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あなたの常識は誰かの非常識

先日のnoteの記事で「ワクワクすることだけして生きていける?」をテーマにこんなことを書いた。

ノルマや下心があって依頼をしたパターン(大変失礼な態度ではありますが、全くない人はいないのではないか、自戒を込めて)と、その人との仕事を思いっきり想像し、ワクワクしながら依頼をしたパターンと。結果は明らかに違ってくる。

出版社の編集者は、年間何点出しなさい、というような点数ノルマがあって、どんな本を出したか?それがどのくらい売れたか?以前に、目標の点数を出せたか? という評価軸があることが一般的だ。

ちなみに、僕の場合は2018年は8点。多いのか、少ないのか。数年前には年間12点をつくったこともある。他社さんでは20点以上が通常、ということもあるらしい。点数ではなく、売上金額をノルマに課している出版社もあるそうで、うちの編集部も将来的にはそちらに舵を切りたい目論見もある。

で、この点数ノルマ。語り出すと根は深いのですが、ここで言及したいのはそのことではなく…。

じつは、いま出版を進めている中山祐次郎さんからのこのコメントである。

坂口さん、はっきり言って、最初僕の本の企画はノルマだったでしょ笑

外科医である中山さんに執筆を依頼したのは2017年も押し迫った頃。仮タイトルは、「医者の本音」。その経緯は、ここを見ていただくとして(この記事へのこまかい突っ込みはおいておきますが…)、すておけないのは、この企画が「ノルマ」意識ではないか?という疑惑である。つまり、

ノルマ=やってもやらなくてもいいけど、まぁ間に合わせのインスタントな企画で刊行計画をうめまっせ!

…である。

いやいやいや…。

でも、「医者の本音」なんてタイトルで煽って、うらんかな、の企画、と思われても致し方ない面もあるのかも。。

そこでせっかくなので、こんな本を出したいなぁ…とあたためていた経緯をここに記しておこうと思ったのでした。

あれは、4年前だったか。

いまは73歳で元気な父が、「脳梗塞」になったとの連絡が入った。母からだ。詳細はわからないが、健康診断の結果が思わしくなかった。精密検査の必要があると。大病をしたことがない健康体だったので、驚いて帰省した。

本人は「たいしたことない」といいはる。母も「病院に行くのを面倒がって…」といまいち要領を得ない。湯飲み茶わんをこぼすことも増えてきたそうだ。精密検査の結果は、1週間後。命に別状はない。でも何が悪いのか。おおごとにしなくていいのか。そんな判断すらできない。なにを心配していいかもわからない。

会社を休んで、結果を聞きにいくことにした。

大病院で2時間ほど待たされたあと、朴訥とした担当医から伝えられたのは、「隠れ脳梗塞」であること。そして、タバコはやめたほうがいいこと。

それだけ?

いや、たしかに症状と対処法としては、それが(唯一の)答えなのだろう。

でも、もっとほかにもたくさん聞きたいことがあった。

いや、聞きたい、というよりも「相談事」だったのかもしれない。

原因とかこれからの生活とか遠く離れていてできることとか。

大げさだ、と思われるだろうか。

生活習慣が病気の元になるのであれば、それを徹底して話し合って、生活を変える手助けや、支えになる助言の1つでも言ってくれればいいのに。

私が、その医者に期待したのは、診療だけでなく、父の生活改善を促す一言だったのだ。

でも、たった3分の診療では、もちろんそんな想いは伝わらない。幸いにして、父はいまも元気にしているし、その後、50年間吸い続けたタバコもやめた。きっぱりと。それでもわだかまりがのこったのは、また同じ「場面」に遭遇したとき、自分のなかに依るべき解決策がみつからないからだ。

職業が変われば、常識もかわる。

お医者さんのコミュニケーションは、患者の求めているものではないかもしれない。それがわかるだけでも、患者の態度や心がけが変えられるかもしれない。それは、田舎のおじいちゃん、おばあちゃんであっても。

そんな医者とのコミュニケーション不全を解決する本を、つくりたいと思ってきた…。

私が、健康書を担当するとき。唯一絶対の指針がある。

それは、「親に読ませたいか」。

年配の読者の気持ちには逆立ちしてもなれない。でも、自信をもって親に読ませたいと思える1冊にできれば、それはもしかしたら誰かの役にたつかもしれない。

本書も、そんな1冊をめざしていきたい。

根本の想いはちがうのかもしれないが、著者の中山さんも、伝えたいなにかをもって、こんなプロジェクトを立ち上げた。現役外科医が…異例なことだと思う。

一介の外科医・中山祐次郎と読者参加型で作る「医者のホンネ本」プロジェクト

どんな本になるか、いまからたのしみです。



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