小石川植物園の秋の一日
元理科教員のRと小石川植物園へ行ってきた。
私は3度目、Rは初訪問。
イチョウ、ソテツへの並々ならぬ情熱はRのノート1冊分にあふれていた。事前の調べが半端じゃない。その充実した内容はもはや本人にも把握しきれないようだった。
私はというと、園内は広いから人が多少いてもいい感じに歩けるだろう、くらいのお気楽さであった。
祝日だとしても、3連休の初日。みんなもそっと遠いところへ行くんではないか。
――ところが、11月3日。10時に入り口に行くと、やたら人がいる。
「小石川植物祭」。
何やら、イベントを色々やっているようだ。
「本日の主役」がお出迎え
入り口からRの興奮度は跳ねあがった。
お目当ての一つ、ソテツがいるのだ。
ソテツ、ソテツ、ソテ
「なにあの『本日の主役』みたいなタスキ」
どうやらイベントの一つに「選挙」があり、「立候補」した植物たちに来場者が「投票」できるという。
これは私の好きな狂気。(失礼)
園内の坂を上がるとヒマラヤスギが迎えてくれる(立候補者)。
大きい。立派だ。
Rいわく、植物園の木は公園や街路とは全然違う。公園などの木は人間の都合で枝を切られてしまってあまり大きく育たない。植物園では植物本位で、のびのび育つと。なるほど。確かに、街路樹とかがめっちゃ横に枝はってたら通行しにくいからなあ。
植物園の木々は本当に見事にのびのびなさっていた。秋晴れ(てか夏日!)の空の下、それぞれ主役として輝いていた。
お次はメンデルのブドウとニュートンのリンゴの木だが、
これらについては正直、もう生命力が……
Glasshouseに広がる摩訶不思議な世界
温室へ。Glasshouseと書いてあった。確かにガラスばり。
※ビニール系温室ならgreenhouseの方がよさそう
寒さから守られる必要のある、主に熱い地域の植物たちが並んでいた。
一つ一つの鉢植えに、趣の異なる世界が展開している。
謎の生態。不可思議な葉の形。
「小さい葉っぱはたくさん、大きい葉っぱは少なくていい」とR。なるほどー。光合成(photosynthesis)的なことか。
あちこちで枯れたショールみたいなのかけているのもいて、アレはなんなのか。
ご隠居二人のランチ
温室をゆっくり満喫していたら、お昼になった。
準備万端のRがちゃんとピクニックシートを持参していて、ありがたく乗せてもらう。
今回「卵チャーハン食べてみる?」という私の提案にRが乗り、
例のブツを私は作ってきていた。
(加熱していない卵液をまとわせるステップはさすがに飛ばして)
Rは果敢にもチャーハンにスプーンを突っこんでくれた。
(後から思えば、こんな断りにくい暴力的な申し出をよくもしたものだ)
かわりに私はRの買ってきたからあげをもらった。からあげはまちがいない。
なお、とことん用意のいいRは45L級ゴミ袋まで持参していた。気合のスケールが違う。
元教員同士、学校話に花が咲く。
お互い「学校の仕事に比べれば」今の仕事はほとんど仕事と思っていない、隠居生活みたいなもん(!)という気持ちが一致した。
だってさ。朝7時から夜は19時過ぎ、一日12時間、昼休みがあるわけでもない。休日ったってテスト作り授業作りの日々だったもんねー。
しかし園内は家族連れだらけ、幼児だらけだった。少子化ってなんだろう、くらいに。
ということは30年前なんかもっと子どもだらけだったのか。私もその一人だったとはいえ、凄まじいことである。
分類標本園の怪
ランチの後は樹木エリアへ。Rお目当ての一つ、「精子発見のイチョウ」である。
相当貴重な木であるらしく、アプローチできる場所は限られていた。
(貴重さの内容が今いちわかっていない茶ぶどう)
樹木エリアの奥から日本庭園へ下り、また登る。園内はわりと起伏に富んでいる。
分類標本園なるエリアは笑えた。きちんとした分類のもとに植物が列になって植えられているのだが、何がなんだか、素人にはまっっっったく意味不明なのだ。
理科教員だったRから見ても、相当マニアックらしい。いいよいいよ。
「てかwwwwここwwwなんも植えてなくねwww」
どれがそのサインの植物なのか、お呼びでない居候なのか……
R発見のキノコ
密かに、茶ぶどうはキノコを探していた。
キノコが最近、どうも好きなのだ。
しかしいくら植物だらけとはいえ東京のど真ん中、川が流れているでもない爽やかな園内では難しいようだった。
むしろ地下鉄とかにいるかも、とR。嫌だ。自然の中がいい。
ダメかな、と半分諦めながら歩いているうちに、突如Rがすごい声をあげた。
「えっ何なに何!?」でかい虫でも出たのかと縮み上がる茶ぶどう。
その足元に、キノコが群生していた。入り口付近の微妙に人が少ない場所。
キノコ、いた!! 小石川植物園にもいた!!
クラフトコーラの雄・伊良コーラの罠
最後は「いちょうのコーラ」を飲もうということに。
園の入り口に近い場所に出店があった。
伊良コーラ。クラフトコーラの有名ブランドだ。
「知ってる! いらこーら!!」茶ぶどうは嬉々として叫んだ。
だがしかし。店のトラックには
「ん? IYOSHI COLA……いよし??」
なんと読み方を勘違いしていた……
爆笑するR。
マヌケぶりを露呈してしまった。他のお客さんもたくさんいる前で。
(代表の方のおじいさま・伊東良太郎という方が「伊良葯工」という工房をやってらしたと。なるほど、「伊」東「良」太郎……)(←なんとなく悔しいため調べた)
お店のお兄さんによると、「7:3」でこの間違いが発生するらしい。
これはなぜか、なんとなく想像はつく。
「いらこーら」と読むと、
①「ラ」音が響きあう
②5音になる
この2点が、なんともいえない語呂の良さを感じさせ、読み方を知らない者に「これが正解やろ」と思わせるのである。
……もう何も言わない方がいいのかもしれない。
午後の陽光の中、木々に囲まれて、Rと取りとめのないおしゃべりをしながら飲むいちょうのコーラはおいしかった。それで十分だ。
清き一票を投じた後ろ暗い有権者
最後に、出入口近くの「投票所」に寄った。
紙に書くのだとなんとなく思っていたが、
スタンプだった。すばらしい遊び心。
私はヒマラヤスギに一票を投じた。
たいへん満足な秋の一日だった。
帰宅後、ポケットに突っ込んであった園のガイドをなんとなく広げてみる。
……
……やっっっっちまったな!!
※画像一部R様提供
(↓夏にはこんな日もあったよ↓)
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