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古典的営業フレームワーク「BANT」について

プリセールスエンジニアのセールス入門、今回は、営業フレームワーク「BANT」について、具体的な会話例を交えながらお話しします(野球のバントの写真を載せましたが犠打はBUNTだそうです)。
これまでの記事はこちらをご参照ください。

BANTは聞いたことがある方もいるかも知れません。もともとIBMが1960年代に開発した営業フレームワークで、Budget(予算)Authority(決定権)Need(ニーズ)Timeline(導入時期)の頭文字を取っており、顧客の購入可能性を評価するために用いられます。

特に法人営業で、商談調整や初回ヒアリングに特化した内勤営業(インサイドセールス)と、確度の高い商談に専念するフィールドセールスが分担しているような状況で、営業資源を有望な顧客に集中するのに役立ちます。

ある案件でBANTが把握できていたなら、注力する価値がある、契約見込みの高い案件だといえます。一方で、扱っている商材によっては、BANTの把握をこちらから試みることが必ずしも好ましくない、むしろ逆効果になる恐れもあることには注意が必要です。なので、営業担当がBANTを確認する会話をしているかどうかをよく見定めてみてください。

Budget(予算)

頭文字は最初ですが、実はBANTの中で一番トリッキーなのがこのBudgetです。

予算がすでに確保済みかで相手の本気度がわかる、予算規模を大きく動かすことが難しい前提では、予算枠に合わせて提案を調整する、というのは説得力があります。予算の確認は、SI/システム構築の営業活動においては重要です。

質問の方法としては「予算はすでに決まっていますか」「規模としてはおおよそどのくらいですか」「一億か十億かで言ったらどちらに近いですか」といった表現が使えます。1つ目から順番に聞いていくと良いでしょう。

その一方で、SaaSなど製品の販売においては、費用がおどろくほど安い製品の場合を除き、商談の早期段階で予算感を聞くことはお薦めできません。お客さんに「ちなみにライセンス費用は幾らくらいですか」と逆質問された時に対応がしにくくなるからです。

先方の課題や実現したいことなどをしっかりヒアリングし、製品導入の効果をお伝えした後のフェーズで費用をお伝えした方が、費用対効果を感じていただき、先方の社内稟議も通りやすくなります。

先方の本気度を確認するためには、「何らかのシステムを導入することについては、すでに社内で決まっていますか、それとも、我々からのご紹介を踏まえて○○様が社内にご提案なさる形ですか」と言った質問をすると良いでしょう。前者であれば、本気ですが、競合優位性を示す必要があるでしょう。後者であれば、そもそも導入されないリスクもありますので、導入効果を示すことが重要になることでしょう。

Authority(決定権)

導入を誰が決定するのか、ということです。商談している相手が導入可否を決定できるのなら相手を説得するだけですが、大抵は相手の方の上司が決定権を持っていたり、社内稟議をあげる必要があったりします。

もし○○様が導入を進めたい、と感じてくださった場合、次はどのようなステップになりますか」のように聞いてみましょう。説得すべき方が一名であれば、ダメ元で「導入を進めたい、と感じてくださった場合、その方も同席いただくことはできますか」と聞いてみましょう。簡単にOKは出ないかも知れませんが、今後また機会があります。

日本では、複数人の協議で決定することも多い点にも注意が必要です。一人が決定権を持っていることが多い国の上司を持った場合は、まず日本の普通を伝えることが必要になるかも知れません。

Need(ニーズ)

なぜシステム導入を検討しているのか、ということで、以前の記事で書いた課題(ペイン)とも関連します。いわゆる、お客さんがちょっと時間があるので情報収集目的で打ち合わせしてくれたけど、その後全然音沙汰がなくなってしまった、というケースでは、ニーズがないことが多いです。見込み案件が沢山あるのであれば、ニーズが見えない案件の優先度は下げて良いと思います。

ただし、営業サイドからアウトバウンドで作られた案件や、エンタープライズ顧客が別部門に紹介してくれた場合など、顕在化されていないニーズを見つけ出す力が問われるケースもあります。

この場合、「本日お忙しい中弊社との打ち合わせに参加してくださった理由は、どういったところでしょうか」のような質問から探って行くと良いでしょう。

Timeline(導入時期)

導入時期については、SIにおいては決まっていることが多いですが、SaaS導入などでは、決まっていないケースもあります。まずは導入時期が決まっているかを聞き、もし決まっていないようなら、「例えば遅くとも今年中には導入する、と思っていてよろしいですか」のように聞いてみましょう(10月くらいまで、今年度中、など適宜言い換えます)。

実際、大企業では再来年の導入、ということもあるわけで、そんな時は「予算決めは何月頃に行いますか」などと確認した上で、一度製品紹介した後、少し間をあけてからアプローチすることもありえます。

「遅くとも秋口には導入したいです」「なるはやで考えています」などと返事が来た場合は「では8月中くらいにはご契約というイメージでしょうか」「となると、検証は6月頃でしょうか」などと無理のない範囲でスケジュール感を確認します(特になるはやは人によってかなりスケジュール感が違うのでご注意ください)。商談を繰り返すうちに、日程がだんだん明確化していくこともよくあるので、時期に関する新情報や変更がないかは繰り返し確認するのがよいでしょう。


さて、BANTについてご紹介した今回の記事はいかがでしたか。営業フレームワークについては別の記事でも掘り下げていきたいと思いますが、営業担当が使うフレームワークを知ることで、プリセールスは営業担当とよりよいタッグを組めればと思います。

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次の記事を書きました。多国籍企業でしばしば使われる営業フレームワーク「MEDDIC」と、その派生フレームワークについて説明しました。BANTと比較して様々な営業シーンに役立てやすいフレームワークだと思いますので、ぜひご覧いただき、お役立てください。


AIを使ってBANTヒアリングの練習を行う方法の記事を書きました。すぐに利用できるサービスなので、ぜひ活用してみてください。


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