見出し画像

その悪魔っぽいやつが天使だぜ。

天使と悪魔を見分けるのは簡単だ。面白い方が天使で、つまんない方が悪魔である。カッコいい方が天使で、ダサい方が悪魔である。「これをやろうぜぇ。楽しいぜぇ」。耳元で甘い誘惑を囁いてくる方が天使だ。「そんなのだめッ! ちゃんとなさいッ!」。厳しく躾けてくる方が悪魔だ。常識を飛び越えてみんなを驚かしてしまえる方が天使だ。「常識の範囲内でお願いします」とか言ってくる方が悪魔だ。悪の親玉みたいに豪快に笑っている方が天使だ。正義の心でぷんすか怒ってる方が悪魔だ。

昔カフェでバイトしていた時、トイレットペーパーの端を三角形に折り畳むように指導された。こんなことをする意味が私には全然わからなかった。こんなことをしなくてもトイレは問題なく使えるし誰も困らない。そのため私の経営するゲストハウスではトイレットペーパーの端を三角形に折り畳む謎の風習を採用していない。しかし大人数の来客の後などに、たまに綺麗に三角形に折り畳まれていることがある。それをやった人にはそんなつもりはないのだろうが、私はそれを見ると「ちゃんとしなさい!」と怒られているような気持ちになって「うっ」となる。ねえ君。そんなにちゃんとするなよ。そんなことに君の大切な人生の時間を奪われなくたっていいんだぜ。君がいくらちゃんとしても、そこに君自身の願いを見つけることは絶対ないぜ。君が君の願いを見つければ、トイレットペーパーの端を三角形に折り畳むことなんかよりずっと素敵なことができるはずなんだ。

たとえば「ありがとう」という言葉を口で言わず、文字にも書かずに心からの感謝を相手に伝えようと思ったら、あなたはどんな方法を思いつくだろうか。想像してほしい。お辞儀や握手、抱擁などの身体的なジェスチャーだろうか。お花やものを贈ることだろうか。無言の態度のみで感謝を伝えようとするならば、言葉で伝えるよりもずっと高度な表現能力と対人技術を求められるはずだ。もしもあなたがあなたなりの素敵な表現方法を思いついたなら、次のステップはこうである。“それを今後一生、すべての人に対してやる”。

わたくし北沢由宇は全然ちゃんとしていない。以前、大分の方から占いの予約が入った時のことだ。前日に天気が良かったので近くの無料キャンプ場をおさえてテントを張り、私は海に潜って貝やカニなどを採って過ごしていた。本来であれば明日の午前中までには片付けて帰宅し、予約の時間に間に合わせなければいけない。いや、待てよ。別にこのままキャンプ場で待っててもいいじゃないか。悩みがあって占いの予約をしたはずなのになぜかキャンプ場に呼び出されて、そこでは金髪の占い師が自分で採ってきた貝をウキウキ楽しそうに焼いているのだ。ウケる。「いまキャンプしてるんだけど、三人でBBQしない?」私はそのお客さんを紹介してくれた方に連絡を取った。私とお客さんにはもちろん面識がない。彼女もまさか予約した占い師とキャンプ場でBBQをすることになるとは思ってもいないだろう。「ご飯はあるし海のものは僕が採ってくるから、諸君はお肉を買ってきてくれたまえ」と私が図々しくもお願いすると、二人は一番高そうな良いお肉を買ってきてくれてその日は最高の一日になった。

私がいろいろな面でちゃんとしてないのは、ちゃんとしたいとか別に思ってないからだ。ちゃんとすることよりも自分にとって心地の良い状態を作ることの方を優先しているからだ。自分にとって心地の良い状態でいることが、思いがけず他者やこの世界への贈与になってしまうことを知っているからだ。弱っている人を励まそうと思ったら、「弱っている人がいるから励まそうとする」のではなく、ただ一緒に楽しい時間に身を投じるのが最も効果的だと知っているからだ。ちゃんとして生きようとすると、ちゃんとしているだけで人生が終わる。間違えないように生きようとすると、間違えないだけで人生が終わる。こちとら定石を守っていれば勝てるゲームなんかよりずっとレベルの高いゲームを遊んでいるのさ。私がこうしたいからこうする。正しくなく生きるとはそういうことである。とりあえずこうしておけばいいというテンプレートに収めることを許さず、周知されているマナーや道徳に寄りかからず、「私がこうしたいからこうする」に基づいた選択を徹底する。ちゃんとすることは時に大事だ。だが、他の何よりも優先しなければならないほど大事ではない。間違えないようにする人生に甘んじてはいけない。そんなものに大事な人生の時間を奪われてはいけない。もっと大事なことができるんだ。もっと素敵なことができるんだ。

「大丈夫だよ。やっちゃえよ」。その悪魔っぽいやつが天使だぜ。「そんなのだめッ! ちゃんとなさいッ!」。その天使っぽいやつが悪魔だぜ。さて問題です。いまこれを書いているのは天使でしょうか、悪魔でしょうか。どっちの声に耳を傾けても後悔するなよ。はっはっは!

内なる声に聴いた「家」を、本当に見つけてしまうまでのお話
▲全人類読んでね!

日向神話ゲストハウスVIVIDがオープンします!【ご予約制】
▲ゲストハウスに泊まりたい人は読んでね!

日向神話ゲストハウスVIVIDインスタグラム
▲毎日ビビッと更新中!フォローしてね!

この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?