エフェクターって凄い!

ボクはベースを弾く際、ベースを直接アンプに接続している。所謂『アン直』というヤツだ。ボクが学生の頃からエフェクターと呼ばれる、素のベースの音に様々な装飾を加える道具はたくさんあった。これらは主に機能ごとに単体で装置があって、それらをごく短いシールドで接続していくというスタイルであった。従ってエフェクターを多数使う者は、それら装置を詰め合わせたトランク型のケースを携えていた。こういったスタイルは、装置の接続の順番を間違うと音が酷いことになるため、それなりの知識と経験が必要であった。

そのような煩わしさを払拭したのが『マルチ・エフェクター』という装置である。要はいくつもの機能を1台に集約し、機能のミックスはツマミの調整だけで済むようにした。もちろんたくさんの機能ごとの装置が集約されたわけだから、持ち運びも楽になる。装置同士をシールドで繋ぐ必要が無いから、接続ポイントで起こりがちなノイズの混入も防げるし、装置への電源供給に心を砕く必要もなくなった。さらには曲ごとに装飾された音をプログラミングして蓄えておけるから、ワンタッチでいくつモノパターンの音を選択・演奏できるという、画期的な機能もあった。

ボクが現役時代(20年以上前)は、こうしたエフェクターの値段も高価であった。単体の場合、必要なものを揃えていくともう1本楽器が買えるくらいになってしまうし、マルチの場合は1台でハイエンド・モデルの楽器ほどの値段がした。ボクの場合、ほとんどの演奏でエフェクターを必要としなかったから、当時からこれらの知識が欠落していた。最近、ちょっと気になってエフェクター関係を色々調べてみると、まさに浦島太郎状態である。まったく付いていけないのだ。そこで勉強しなければならない課題がまた増えてしまった。

現在の主流は、どうやらマルチ・エフェクターであるようだ。しかもそこに『マルチ・アンプ・シミュレーター(まったく新しい言葉!)』なる機能が付加されている。順を追って整理しておこうと思う。

マルチ・エフェクターは、以前は一からプログラミングする必要があったのに対して、すでに本体内に数十パターンものサンプルが記憶されており、それを微調整して使うことが出来る。さらにそうして微調整した音も保存され、いつでもどこでも自分の好みの音が出せるようになっている。もちろん好みの音を自ら作ることも可能で、チマチマと作業するのが好きな人にも楽しむ余地が残されている。

マルチ・アンプ・シミュレーターは、名の通ったアンプとキャビネット(スピーカー部分の箱のことをいう)の音を再現したものだという。さらにはアンプヘッドとキャビネットの組合せも自由に変更できる機能があるものもラインアップされており、音作りの幅が飛躍的に広がるのだそうだ。

まとめると、マルチ・エフェクターによって作られた音を、自分では購入できないほど高価であったり大きかったりするアンプに接続して鳴らした状態を作り出すことが出来るのだということだ。こうして出来た音を自前のアンプを通して鳴らすことも出来るし、ライブなどではダイレクト・ボックス(DI:Direct Injection Box)を通して直接PAに送ることも出来るのだ。ボクの時代はこうしたDIという機能よりはマイクをアンプ前に立てたり、アンプの背中側にあったアウトプット(DIとは違い、シールドでPAに接続)からラインを引いたりという方法が主流であったように思う。このようにマルチ・エフェクト&アンプ・シミュレートによってスタジオやライブハウスごとに違うアンプに対する設定の煩わしさは解消され、常に自分の好みの音を出すことが出来るようになる。加えてオーディオ・インターフェースの機能も併設されているモデルもあって、USBケーブルでPCと接続すれば、気軽に自宅で録音やセルフ・セッションが楽しめるのだから大したものだ。

エフェクター素人のボクがこれほど驚く機能が満載されたマルチ・エフェクターが、5万円以下の値段で購入できるという事実に更に驚いた。機能を絞っていけば、1万円を切る価格で販売されているものもある。まさに『隔世の感』を禁じえない、といったところだ。

ろくすっぽ練習もしないくせに、エフェクターもないだろうという声が聞こえてきそうだが……。俄かにマルチ・エフェクターが欲しくなった。

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