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今世紀最大のイノヴェイションは、月旅行でも空飛ぶ車でもない。古代からの夢、幸せの民主化を実現するトランステックだ。

1. ブログ「僕がアクセンチュアを辞めた理由」から4年。

2015年3月、ポスト資本主義システムの必要性を問うブログ「僕がアクセンチュアを辞めた理由」が10万人に届いた。

アクセンチュア退職後、農業を始め、パーマカルチャーを学び、ヒッピーたちと国内外のエコビレッジを訪ねネットワークし、ウェルビーイングを体得する世界中の民族儀式や宗教の伝統的技法を体験した。

資本主義システムの根本的な変革ドライバーは何かを考え続け、試行錯誤を重ねてきたが、今その問いに答える準備が整った。

2. 「機械型社会」から「生命体型社会」への変革を阻んでいる根本原因は何か?

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このフレームワークの原型は4年前に書いたものだった。その後、まず第2階層のシェアリングエコノミーが話題になり、次に第3階層のティール組織が話題になり、昨今ようやく第1階層のウェルビーイングが世間に認知されてきた。

しかし、社会変革のU理論からすると、根本的な変革のために必要な深堀りはまだ残されている。
それは、第4階層ーリーダー個人としての在り方の変革、そして第5階層ーその背後に潜む認識レベルの変革である。

この第5階層こそが、これまでのシステムにおける課題の根本原因であり、社会変革のトランスフォメーションのドライバーである。

3. 資本主義システムの根源的なバグを突き止めた。

①世界は「認識」である。

世界は本当にVUCAか?
この世を「VUCAワールド」と認識すれば、”未来”への”不安”が生まれ、”生存”をかけた”競争”が始まる。

一方この世を「アバンダンス(潤沢)ワールド」と認識すれば、”今”に”満足”し、余剰を惜しみなく分け与え”協働”しながらあらゆるものたちが”共生”する社会を創造するだろう。

どちらの世界も同じだ、自分の認識を除いて。
人類は果たして進化いるのか?そしてこれからも進化していくのだろうか?
寿命を全うせず自ら命を立つ現代人と、短い寿命だが最後まで自分の意思で生きた古代人はどちらが”先?”へ行ったといえるのだろうか。

ネイティブアメリカンが西洋文明に滅ぼされて、一時的にはそれが進化だとされたかもしれないが、人類はそこで何を得たのだろうか?
何も懐古主義的なことが言いたいわけではない。

ただ、全ては、何かの力によって起こるべくして起きているプロセスの連続ということだ。そこに、いつがよくていつが悪かったか、などと言うことは後付けの論理でしかなく、かつその論理は後からいくらでも書き換えることができてしまうものだ。

大失恋が不幸だったのか、受験に失敗したことが不幸だったのか。そのあと幸せな結婚に至ることもあれば、その後の飛躍に繋がり大成功することだってある。そしてその成功さえも、全体で見たときに(例えば仕事が忙しすぎて離婚したとか)幸せだったとは言えないのかもしれない。

つまり、この世界は本質的に、"全てはプロセス”でしかなく、そしてそれ以外は本人の認識ー意味付けであり、解釈でしかないのだ。

そうやって、我々の世界は、それぞれの認識で構築されている。その認識が教育やメディアによって一定の世界観をつくってきた、と思い込んでいるだけなのだ。

我々の自己認識、世界認識のことを「OS」ということができるだろう。
今、最も必要なことは、このOSにおけるイノヴェイションである。
近現代におけるOSの上にどれだけソフトやハードを構築しても限界が超えられないのだ。

②これまでのOSにおけるバグとは何か?

近現代のOSは、人類という種が急速に増加する(寿命/人x人数)ことに最適化されたものだ。この爆発的な成長に必要なコアプロセッサーは何でできていたか。

それは、「恐れ(Fear)」である。

恐れは、生存本能を利用して人の行動をドライブさせるためにもっとも効率がいいエンジンだからである。

西洋近代的な経営手法の導入により、ビジネスの世界から「感情」が排除された。こうしてほとんどの人が、自分の意思決定や行動が恐れによって方向づけられていることにすら気づかない社会になった。
あらゆるストレス、精神疾患、繋がりの欠如は心の問題に蓋をしてきた結果起きたことだ。

安定した会社に入りなさい(いつ首になるかわからないよ)、アーティストなんかやめなさい(食べれなくなるよ)、貯金をしなさい(未来は不安だよ)。恐れにドライブされやすいマジョリティーはチャレンジすることなく、安定を求め、ますます停滞する。

一方、アグレッシブでポジティブな経営者の方が実はもっと厄介だ。Doingで突っ走っている経営者の多くは内省の時間をおろそかにしているため、自分の中に恐れがあることには気づかず、ただ良かれと思って飛躍的な成長のために尽力してきた。

しかし、コントロールを手放せない背景には「想定外への恐れ」があり、自己主張を曲げない背景には、「否定されることへの恐れ」があり、強いリーダーでなければならないという信念の裏には、「弱い自分が受け入れられないのではという恐れ」があり、自らのあり方がチームの信頼と心理的安全性を阻害してしまっているのだ。しかも、本人が全くと言っていいほど無意識のうちに。

「ティール組織」を実現しようとして失敗する経営者があとを立たないのはなぜか。それは、システム論以前のリーダー自身のあり方とそれを司るOSがアップデートされないままだからだ。

イノヴェイターたちは皆、誰しも自身の内面に限界をつくっていることに未だ気づかずにいる。これが、ポスト資本主義社会の出現におけるイノヴェイションの壁の正体だ。

③今求められているのは「意識の規制緩和」

では、なぜ恐れを受け入れることが難しいのか?
一つは、前述の通りこれまでの近代的経営手法において、そもそも感情に蓋をしてきたという生活習慣の問題がある。

昨今のマインドフルネスの広まりとEIマネジメントの復興はこれに対する対処法であり、トレーニングをすれば自分の恐れに一定気づけるようにはなる。
しかし、問題の根が深いのは「恐れ」を受け入れるということと、今まで構築してきたアイデンティティーが崩壊することは同じことを意味しているからである。

「恐れ」と「信念」は表裏一体のものだ。我々の脳は、過去の経験をデーターベース化し、安全にやり過ごせるように危険を回避するメカニズムを持っている。何か刺激があった時に、それに恐れを感じるということは、今までこれが正しい、間違えないと思っている「信念」を揺るがすよ、というアラートなのだ。それなのに、それを受け入れるということは、信念自体を否定することになる。これが、これから大きなイノヴェイションを起こすために突破すべき内的OSのイノヴェイションの壁である。

ある友人が、戦争の現場に行き「なぜあなたはここでこうして銃を持っているの?」と訪ねたと言う。どうして?なぜ?と質問責めにした挙句、彼は最後に「誰一人戦争なんてしたいと思ってなんかいないんだよ!」と泣き叫んだという。

世界は今、自分たちの内面に構築してきた頑丈な「恐れ」という意識の規制によって身動きができなくなっているのだ。この意識の規制を解除することで、世界は一変する。

新たなイノヴェイションには規制緩和が不可欠だ。しかし、今回の問題は法律の改正では解決できない。なぜなら規制は一人一人の意識の中にあるものだからだ。これが根本的なイノヴェイションにおけるボトルネックの真相だ。

④ハックされる時代に求められる新OSとは?

「コカ・コーラ」があなたが同性愛者であることを知っているとしたら?しかも自分がそうであると気付く前に。

これからの時代、AIはあなたのことをあなた以上に知る存在になる。

VR/AR/MR(複合現実)/SR(代替現実)の世界では、もはや本当の現実と挿入された現実は全く区別がつかない。サブリミナル広告などの次元ではない。リアリティーの概念自体が覆されていく。

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ハコスコHPより)

私たちは、そんな時代に何を拠り所にして生きていけばいいのだろうか?

それは、自分自身で物語を創造する力である。社会は、これからも私たちに対して様々な物語を押し付けてハックしようとしてくるだろう。

そこで、自らが創造的な物語の書き手になるために必要になる能力が「自己認識力」である。イマココで恐れにかられて生きることもできれば、それに気づき、自分の意思で勇気に変えることもできる。自分の認識如何で現実がホラーストーリーになるのか、アドベンチャーストーリーなのかが決まるのだ。

「現象」はハックできても、「意識」だけは自分からしか創造できない。そこに、ポストAI時代、人類が生き残るための鍵があるのだと思う。

4. 21世紀に起きた、テクノロジーの重大なピボットー「トランステック」

今世紀最大のイノヴェイションは、月にいくことでも、空飛ぶ車でもない。それは、古代から永遠の夢であった幸せの民主化だ。

大富豪でも天才アーティストでも高僧でもなく、万人が幸せになるためのテクノロジーートランステックが今生まれようとしている。

そもそも、テクノロジーはなぜ生まれるのか?
ケヴィンケリーは、「テクニウム理論」でテクノロジーは生態系と同じく「遷移」していくものであり、その進化は「不可避(Innevitable)」なものであると説いた。では、テクノロジーはどこに向かって遷移しているのだろうか?

それは、人類が自らの意識を進化させるために生み出しているのだ。

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レッドー「生存」の意識で、人類は火や道具というテクノロジーを生み出した。
オレンジー「自己実現」を目指した時点で、人類は産業機械(モダンテクノロジー)を生み出した。
グリーンー「平等」を求めた人類は、ITを生み出した。
そして今、ティール以上の「統合」の意識を求め始めた人類が、トランステックを生み出したのだ。

グリーンとティールの間には、大きな断絶があると言われている。意識の第1階層と第2階層の違い。「統合」の意識とは、それまでの「あらゆる意識レベルを全て含み、超える」ことなのだ。決して、前の意識が消えてしまったり、否定してしまう対象ではないということだ。それがグリーンレベルで起こったカウンターカルチャーとの本質的な違いである。

資本主義システムで培ってきたものも否定ではなく、統合していくフェーズが今だ。それはすなわち、前の段階を超えて上へ、先へと求めてきたこの線表のヒエラルキー的な物の見方(OS)自体を改めなければならないということも意味している。そのために、テクノロジーは、外的世界の成長から内的世界ースピリチュアリティーの成長へーと舵を切ったのだ。

トランステックは、そういう意味でモダンテクノロジーとは大きく異なるものである。
「寿司職人に長い修行は不要」という議論が物議をかもした。しかし、実際確かにテクノロジーによって誰もが高品質な寿司が食べられる時代になった。

悟りにも同じことが言えるだろう。「悟るにも修行は不要」だという議論が物議を醸す時代になる。そして、テクノロジーの力で誰もがいずれ短期間で悟れる時代になることは避けられない。テレパシーだって同じことが言えるはずだ。

5. カウンターカルチャーはなぜ挫折したのか?

冒頭にあげた通り、同じようなムーブメントは、1960年代にすでに起きていたが、そのムーブメントは挫折に終わった。
では、今回と前回の違いはなにか?

一つは先ほど述べた、意識の発達段階の違い。グリーンを駆け抜けてもその状態に限界を感じた人たちが次のステージへの成長を促している。資本主義を否定したアウトサイダーではなく、資本主義社会をやりきった上で、統合できるメインストリーマー人材がクリティカルマスに近づいてきたからだ。

そして、もう一つはテクノロジーである。トランステックの中でも、自己認識力を高めるためのニューロフィードバックやバイオフィードバックの存在は大きい。効果効能に客観性があることで、まがいものが排除され、スケールすることが可能になるからだ。

また簡単にハックされる脳と思考を変容させるためのVR/ARなどの技術の進歩も大きな可能性を秘めている。

6. トランスフォーメーションは戦略だ。

弊社の社名「ヒューマンポテンシャルラボ」の由来は、1960年代にアメリカで起こった「ヒューマンポテンシャルムーブメント(人間性回復運動)」にある。

ベトナム戦争、公民権運動などの社会課題を背景に、幸せ、尊厳、自由など根源的な価値を追求し、マズローが自己実現の上に自己超越欲求を掲げる第四の勢力、トランスパーソナル心理学を打ち出した。これらをベースに、瞑想、カウンセリング、マッサージなどの潜在能力開発技法が次々と生み出された。

このとき、自分の認識が変わることで、世界が変わるという思想に基づく「トランスフォーメーション」というコンセプトが確立された。
エンパワメントされた個人が自律分散型の世界をつくろうというものだ。

これはカウンターカルチャーの基本思想となり、ご存知の通りヒッピーだったスティーブ・ジョブズはZenを修行し、そのトランスフォーマティブな思想と体験に基づいた結果としてパーソナルコンピューティングが生まれた。(その後の華麗な歴史は知っての通りだ。)

SDGsもようやく浸透してきたところだが、SDGsとトランスフォーメーションの違いは、社会起点か個人起点かの違いだ。トランスフォーメーション思想は「地球温暖化対策のミーティングをクーラーガンガンかかけて議論しても無意味だ!」と主張するものだ。個人のあり方が変わらなければなんの意味もないと。

これまで、メインストリームは、このオルタナナティブなトランスフォーメーション思想を「自己満足」として取り合うこともなかった。

しかしテクノロジーの力でスケールすることが可能性になった今、トランスフォーメーションは新たなグローバルアジェンダに躍り出ることになる。

そもそもかなり前からビジネスの世界では「デジタルトランスフォーメーション」などとして使われてきてはいたし、昨今ではLinkedInなども自社の4つのバリューのうち最上位に「Transformation(変化すること)」を掲げているように、グローバル企業においてトランスフォーメーションの概念は普及してきている。

これからはビジネスにおいても、今回テーマにしている意識レベルからのトランスフォーメーションが重要になってくる。

そして、ビジネス文脈に置いて、トランスフォーメーションというコンセプトがマインドフルネスに加えて重要だと考えている理由は、それは生産性の向上やチームビルディングのためという人事マターで終わる話ではないからである。

これからは、トランスフォーメーションは経営戦略そのものになる。
ものから心へと言われて久しい。その心の体験の中でも、これから最も価値のあるものが「Transformative Experience(トランスフォーメーション体験)」である。これが、今後のあらゆる産業の提供価値になる。米Transtech Labの試算によると、その市場規模は3兆ドルにも及ぶとされている。

例えば、イノヴェイションの危機に瀕している音楽業界。音楽はこれまで自己実現レベルでの娯楽とされてきた。それが自己超越レベルでは、すなわち心が整う、ストレスがなくなる、パフォーマンスが上がる、健康になる、他の人と繋がる、愛情深くなる、そのための手段として音楽の位置付けが再定義されることで新しい市場が生まれていくる。古代から音楽は「薬」とさえ言われてきた、いま再び、価値の再発見が起こるだろう。

例えば、タバコは究極の自己実現レベルの娯楽だったと言っていい。その瞬間は気持ちいいが、健康を害し、他人に迷惑をかける、今や最低なものだと企業としてもレッテルを貼られ、規制は強まるばかりだ。

しかし「呼吸」に関するノウハウを持つタバコ業界は、伝統的な叡智と最先端のテクノロジーによって、自律神経を整えたり、免疫力を高めたり、慈悲深くなる、トランスフォーマティブな体験の提供を戦略に掲げれば、自己超越レベルの嗜好品として、企業ブランディングとして、大きく変革を遂げることが可能になるだろう。

エンターテイメント業界は、トランステックを通じて確実に新市場を創造することになる。

医療向けのヘルステックやブレインテックなどは、ターゲットと目的を変えることで、トランステック市場を開拓することが可能になることは言うまでもない。

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(2018年 TRANSTECH CONFERENCEより)

7. ポスト資本主義システム構築のドライバーは、Co-Working、Co-Living、そしてCo-Experienceへ

ポスト資本主義システムに変わるモデルは、循環型協働主義システムである。潤沢な資源に対して、共有し、協創し、与え合い、循環させるシステムだ。

これは、希少な資源に対して、囲い込み、競争し、奪い合う、短期刈り取り型システムで育ってきた我々にとって、真逆すぎて、思考で理解することが困難である。

このシステムを実現するための施策としてまずでてきたコンセプトがオープンイノベーションやコワーキング、最近だとパラレルワークなどーCo-Workingだが、このこと自体が今のところ大きなイノヴェイションに繋がっているとは言い難い。

また「働く」は自分の一部であるが「生活する」は自分の全体であることから、共に暮らすCo-Livngが次のトレンドになりつつある。生活を共にする、生活という全体性の協創から新たなイノヴェイションが起こる可能性は高い。しかし、ただ無意識に生活を共にするだけでは何も起きないという側面もある。

そこで、僕が行き着いたコンセプトがCo-Experienceだ。新しい社会を共に体験することからこそ望ましい未来が出現する。

典型的な例が、米国ネバダ州の砂漠に7万人が集うバーニングマンである。
これは、ポスト資本主義社会のCo-Experienceである。言葉でどうあるべきか?を議論するよりも、そのあり方を体感で表現し、共有する方が何百万倍もの自己変革とチームビルディングを促す。

グーグルの創業者のラリー・ペイジはバーニングマンの熱狂的な常連であり、グーグルの福利厚生の一つとしてバーニングマン行きのフリーシャトルバスがあったほどだ。そして、何よりも、外部からCEOを招き入れる時の決定的な判断材料になっていたのである。

50人以上のCEO候補の中、プライベートで過去にバーニングマンに参加した事あるのは、エリック・シュミットただ一人だった。バーニングマンの体験があることが決定的理由となって採用されたというのは有名な話である。今のグーグルがあるのは、未来社会のCo-Experienceがあったからと言っても過言ではないかもしれない。

自己の認識レベルをリセットし完全にアップデートするトランスフォーマティブな体験は、古代からのあらゆる民族儀式や宗教の伝統の中に組み込まれていた。日本的に言えば、これは、社会的「祭り」の復活である。

企業の全社ミーティングは、「ビジョン洗脳」の場から、「ビジョンの共通体験の場」へ。全社員の意識が変わるトランスフォーメーションの場にとって変わる必要がある。

ある先進的企業の例で言えば、働き方が自由でリモートワークもできるし、副業も自由で、コワーキングスペースで仕事をしてもいい。でも、コワーキングスペースで作業する時、隣の人とは一言も喋らずに帰宅するのだ。

便利さと自由さを得た先に我々はどこへ向かうのか?個人のための個人主義に回帰してしまうのか、自由を獲得した個人がその上で社会との繋がりを取り戻すしていくのか?

人類は今、さらに深く、広く繋がるための体験を求めている。

8. 幸せになる為に必要なのは「条件」ではない。身体的な「プラクティス」だ。

「Xすれば、幸せになれる」として、Xを求めようというフレーム自体が破綻してることに気づかなければいけない。なぜなら、Xではないときは必ず不幸だからだ。

ポジティブ心理学は過渡期的な対応でしかない。統計による傾向性は、因果とは異なるし、そもそも上記のように因果論での幸せには限界があるからだ。むしろ、幸せの指標化による新たなヒエラルキー社会を産むことにもなりかねない。
どんな要因があっても、満たされて幸せでいられるための方法があるはずだ。

幸せとは本質的に、一人称で定義されるものなのだ。

そして、わかりやすく言えば、幸せになるためには条件を獲得することではなく、スポーツや音楽と同じでフィジカルなトレーニングを積むことだ。逆にいえば、トレーニングをすることで誰でも獲得できるものであり、一方その努力なしで物で満たすことも、お金で買うこともできないものなのだ。

そんな方法は一体どこにあるのだろうか?

実はその答えはすでに世に出尽くしている。しかも、数千年前の時点で。
そのことを伝統的なWisdomと呼び、米国では昨今のマインドフルネスブームよりずっと前からWisdomに関する科学的な研究と実践が積み重ねられてきている。古代叡智からも最先端の科学からもウェルビーイングに生きる為の答えはすでに出揃っているのだ。

この答えを言葉にすることは実はたやすい。
・「恐れを受け入れること」
・「イマココに集中すること」
・「自我をなくすこと」
・「あるがままに生きること」
・「自覚すること」

などだ。

では何が問題かというと、これらは「わかっていてもできない代物」だと言うことだ。わかることとできることのギャップが極めて大きい。もしかしたら一生できないかもしれないものたちだ。これら本質的なものは全て、わかっているようでわからないものであり、一人称の継続的な実践を通じてしか体得できないものなのである。

その為に必要なことは、その時の自分にあったプラクティス、メンターに出会えること、そして継続的な実践を共にし、切磋琢磨しあえる仲間の存在である。

家族とは、トランスフォーマティブなプラクティスを実践する為の仲間の最小単位と言ってもいい。逆にいうと、これらを実践するための経験ができるから家族というのは深い関係になるのだ。

であるなら、多くの人たちと深い関係を築きたいなら、トランスフォーマティブな体験を共にすることである。

つまり、僕たちはトランスフォーマティブな体験を提供することで人類が再び一つの家族になること目指しているのだ。

9. これからトランステックはグローバルでたちまち爆発的なブームになるだろう。そして、すぐにキャズムを迎えることになる。

新たなテクノロジーに対して、人の意識が追いつかずに問題が起こると言うのは世の常だ。特に意識を扱うトランステックに対して幼稚な意識状態で開発したり、とり扱うことは、ブロックチェーンが投機の道具と化してしまったことなんかの比較にならないほど重大な代償をもたらすだろう。

誤用による心身の破壊、新興宗教や洗脳商法などの悪用、戦争するロボットを開発するよりもトランステックで人の内面をハックしてしまった方が容易に人類を滅亡させることができるだろう。

しかし、幸いなことに、我々はカウンターカルチャーの失敗をまだ覚えている。人類がバカでなければ決して二の前にはならないだろう。

そして、あの時との違いは、意識の発達だけではなく、科学とテクノロジーの飛躍的な進歩があることだ。様々なサービスは誤用・悪用されることは避けられないが、一方でそれらを守るためにもテクノロジーが活躍こすることだろう。

10. 大切なのは、体験を共にするコミュニティの存在。

キャズムを迎える時とは、デジタルとフィジカルが乖離する時だ。
頭での期待が高まり、価値はどんどんインフレしていくが、これは幻想だ。

テクノロジーは、未だに我々の意識と身体を90%以上捉えられていないのだ。この領域における真のイノヴェイションは人類が寄ってたかって少しずつ進んでいくものだ。

2045年のシンギュラリティの地点を、僕は人の意識がデジタル化される時だと思っている。その時に人類はケンタウルスを超えた新たなステージになるだろう。

それまではデジタルとフィジカルは共に保管し合う盟友であり続けるだろう。トランステックへの期待はバブルに終わるかもしれないが、我々の身体は決して嘘をつかない。

これからの数年は、トランステックに関する様々なテクノロジーとそれに伴うサービスが現れては消え、合従連衡が進むだろう。その時に、大切なのはトランスフォーメーションを共に実践し、切磋琢磨していく仲間の存在だ。一度できた繋がりはそう簡単には消えはしない。

ヒューマンポテンシャルラボのコアコンピタンスはそこにある。トランスフォーマティブな体験やテクノロジーは様々あるが、ぶっちゃけそれらはなんだって構わないのだ。それぞれにあったものが最適化され、常にアップデートしていくべきものだ。

大事なのは、それらを通じて繋がっていくイノヴェイター同士の深い繋がりである。我々は、トランスフォーメーション体験とトランステックを通じて、新たな人類の家族を築いていきたい。この新たなコミュニティこそが新時代のインキュベーションハブになるだろう。

恐れから満たされた心へ、分離から統合へ。
究極のエッセンシャルエンターテイメントを仲間たちとともに味わいつくす時代がいよいよやってきた。

2019年(令和元年) 6月3日  
ヒューマンポテンシャルラボ 代表取締役CEO 山下 悠一
Human Potential Lab

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