月間まとめ_2021.07-10超合併版&活動休止のお知らせ

いつもポケットに神絵師、小伏史央です。
今年の初めごろにパスポートを更新したのですが、査証ページが冨嶽三十六景になっていました。2020年からそのデザインになったとのこと。それからたまに絵を見るためだけに開いたりしていて、こういう付加価値は良いなと思っています。

さて、月間まとめに入りますが、日記004で書いた通り小伏は7月下旬頃から全ての執筆活動を中断しています。そのため7~10月までの4か月分をひとまとめにした超合併版でのお届けとなりました。
まあ超合併版といいつつ結局のところの内容量は1か月分だけですけども。
ちなみにこの記事ひとつ書くのに1か月以上かかりました。本末転倒……!

文藝マガジン文戯16

 ひねきわたる。無邪気に笑うさとみに、どうして笑っていられるのと聞いた。さとみは少し考えた後、幸せだからだよと答えた。それがあまりにおかしかったから、私は泣いてしまった。コシテルの近くにある住民センターに行ってゴミ袋を貰いに行った。でも住民だとしても外国人は対象外だったらしくて、代わりにウェットティッシュを貰った。ゴミ袋も貰えたら良かったけど、まあそれならそれでもいいやと思った。
 お金がないんだよね。でもここにいてほしい。お金は関係ないでしょ。いつまでだってここにいるよ。約束して。約束して。指切りげんまん。守ってくれるのは普通のことじゃないんだよ。銃口を向けた。初めての射撃場は想像以上に楽しかった。もう行かなくちゃ。ずっと傍にいてくれるよね。約束してくれるよね?
 細切れになった手紙をEMSの封筒に入れて送った。喉から出かかった言葉はこうして景色に溶け込んでいる。涙を指で取ってくれた。でもその指をなめてもしょっぱくなかった。私の涙が無味無臭だということをその日に初めて知った。こどもの頃から何度も何度も泣いてきたのに、さとみ、つむじが綺麗。
 ドアロックを開けると6まで数えてね。壁が薄くて嫌になっちゃうね。どこに行けばいいのだろう。何もわからなかった。素晴らしい新世界なんてものはどこにもなかった。手帳には家族だった人たちの連絡先が書かれていた。昔の私が書いたのだと思った。蝶々が飛んでいた。宇宙の隅っこでも飛んでいそうだなと思った。首をかしげるとさとみも首をかしげた。[中略]
 この手が届く距離にさとみはいた。いくつかのスパムコメントを消しているとき、その間に本物の書き込みが紛れ込んでいることに気付いた。ごめんなさい見落としてましたコメントありがとうございますすっごく嬉しいです。麒麟さん。その名前で呼ばないでよとさとみは笑った。懐かしいね。もう何年になるのかな。時間なんて関係ないんだよ。そのうち、意味がなくなるものだから。目と目と手と手が合わさった。苦しい辛いもう人生は終わりだと思う。でも嬉しいよ、会えたから。
 街灯がセメントに跳ねて橙色だった。可愛いと思ったからカカオトークのプサにした。でも評判は散々で、何がそんなに憂鬱なの? と語学堂の先生に聞かれてえってなった。だっておかしいよね。憂鬱な人が憂鬱な写真を面白おかしく表に出せるわけないじゃん。できないから辛いのに。できても辛いけど。世にも苦しい心は人には見えないし、私も見えないし、堅結びのノイズが幸せの定義を色あせていく。
 良い湯加減の湯舟なんてなかった。でもあったらいいなといつも思っていた。ナイフを振り回すおかしな人がいた。おかしな人はどの国にもいるんだなってさとみが言った。それは怖い話だと思った。蓬莱の山なんてどこにもなかった? でもコップという言葉があるからコップがあって、水という言葉があるから水があふれていて、愛という言葉があるから愛があった。8を回すと無限になるよね。設定を開いてもどこをいじればいいのかわからなかった。辛い辛いよもう死にたい。大丈夫、私がついてるから。
- 小伏史央「夏の羽虫」文戯16号より

以上、本文サンプル。
毎度おなじみ、ぼくらの文芸マガジン「文藝MAGAZINE文戯」16号が9月10日に配信開始されました!
Amazon Kindle:https://www.amazon.co.jp/dp/B09G5ZKXY3
BCCKS:https://bccks.jp/bcck/170360/info
DMMブックス:https://book.dmm.com/detail/k870abdis01852/
(その他各種配信サイトは文戯公式サイトをご確認ください。)
今回の巻頭企画は”秋の味覚”。柿やキノコなど、秋の味覚を登場させた7作品が収録されています。小伏は「夏の羽虫」という5千文字強の作品で参加しました。今年の6月頃、「ノア」をフィン感に応募した後、その感想を待っている間に手慰みに書いた作品です。本来文戯16のために別の新規の作品を用意していたのですが、その作品は体調のため執筆中のまま完成できず、急遽この作品を文戯16参加作品として提出した形です。文戯13の「乖離する滅亡」のときもそうでしたが、小伏には書くだけ書いて未公開のままにしておいた弾が何個かありまして、今回もそんな過去の自分に救われました。
タイトルこそ夏ですが、内容的には秋ごろに夏の出来事を振り返るれっきとした残暑作品になっています。本文サンプルをご覧になった方は感じたかもしれませんが、文章こそが小説のメインなのだといわんばかりに文章で遊んでいます。段落と段落の接続にひび割れのあるような、文章のさざ波を感じさせたい仕様を目指しました。自己判定では、フィン感の作品分類法でいうところの西南西くらいかな、と。
小伏の変な小説が好きな人に強くおすすめ。そんな新感覚GL小説です。

なお次回以降の文戯についてですが、小伏はしばらく休止することにしました。これまで回復に想定以上の時間を要していること・今後まだまだ時間を要すと明らかになったことが主な理由です。今回のように未公開弾で持ちこたえることも考えましたが、お題やクオリティの関係もありその方法でも限界があること、校正や宣伝などの諸作業さえ現状うまく注力できていないことなどを鑑みて、お休みとさせていただきました。架空読者含む小伏ファンの皆様、ならびに文戯編集長の川辺さんおよびレギュラー作家の方々にはご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません。休止中の文戯も心から応援・愛読していきます。

10文字ホラー

6月に実施されていた10文字ホラー大賞の結果が発表されましたね。受賞された方々おめでとうございます。
小伏は受賞とはなりませんでしたが、星海社の書籍版に収録されることになりました。小伏の作品は『10文字ホラー 1』に4作、『10文字ホラー 2』に1作収録されています。ぜひお手にとってみてください!

作品集として編纂されたことの面白さがこれでもかと出ているなーと思います。1集目の第3章とか、10文字SFホラーの盛り合わせが独特のSF空間を形成していてすんごくニマニマしながら読んでいました。とても面白いです。ぜひに!

フィンディルの感想

6月の月間まとめで「ノア」を応募したという話をしましたが、予定通り7月に感想をいただきました!

何度でも言いますが本当に素晴らしいですね。ここまでの深度と分量で感想を書ける感想人なんて、特にウェブ小説界隈ではこの人のほかにはまず見かけません。コラムでも書きましたが、その凄まじさによって作者の思考や手法が丸裸になるので、複数作品募集してみると必然的に自身の癖や作風が浮き彫りになります。その点に期待して、ずっと昔の作品である「ノア」を応募し、見事欲しかった情報が感想の雪崩とともに手に入りました。
本当にありがとうございました!!!

日記

その流れで、今後の自分の方針や執筆状況を記録する必要を感じ、noteで日記を書き始めました。日記といっても毎日書くつもりは毛頭なく、書きたいものを思いついたときに気ままにかくつもりの自由帳です。7~9月に書いた日記は以下の3本です。
001_文字数ノルマを廃止します
002_なぜ日記を書こうと思ったのか(前編)
003_なぜ日記を書こうと思ったのか(後編)
日記というコーナーを始めた手始めに、小説執筆における「ノルマ」をテーマに個人的な話を書きました。本当はこの流れの締めとして「004_成果ノルマを導入します」という題の日記も書く予定だったのですが、その前にやむなく活動を中断。成果ノルマについては活動再開後までおあずけです。

第二回かぐやSFコンテスト

バゴプラの掌編SFコンテスト。応募していました。個人的な日程的に少し厳しかったのですが、第1回のときに外野から見て楽しそうだったのに応募できていなかった悔しさを覚えていたのもあり、諦めきれずに最終日(7月19日)に一息に書いた作品で応募しました。
「未来の色彩」という募集テーマだったので、直球で肌の色のお話を書きました。その後上記の通りいろいろあったのでまだコンテストの応募作や受賞作については追えていませんが、まあさすがに誰もがまず先に思いつくだろう題材を時間をかけずに書いてもしょうがないよな、と反省。この作品が成果ノルマ導入前の最後の構成不足作品になればいいなと思っています。

ツイッターで投げ銭をいただきました

以前の月間まとめで、ツイッターの当アカウント(@u17_uina)が仮想通貨BATの投げ銭に対応したというお話をしました。
そしてこのたび、初めて投げ銭をいただきました!ありがとうございます!!!

画像1

まさか本当にいただけるとは……。送ってくださった方ほんとうにありがとうございます!!まさか本当にいただけるとは。めちゃくちゃ嬉しいです。大切にします。

送金主の情報は秘匿されたまま、SNSを介して仮想通貨の送金が行われるというの、近未来の世界に生きてるなって実感が久々に感じられてとても楽しいですね。
ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

その他連絡事項

・上の項目でもお話しした通り、健康上の理由から小伏は次回以降の文戯をしばらくお休みさせていただきます。
・Skebの依頼募集も同じく休止中です。再開時にはぜひともご依頼よろしくお願いいたします。
・これらに伴い、noteの月間まとめ記事も休止期間中はお休みさせていただきます。まとめるものがないので……。ただし日記は余裕と話題があれば更新することもあるでしょうし、ツイッターには(低浮上ぎみとはいえ)今後もいるんじゃなかろうかと思います。

その他見たもの読んだもの

家にいる間はほとんど横になる他なかったので、インプットに関してもできることとできないことが顕著に分かれていました。長時間座れなくなってしまったのと、寝たままの姿勢でも意外とじっと見るのがつらかったのもあり、映画はまったく見れていません。対してスマホで電子書籍を読むのはラクだったので、漫画をたくさん読みました。あと下に紹介したソシャゲの未消化シナリオとかもこの機に一気にプレイしました。

7月に見た映画の中で特に良かったやつ
・ゴジラ対ヘドラ(1971)
・ガタカ(1997) 再視聴
・モキシー ~私たちのムーブメント~(2021)

7~10月に読んだ漫画の中で特に良かったやつ
・古舘春一「ハイキュー!!」全45巻読了
・モリタイシ「いでじゅう!」全13巻再読
・町田翠「ようことよしなに」全3巻読了
・城平京(原作), 戸賀環(漫画)「雨の日も神様と相撲を」全3巻読了
・山口つばさ「ブルーピリオド」最新11巻まで読了
・横幕智裕(原作), モリタイシ(作画)「ラジエーションハウス」最新11巻まで読了
・森野萌「花野井くんと恋の病」最新9巻まで読了
・磯見仁月「傾国の仕立て屋 ローズ・ベルタン」最新5巻まで読了
・林達永(原作), 李惠成(漫画)「JKからやり直すシルバープラン」最新5巻まで読了
・常磐くじら(原作), 桃山ひなせ(漫画)他「エリスの聖杯」最新5巻まで読了
・紙風船(原作), こちも(漫画)他「異世界に来た僕は器用貧乏で素早さ頼りな旅をする」最新4巻まで読了
・原田繭「和服な上司がいとおしい」最新3巻まで読了

そのほかのジャンルで特に良かったやつ
・クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ(コロプラ, 2013-)
→メインストーリーの完結おめでとうございます。8年かけたシナリオの集大成、本当に素晴らしかった。オリジナルのシナリオをこれほどまでに素晴らしくまとめ上げ締めくくったゲームを自分はほかに知りません。

以上です。

最後までお読みいただきありがとうございました。
こうして創作をしたくてもできない状況に陥るのは初めてのことではないですが、そのたびに自分は「付加価値」に生かされてきたのだなと思い知ります。パスポートが渡航許可(国外での身分保証)という大元の機能が制限されている状況下にあっても、その中身に描かれている絵は鑑賞という機能を独立して保っているように、健康を脅かされている状態にある今でも小伏は創作がもたらす楽しさを知っている。知っているから、再び創作の楽しさを享受するために体を治そうと思える。生きていくうえで必要不可欠ではない付加価値にすぎないけれど、これがあるから生きていける。少なくともその程度の期待を自分は創作に課しているのだなと。

そういうわけなので、きっとまたお目にかかれると思います。
またお会いしましょうね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?