えております。
今回、公開されている回路設計がEasyEDAのものだったのでJLCPCBでPCBAを発注してみたのですが、PCBAの際にこの部品の変更はかなりコストに響きます。というのも、52.3KΩ抵抗などはJLCPCBのStandard部品には無いため、Extendedパーツとなります。Extended部品は1種類増えるだけで数百円コストアップするので、何種類か使うと数千円のコストアップにつながります。仮にPCBAでなくて自分でチップ部品をはんだ付けするにしても、中途半端な抵抗値のチップ抵抗は入手コストが高くなりがちです。TPS73601DBVRのデータシートを確認すると、
Vout=(R1+R2)/R2*1.204
との変換式が得られますので、
改変前の電圧=3.296V
改変後の電圧=3.25V
となります。大差ありません。そもそもPMW3360の仕様上、IO用の電源は1.9V以上であればいいので、これが2.5Vとかでも問題はないはず・・・

変更点2

次に、5Vから1.9Vへの変換部です。

PMW3360駆動回路 5Vto1.9V変換部
PMW3360駆動回路 5Vto1.9V変換部 改変後

こちらも、抵抗値を一般的なものに差し替えました。こちらは、
改変前の電圧=1.91V
改変後の電圧=1.91V
とほぼ同じになります。
さらに、TPS73601DBVRのデータシートによると、R1とR2の合成抵抗値は並列で19KΩ程度が良いと記載されています。元の設計だと23.5kΩになりますが、私の設計は18kΩです。この観点からも改変後の設計の方が好ましい気がしております。

さいごに

以上、単純な設計変更なんですが、かなりコストダウンに効くので紹介いたしました。前回紹介した3設計ともに、公式のデータシートに従った抵抗値を採用していて、ちょっともったいないなと感じております。私は電気回路にそこまで詳しい訳ではないので、もしかすると電流値が変わってどこかに悪影響したりS/Nの観点で動作精度が劣化したり、といった副作用があるのかもしれません。ただ、RP2040と本設計のブレイクアウトボードの組み合わせで実機動作検証はできており、特に違和感なく動作しているようには見受けられます。
なお、この変更を加えてもまだJLCPCBで発注する際のExtended部品は残っておりまして、一つはIR-LED用の39Ω抵抗、そして変圧用のTPS73601DBVR、出力信号安定化用のツェナーダイオードになります。IR-LED用の抵抗はデータシートを見ても仕様が良く分からなかったので変更しておりませんが、近い抵抗値でいうと47Ωであれば0805サイズでもBasicパーツがありそうでした。また、変圧回路やツェナーダイオードは頑張ればStandard部品への置き換えも可能かもしれませんが、今回は検討しておりません。

この記事はKeychron K11 Proで書きました。

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