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ロコ・ソラーレ藤澤選手の選択

 女子カーリングで平昌、北京オリンピックに出場しメダルを獲得する活躍を見せるとともに、「もぐもぐタイム」や「そだねー」で話題になったロコ・ソラーレの藤澤選手が、ボディーメイク・コンテストに出場したんだそうです。

 藤澤選手はカーリングのシーズンオフにウエイトトレーニングで身体を鍛えているうちに、ハマっちゃったようですね。
 多くの人が驚いたようですが、実は、意外な人がウエイトトレーニングにハマるケースはけっこう多く見られるのです。私がジムのスタッフだった頃にも、そういう例をたくさん見ました。

 一言でウエイトトレーニングと言っても、目指す方向は人ぞれぞれです。藤沢選手のようにボディーメイク、ボディービルディングが目的の人もいれば、パワーリフティングを目的とする人もいます。人体への飽くなき興味という人もいます。もちろん何かのスポーツのトレーニングの一環としてやる人もいます。
 しかし、ウエイトトレーニングに対する態度は、ほとんどの場合、自分のできる範囲で自己満足のためだったり、自分なりの限界突破を目指すための手段としてやっていることがほとんどです。
 藤澤選手のように「やるならとことん」というのは、いかにもアスリート気質ですね。

 それにしても、カーリングと言えば「氷上のチェス」などと呼ばれ、どちらかと言うと体力よりも頭脳を使う競技というイメージがあります。
 とはいえ、約20kgの重たいストーンを思い通りにコントロールしようと思えば、それなりの筋力が必要とは思います。
 カーリングで最も特徴的なのは、氷の上ということ。それは、物に力を加えようとすれば、その反作用をまともに受けるということです。
 スタートは固定されたハックに足をかけて行うので、自分の力をストーンにしっかり伝えることができます。しかし、いざスタートしてしまえば、ストーンも身体も一緒に氷の上を滑っています。ストーンを少し左に方向を変えようとしたら、同じだけの力で身体は右へ方向を変えられてしまうのです。
 もし身体がふにゃふにゃしていたら、思ったようにストーンをコントロールできないだろうことは容易に想像がつきます。
 世にいうところの”体幹”がしっかりしていることが、普通の地面で行うよりも重要ということです。

 体幹がしっかりしてるというのは、それがどういうことを意味するのか、人それぞれの目的によって求めることは違ってきます。
 長友佑都選手のようなサッカー選手が相手選手に当たり負けしないように鍛えるのと、アーティスティックスイミングの選手が水面より高く浮き上がるために鍛えるのでは、まったく違うのです。
 当然、カーリングに必要な身体の機能もカーリング特有のものがあり、選手であればそれにフィットするよう自分を変えていく努力をすることでしょう。

 そういうことが分かってくると、ウエイトトレーニングは面白くなってきます。そして、トレーニングの過程で自分の身体のことがよく見えてくると、さらに細かく緻密なトレーニングを行うようになります。
 そのようによく考えたトレーニングの結果、身体が変わり、成績に好影響が出てくると、これはもうやめられません。
 とはいえ、これってけっこう頭を使う工程でもあるんですよね。論理的思考が求められます。
 実は、頭を使うことが苦手な人ほどウエイトトレーニングを行わないか、あるいは、ただがむしゃらに重いバーベルを持ち上げるだけのトレーニングを行うか、どちらかの傾向があるんです。
 ボディーメイクっていうのは、かなり緻密な計画が必要で、尚且つ地道な努力の積み重ねが必要です。1年先とかもっと先の理想のボディーのために、毎日地味で苦しく冴えない、結果の見えにくいトレーニングを欠かさず続けることができなければ、藤沢選手のような身体にはなれません。

 ここで、スポーツの成績アップのためにトレーニングをする場合に念頭に置いておかなければならないことがあります。
 どんなに綿密な計画を立てて、きちんと計画どおりに進めたとしても、それが競技に対して良い結果につながるとは限らないということです。
 長い年月のデータや科学的知見から、その精度は上がっているとはいえ、やはり人間は一人ひとり違うので、「これをやれば必ずこうなる」と言えるようなメソッドはないのです。トレーニングを進めながら、自ら感覚を確かめて軌道修正をしなければなりません。
 そういった意味で、藤沢選手のボディーメイクを極めようとした選択が、今後、カーリングにどのように影響するのか、非常に興味があります。
 私は、おそらく良い影響しかないように感じています。今後の藤澤選手の活躍を楽しみに応援していきたいと思います。

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